世界の排出権取引市場動向
日本では、民主党政権時代から、何度となく議論され、試行され、それでも日の目を見ていない「排出権取引」
現在は「GXリーグ基本構想」の下、440の賛同メンバーの協業で、ルール作りが進行中。22年9月から23年1月の5ヶ月間、JPXにて取引所市場の実証事業を行う予定です。とはいえ、GXリーグにおける企業由来の超過削減枠は取り引きされず、J-クレジットのみ。システムの検証がせいぜいでしょうか。
4月に、こちらでもご紹介しております。
しかし、世界に目を向けると、異なった景色が拡がっています。
どのようなETSが存在するのかを表したのが、こちらのマップ。
青色が施行中、濃い緑が開発中、薄い緑が検討中を表しています。
EU-ETSやRGGI、カルフォルニアはご存知の方も多いでしょう。
この中で注目すべきは、中国です。
排出権取引の草分けであったEU-ETSを、カバー率で一気に抜き去ったのが、このグラフで明らかです。
CN-ETSは、2011年から検討を開始、2015年の米中首脳声明で2017年12月からの開始を公表、2020年12月管理ルールと対象事業者を発表、2021年オンライン取引を開始しました。
初日、約410万トンCO2 相当の CEA(中国国内の排出権)が取引され、合計金額が約 2.1億元に達し(平均価格:51.2 元/トンCO2 )、順調に開始できたとのこと。東京都にもヒアリングに来たと言いますが、足かけ10年、準備に時間をかけたことが、奏功したと言えるでしょう。
2013年からは「深圳・上海・北京・広東・天津」、2014年からは「湖北・重慶」の計7市・省でのパイロット事業を実施するなど、当時から、その用意周到さは目を見張るものがありました。(現在も、並行して施行中です)
なお、51.2元はおよそ1,000円なので「成功か?」と疑問視する向きもあるかもしれませんが、まだまだ1年目です。EU-ETSも価格が低迷、取引も鳴かず飛ばずの時期を経験しましたが、都度謙虚に市場に学び対話して、制度を作り上げてきました。
2030年までにピークアウト、2060年ネットまでにカーボンニュートラルを公言している中国です。現在は原単位目標のところ、総量削減目標への変更を予定していますし、対象も、発電部門からセメント、アルミ、鉄鋼、製紙、ガラスなどの多排出セクターへ拡げる計画。
いずれ、現在のEU-ETSのように高値安定し、排出枠が無償割当からオークションへ移行、その収益で、さらに国内の排出量削減が進むという、好循環に入るのではないでしょうか。
次に目指すは、対象セクターの拡大でしょうか。
現在、森林や廃棄物まで全て対象にしているのは、ニュージーランド。
コロナ対策でも抜群の立ち回りを見せたように、国の舵取りが優れている点で着目していますが、こちらも、早番中国の背中を見ることになるかもしれません。
排出権取引や炭素税などのカーボン・プライシングは、こちらで何度も議論している「炭素国境調整措置」にも深く関連します。GXリーグで悠長に議論している場合では無いと思うのですが、為政者は、鳥の目で世界を傍観して、「決断」をしてほしいものです。
「改むるに如くは無し」です。
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