排出係数は最新に更新すべきなの?
CDP回答絡みで、もう少し。
算定を毎年継続していると、どんどんスキルが上がってきますよね。
データ収集の粒度が細かくなったり、カバーする範囲が拡がったり。
それに併せて、使用する原単位も、産業連関表ベースの粗い2次データから、より現状に即した2次データへ、さらには、サプライヤーとの協力により1次デーが得られるようになったカテゴリーもあるかもしれません。
となると湧いてくるのが、この疑問。
過去の排出量に関しても、排出係数を更新すべきなのか。
基準年の排出量を元に、短期あるいは長期の目標を立て、それを達成する計画、削減のパスを描いていますよね。その元となる排出量も、最新の係数で計算し直す必要があるか、という疑問。
前提が変わってしまうから、当然出てきてしかるべき疑問ですよね。
だけど、それをやり出したら、切りがない。
特に、スコープ3では、作業量が飛躍的に多くなってしまいます。
ここで考えて頂きたいのは、CDPの目的です。
「合目的的に判断する」というのが、答えになります。
法律に条文として明確に書いてない場合は、その法律の目的に照らして「合目的的」に解釈するとされますが、それと同様だと考えます。
というのも、CDPがMRVとして参照するGHGプロコトルは、あくまでも、自主的な規則であって、法的拘束力を持つものではありません。破ったからと言って、罰則はありません。
とはいいながら、CDPは機関投資家の要望を受けて実施されるものですので、目的があるわけです。それは何か。
「経営に影響を及ぼす可能性のある非財務情報を適切に開示する」
ことだと、私は理解しています。
投資家から集めた資金を投資するわけですから、当たり前ですよね。
そして、機関投資家は、その投資活動を通じて環境や社会全体に利益をもたらすという理念を掲げる「責任投資原則」(PRI) に賛同しています。
ですので、「より正確な投資判断に資する変更であれば、積極的に行うべし」とお考え頂ければ良いかと思います。
例えば、スコープ2において、ロケーション基準で算定していたところ、買電先から正確な係数が提供してもらえるようになったから、マーケット基準に変更するとしましょう。もし、基準年の係数も併せて提供してもらえるのであれば、再計算した方がよいでしょうね。
冒頭で述べたように、特にスコープ3は、回数を重ねる毎に精度は上がっていくと思われますので、実態に近くなっていくことでしょう。
なお、変更した場合は、それを説明する質問項目がありますので、そちらに、内容及び理由を記載することができます。誤りの修正もできます。とにかく「正直であれ」ということです。
CDPは、入手できる最新の排出係数を用いて計算することとなっていますから、基準年の変更も行って構いません。その際は、比較可能と言える同等条件で算定している年を選択しましょう。
あらかじめ、基準年を変更する基準を決めておくと良いですね。
ちなみに、CDPのスコアリングについて言うと、SBTiに承認された目標を持っているか否か、第三者検証を受けているか否かで評価が変わります。
スキルが上がってきたら、Aリスト入りを目指しませんか。
自社のモチベーションも上がりますし、投資家の見る目も変わります。
最後に、しつこいようですが、もう一度言っておきます。
他社比較は意味がありません。CDPもそれを求めていません。
予め描いた、目標に向かう軌道、パスのどの位置にいるのかを確認し、着実にゴールへ向かっていることを、エビデンスを示しながら適切に公開することに務めていきましょう。
応援しています。
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