あなたはキム・シスターズをご存知でしょうか?
大変ご無沙汰しております。
2022年に入り、未曾有のコロナ禍が大分落ち着いたかと思えば
隣国ロシアがウクライナ侵攻を行い、国際情勢が緊張状態と化した。
更にトンガでは海底火山の噴火で未だ復興道半ばです。
とにもかくにも世界はいまだかつてない状態に陥っている状態です。
そんななか、5/27に韓国のSBSテレビからこうしたニュースが飛び込んできた。
なんと世界的にヒットを飛ばしている韓国の7人グループ防弾少年団(通称BTS)がアメリカのバイデン大統領直々にホワイトハウスに招待されたというのだ。先日バイデン大統領は韓国と日本を訪問しIPEF(インド太平洋経済枠組み)に向けて連携を高めるべく会合を行った。しかし、帰国後にまさか直々にこうした海外のアーティストを大統領府に招くなんて今までに例がなかった。彼らとバイデン大統領とはアジアにおける若者事情や青少年犯罪などについて話を行うとしている。
韓国のアーティストがアメリカで華々しく活躍されているのはなにも今に始まったことではありません。とどうしていきなりこんなことを思ったのかと言えばこちらの動画を観てからであった。
昨今のK-POPの世界進出を振り返り、防弾少年団の元祖を探る特集で、遡ること50年前に韓国からアメリカに渡り、アメリカのエンターテインメントを総なめにしたアーティストがいた。
キム・シスターズ
である。
日本では馴染みがないかと思われますが、韓国では伝説のアーティストとして今なお多くの方に語り継がれている。
キム・シスターズはもともと7人兄弟で、うち3姉妹がアメリカでパフォーマンスを行った。
男兄弟もキム・ブラザーズとして韓国国内で活躍をされたものの、3姉妹の活躍はとにかく目を見張るものだった。
キム・シスターズの母親は懐メロでもおなじみ「木浦の涙」を歌った歌手のイ・ナニョン。1935年日本統治下の韓国、現在の木浦市の三鶴島を舞台とした男女の別れを歌ったこの歌は今なお世代を問わず歌われてる名曲です。日本でも菅原都々子さんなど多くの歌手に歌われています。イ・ナニョンさんの知名度は今なお高く、以前ご紹介したKBSテレビ「歌謡舞台」でも特集が組まれるほどの人気の高さです。
父親も作詞家という芸能一家に育ったキム・シスターズは1939年に韓国で初めてのガールズユニット「チョゴリシスターズ」を結成、進駐軍の慰問や日本でも活躍を広げた。しかし1950年に起こった朝鮮戦争で近況は一変し活動は自粛、苦境に立たされた。
その後母であるイ・ナニョンはプロデューサーとして姉妹たちをマネージメントする立場へ変わった。
姉妹らは単に歌うだけではなく、ありとあらゆる楽器の演奏やダンスなど今のアイドルさながら、いやそれ以上のレッスンをこなしていた。イ・ナニョンは姉妹たちを韓国のみならず世界でも活躍できるパフォーマーとして育て上げたいと切に願うようになる。その甲斐あってか韓国国内で活躍しているさなか、アメリカで芸能プロダクションを起こしていた
トム・ボールの目に留まる。彼の計らいで姉妹は晴れてアメリカ・ラスベガスでショーを行うこととなった。
アジア人初のラスベガスでのショー公演、夜通し続くライブに姉妹はヘトヘトになりながらも拍手喝采を得た。
そしてその知らせがアメリカを代表する名司会者エド・サリヴァンに届いたのだった。1960年姉妹らはアメリカのエンターテインメントの最高峰テレビ出演、また視聴率が70%を超えるお化け番組である。
「エドサリヴァンショー」に出演を果たす。これが韓国人としてアメリカのTVショーに出た金字塔として語り継がれている。
1963年には「エドサリヴァンショー」にて母イ・ナニョンとの共演も実現した。裏話として本来は英語で『アリラン』を歌う予定だったものの、英語の習得が間に合わず、韓国語での熱唱となったがこちらが好評を得た。また韓国ではイ・ナニョンの歌う映像はほとんど残されておらず、歌うイ・ナニョンの映像としても大変貴重なものである。
その後エドサリヴァンショーは計22回出演、これは約1万組以上の出演者の中でも3姉妹は当時の大スターであるシュープリームスやテンプテーションズを抑えて最多出演記録となる。モータウンレーベル花やか時代にコリアンのパフォーマンスがアメリカで認められたのだ。その後1965年に姉妹を育て上げた名プロデューサーイ・ナニョンが逝去、1973年まで彼女たちは韓国やアメリカの地で活躍を続け、3姉妹の結婚を機に自然と解散となったのだ。
それから50年の間コリアンアーティストがアメリカのショービジネスに参入する機会が遠のいたように見えた。
しかし、2012年韓国で未曾有のヒットを飛ばしたPSYの「江南スタイル」を始めK-POPがアメリカでもはやり始めた。そして2021年9月に防弾少年団が今まで例のない国連の場でパフォーマンスを行った。
韓国のアーティストが国際社会にはばたく中でそのパイオニアとしてかつてキム・シスターズというガールズユニットがいたことを忘れてはいけない。彼女らの功績は今もなお燦然とアメリカのエンターテインメントの歴史に刻まれている。
【参考資料】