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エネルギーのフェイズシフトに備えよう(1)

政府は、現在、第7次エネルギー基本計画の策定に着手していますが、先日の第65回基本政策分科会にIEAのラウラ・コッツィ持続可能・技術・展望局長を招き、世界エネルギー見通しについて説明を受けています。

アーカイブもありますので、お時間のある方はどうぞ。

その説明が、スライド1枚に1フレーズと非常に簡潔で、参考になりました。なので、レジュメを拝借しながら、内容をご紹介したいと思います。

第65回基本政策分科会 資料1 IEAヒアリング資料 2ページ

まずは、エネルギー安全保障について。

例えば、一番左のグラフはOPEC+(石油輸出国機構プラス)による余剰原油生産能力です。2023年では約4百万バレル/日程度の余剰生産能力があり、2030年には約8百万バレル/日に増加すると予測されています。

注目すべきは、上部のピンクの部分。これは、ホルムズ海峡に依存している原油供給を示しており、ホルムズ海峡が封鎖されるリスクがエネルギー安全保障に影響を与える可能性があることを示唆しています。

その隣は、 液化天然ガス(LNG)の液化能力を示しています。2023年には約600 bcmの液化能力があり、2030年には800 bcmまで増加すると予測されています。

点線は、LNG設備の利用率。液化能力が増加しても、そのすべてが常にフル稼働しているわけではないことを示しています。

そして、左から3番目のグラフは、太陽光発電設備の製造能力。一番右のグラフは、バッテリーの製造能力です。

黄色の部分はいずれも中国の製造能力であり、圧倒的なシェアを持っていることがわかります。再エネ導入が進んでも、依然として中国リスクに晒されてしまうのですね。

第65回基本政策分科会 資料1 IEAヒアリング資料 3ページ

続いて、2040年までに天然ガス需要曲線。
IEAのシナリオに基づいていて、それぞれの意味はこちら、

 STEPS(Stated Policies Scenario)
「既定政策シナリオ」
将来に向けた追加的な政策の強化を仮定しない、現実的なシナリオ

APS(Announced Pledges Scenario)
「公表された約束シナリオ」
国際的な約束が果たされるという前提で、現実と目標の中間的なシナリオ

NZE(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)
「2050年までのネットゼロ排出シナリオ」
2050年までにCO₂排出を実質ゼロにするための最も野心的なシナリオ

STEPSだと、東南アジア、インド及び中国は増えるものの、欧州などそれ以外のエリアが減少するため、相殺されてほぼ一定になるとか。

ただ、これからAIの進展や炭素からのスイッチングなどにより、電力・産業需要が増加する見込みであるところ、各国がそれに対処しなければ2040年になってもピークアウトしない予想。

つまり、シナリオ次第というフラジャイルな状態になりそうです。

第65回基本政策分科会 資料1 IEAヒアリング資料 4ページ

ここで、再エネ導入に重要な鉱物資源を見てみます。

まずは、供給は増えるものの、需要の伸びに追いつかないそうです。
辛うじてグラファイトはトントンのようですが、電線に使用される銅もタイトですし、バッテリーの主要材料であるリチウムは、需要の半分しか満たせません。

かつ生産は偏在しており、上位3カ国で80〜90%を占めるとのこと。
新たに予定されているプロジェクトに必要とされる資源については、
90%に達するというから、深刻です。

第65回基本政策分科会 資料1 IEAヒアリング資料 5ページ

また、世界は「電化」にまっしぐら。

左側の2つのグラフは、STEPSシナリオにおける需要増加率。
2つの期間(2010-23年と2023-35年)に分けて、エネルギー全体の需要の伸び(緑色)、電力の需要の伸び(水色)を表しています

過去10年間でも、電力は全体よりも2倍の伸び率でしたが、今後10年間では、さらに急伸し、6倍になるというから凄まじい。

右側の2つのグラフは、地域別の電力需要と従来の用途 vs 新しい用途の電力需要を、左側のグラフ同様、2つの期間に分けて示されています。

今後10年間は、「Other emerging & developing economies(その他の新興国・開発途上国)」における大きな伸びが予測されています。

また、ヒートポンプやEVの普及やデジタル化、AIの進展に伴うデータセンターの急増など、新しい用途による需要の伸びが確実な状況です。

「新しい用途による需要の伸び」を反映して、「Advanced economies(先進国)」における電力需要も、新興国と比べると緩やかですが、中国を上回る伸びを示すようです。

ということで、ラウラ・コッツィ局長の説明はもう少し続きますが、長くなりますので、後半は次回お届けしたいと思います。

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園田隆克@GHG削減サポーター
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