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En-gawa プロジェクト「ひらかれた家」サントリーホール・サマーフェスティバル2023に協力しています。

 いよいよ今週25日(金)、サントリーホール・サマーフェスティバル2023「ありえるかもしれないガムラン」が開幕します。現在も各現場で準備が精力的に進められていますが、それぞれがガムランのように響き合いながらひとつの世界が立ち現れていくプロセスにワクワクしています。
 特にブルーローズ・ホール(小ホール)にはアート・コレクティブKITAによるインドネシアの路地のような「ひらかれた家」や屋台が登場し、27日までの3日間、毎日趣向を変えた「ありえるかもしれない」演目が予定されています(出入り自由、未就学児無料)。

三輪眞弘プロデュース「ありえるかもしれないガムラン」

  今回ミュージック・ディレクションに協力したマルガサリは、現代音楽も得意とする関西拠点のガムラン・グループです。実は現在自身が理事を務めているアートミーツケア学会、その事務局がある奈良たんぽぽの家の職員さんも中心メンバーとして活躍されています。つまり「ひらかれた家」はアート(音楽と美術)とケアの交差点に建っているとも言えるのです。
 もともと、ガムラン音楽には陰と陽、男と女など二極の世界が響き合う独自の宇宙観があります。今回のサントリーホールでも、小ホールと大ホール、路地と宮廷、伝統と実験、デジタルとアナログ、アマチュアとプロなど、実社会では対立構造にありがちな世界がまさにガムラン音楽のように響き合うことを目指しています。ピッチが違うからこそ生まれる豊かな「うねり」の世界をどうぞお楽しみに。フェスを締めくくる27日の大ホールでは、世代を越えた4人の作曲家によるガムラン新曲初演があります。3日間のEn-gawaプロジェクトと出演者も往来し、双方が響き合いながら、サントリーホール全体に大きなコスモロジーが立ち現れることを期待しています。
 
 今回のサマフェスがガムランフェスではなく「現代音楽」のフェスであることに立ち返った時、En-gawaプロジェクトにも大ホール『Music in the Universe』にも20世紀現代音楽の実験精神や反骨精神、不確定性や偶然性が継承されていることに気づきます。サントリーホールでは「ありえない」と思われていたような音楽そのものを「ひらく」こころみが、どんな波紋をひろげ、対話を生むのか個人的にも楽しみにしています。86年開館のサントリーホールにとっても、21世紀の音楽のかたち、音楽の楽しみ方を提示したエポックメイキングになるのではないでしょうか。

マルガサリ中川真著『平安京 音の宇宙 サウンドスケープへの旅』平凡社

 サウンドスケープ研究の個人的な興味としては、マルガサリ中川真さんの著書『平安京 音の宇宙』が構想のベースにあることも抑えておきたいと思います。先月出演されたDOMMUNEでは岡本太郎のイザイホーに匹敵する貴重な映像をご紹介されていましたが、こちらの第15章「王宮〈音〉都市論」に、その映像を撮られた40年前のジョグジャカルタ市の路地の音風景、祭りの様子、物売りの声など都市のサウンドスケープの記憶が詳細に記されています。

40年前のジャカルタのサウンドスケープ

 この本に則って、En-gawa小ホールが路地、大ホールが宮廷と捉え直すと、今回は双方が響き合うという「ありえるかもしれない」世界が見えて/きこえてくるようです。特に「幕間のない」小ホールは(夜のプログラムも含めて)、三輪さんのサウンドインスタレーションや路地の物売り、ありえるかもしれないサウンドスケープと共に、佐久間新さんのパフォーマンスが即興的に生まれる余白が残されています。

 実はプロデューサーの三輪眞弘さんは偶然にも母校(都立国立高校)のOBです。En-gawaディレクションのマルガサリだけでなく、大ホールの作曲家たち宮内康乃さん、藤枝守さん、野村誠さんの北千住だじゃれ音楽研究会メンバー等、3.11以降の『音楽、サウウンドスケープ、社会福祉』の道筋のなかで出会った人たちが見事につながった(響き合った)フェスティバルです。
 まるで村のお祭りのようでもあり、曼荼羅図絵のようでもあり、いずれにしても私もその構成員のひとりとして連日ホールにいる予定です。どこかで見かけた際にはお気軽にお声がけください。

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