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脱炭素に関わる人材育成の周辺

算定支援を行っていてつくづく思うこと。
「共通言語で話せる人材は必ず必要」

排出量の算定を行いたい、ということで、その作業を完全にアウトソーシングするとしても、少なくとも、当該業務に関して最低限の知識を持った担当者は必要です。

難しい話をしているわけではありません。

「温室効果ガスの排出量を算定します」と話を切り出して、「温室効果ガスって何ですか?」と訊ねられても困る、これくらいの話です。

加えて、データの所在を承知していて、それを収集する、あるいは当該部署に協力してもらえるような権限を委譲されていることも重要。

まぁ後者は何とかなりますが、前者が問題。

かなりの程度、支援する側に暗に求められている、期待されている、さらには当然のように思われているように感じます。

ということで、かなりの割合で、想定していたスケジュールを大幅に超過することになってしまいます。同じ業務をされている方の中には、もう、所与のものとして受け入れてしまっている向きもあるかもですね。

この由々しき課題についてはお上も心得ており、環境省は「温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会」という検討会を昨年立ち上げて、認定制度の検討に着手しました。

温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会資料より

どうやら、「国家資格」を作ろうというものではなく、ガイドラインを作成して、それに従った「民間資格」を作ってもらい、環境省が「認定する」というものらしいです。

温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会資料より

プロポーザル方式のようなイメージでしょうか。
デザインやマーケティング、プロモーション、研修や教育などの事業を行う際に行われることが多いかと思いますが、仕様の範囲内で自由に提案して下さいねと。

まぁ、国家資格では政策コストがかかりますし、そもそも、硬直的になりがち。それならいっそ、現場に近い事業者に創設してもらい、国がお墨付きを与えればよい。賛成です。

実際、ウェストボックスさんが、算定から情報開示までを行うことのできる力量を証明する資格制度を立ち上げていますので、時機を得ていますね。

ただ、ターゲットについては、ちょっと「?」です。

温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会資料より

資料の中に出てくる「主な資格取得者のイメージ」には、全て「金融機関の」というカッコ書きがついて回っています。

つまり、銀行が「融資先の脱炭素を支援するための仕組みを作ろう」というものなのでしょう。それを否定はしません。

財務省も、金融の役割として「専門人材の育成」を認識しています。

GX戦略会議鈴木大臣説明資料より
GX戦略会議鈴木大臣説明資料より

また、金融の果たすべき役割は、IFRSやSSBJ、GFANZといった金融側のアクターだけでなく、SBTiやCDP、HLEGのような気候変動側のアクターも重視していることは、繰り返しお伝えしてきました。

この、資格の対象者問題については、検討会の最後に行われた意見交換会でも指摘されていました。

検討会議事録より

他方、炭素中立型経済社会変革小委員会では、「脱炭素分野における人材育成は、現状、大きく分けて即戦力人材、研究人材・準戦力人材、養成者人材の育成を目的として、関係省庁が、研修、 人材派遣、補助金等の事業を実施している。」とし、

炭素中立型経済社会変革小委員会資料より

環境省としては、「主に脱炭素に資する即戦力人材の育成事業を実施しているところであり、今後ともその充実強化を図る」と述べています。

炭素中立型経済社会変革小委員会資料より

さらに、同じレジュメの中で、環境省が行う人材育成事業が紹介がされており、そこにこの資格制度が出てきます。

炭素中立型経済社会変革小委員会資料より

ですので、「温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会」で検討されている内容は一部であり、これから対象をさらに拡げるなどの「充実強化を図る」ものと思われます。

「意見交換結果を踏まえ、今後の方向性については事務局で再検討し、ガイドラインの検討に反映することとした。」と議事録に明記されているので、期待したいですね。

その他については、まだ事務局が(案)として提示しているだけですので、まだ何とも。

温室効果ガス排出量の算定に係る資格制度検討会資料より

即戦力以外にも、冒頭で述べた「事業者側における最低限の知識を有する担当者」を育成できる「資格制度」にしてもらいたいですね。







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園田隆克@GHG削減サポーター
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