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カーボンプライシングとGX戦略(5)
「カーボンプライシング」と「GX戦略」を「脱炭素」というキーワードを絡めて、どのように活かしていくかを探るシリーズ、5回目です。
4回目では、「将来の税負担をより軽減し、成長志向型カーボンプライシングの果実を得るために、いち早く脱炭素化に着手しましょう」というお話をしました。
今回は、「よし、やってやろう」という動機付けになるような、排出量削減がもたらすベネフィットをご案内したいと思います。
まずは、「マイナス→ゼロ」、つまり、リスクを回避・低減できるというベネフィットのご紹介です。
国内の状況は、前回既に説明しましたが、世界に目を向けると、同じように「排出量」に応じた課税を行う仕組みが導入される予定です。
その一つが、欧州が2026年から導入を決定している「炭素国境調整措置:CBAM(Carbon Border Adjustment Mechanism)」です。
ひと言で言うと、製造におけるCO2の排出に対し、EU域内と同等の規制を有しない国・地域からの輸入に対しては、同等となるように課税しますよ、という仕組みです。
noteでは、これまで何度となくご紹介してきたので、ご存知の方もいらっしゃると思います。
はっきり言って、日本のCO2排出に対する規制は世界と比較して周回遅れですので、海外でプレーしているグローバル企業にしてみれば、リスク低減効果は計り知れないところでしょう。
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なお、購入が義務づけられるCBAM証書の価格は、購入日前週のEU-ETS排出枠のオークション価格の終値の平均価格です。
EU-ETSもnoteでは、頻出のテーマ。
CBAMとの関係についても説明していますので、参照ください。
ちなみに、23年6月16日の終値は、€92.35(¥14,360)/tCO2。
地球温暖化対策のための税(¥289/tCO2)や、J-クレジット(省エネ系 ¥1,600/tCO2、再エネ系¥3,200/tCO2)なんて目じゃありません。
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CBAM対象セクターの製品をEUへ輸出している企業にとっては、利益が吹っ飛ぶようなインパクトではないでしょうか。
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対象セクターはこれから追加されていきますので、安心はできません。
GX経済移行債を活用して、さっさと排出削減に励んでいた方が吉なのです。
欧州だけの話をしましたが、それで済む話ではありません。
やられたらやり返す。もちろん、アメリカも対抗措置をとっています。
CN-ETSを有する中国の動きも注視しておかなければなりません。
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なお、EUへの鉄鋼の輸出国としては、1位はトルコですが、2位はインド。
なので、既に、政府主導で対策を推進しています。
炎上してしまわぬよう、日本としても、国を挙げての対策が急務でしょう。
ということで、排出削減のベネフィットについて、「マイナス→ゼロ」の側面について説明しました。
次回は、「ゼロ→プラス」側面にフォーカスしてご案内したいと思います。
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