全然楽しくなさそうな少年

僕は、お昼休みは外へ食べに行くのですが、早食いが過ぎる故に30分以上暇な時間が出来てしまいます。
そこでいつも食後に散歩がてら少し離れたスーパーに行くのですが、その道中に小綺麗な美容室があるのです。
そこは平日なのに結構な割合で沢山のお客さんが髪をハサミで切ってもらっています。

ついこの間、いつも通り食事を済ませスーパーへ向かい、いつも通り美容室の横を通ると、そこには珍しく小学生くらいの少年がちょこんと椅子に座っていたのです。
その美容室はおそらく成人女性のお客さん割合が高いであろうお店なので、僕の視線は一瞬で少年に集中しました。

幼い頃から綺麗な美容室に連れてきてもらえ髪を切ってもらえるなんて羨ましい限りです。
しかし、お洒落で綺麗な美容師さんに笑顔で語りかけられ、髪を触られている少年の顔は無表情で何も楽しくないみたいな顔をしていたのです。
綺麗な美容師の方に髪を切ってもらえるというのに、大変勿体ない所存です。

普段は元気よく外で走り回り、放課後は友達と語らい合い、楽しく過ごしてるであろう少年の風格とは裏腹に、あそこまで無表情で楽しくなさそうな顔には驚かされました。
その少年の顔を見た瞬間に、僕の苦い学生時代がフラッシュバックしてしまいました。

僕は小学校に入るといつも決まった散髪屋さんで切ってもらっていたのですが、もちろん親のお金なので、僕のしたいような髪型にはさせてもらえません。
問答無用で短髪角刈りです。

生まれた時から髪の毛は太く、直毛だったので刈り上げると自然と角刈りになってしまうのです。
小学校低学年の頃は何とも感じなかった角刈りですが、高学年になるに連れて少しずつ女の子の目とか友達の目を気にし始め、もっと無造作でかっこいい髪型にしたくてたまらなかったのです。
ですが、髪の毛を切り清潔に保つことが出来ていたのは親のお金のおかげであり、結局僕は中学、高校卒業まで無造作でかっこいい髪型にすることはできませんでした。

伸ばせるだけ伸ばし、切る時は短く短く。

お洒落にしたい人間の欲のために短く切られている髪の毛の気持ちを考えると正直胸が痛みます。
お洒落は本来生命体に必要のない行為で、髪の毛は脳を守るために生えているものなので、長い方が良かったりするものなのです。

そんな事を言いながらも、もっと後ろをナチュラルな感じで短くしてほしいだの、前髪は眉毛にかからないように調整してほしいだのと言ってる僕がいます。

小綺麗な美容室にいた少年は、もしかしたら生命本能に抗う自分が嫌で、無表情な顔になっていたのかもしれません。
もしくは、僕のように親がお金を払っているが故に、自分のしたいような髪型に出来ないことを悟り、覚悟した表情だったのかもしれませんね。

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