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コラム|ブルームバーグ前NY市長と、都市系メディアの独立性
今週のメニカンjournal担当者コラムをお届けします。
メニカンjournalは、デザイン・建築・都市に関連する最新情報を紹介する企画です。メニカンのtwitterアカウント(@ConfMany)にて毎日更新、現在テスト運用中。ご意見・ご要望・リクエスト等あれば、こちらのフォームへ!
メニカンjournalで今週紹介した記事のまとめはこちらです。
今週もここから一本コラムをお届けします。
さて、今週のメニカンjournal、特に注目を集めたのは、「4/23|感染症と浴室デザインの歴史」と「4/20|ロックダウン下の"都市のイメージ"」でした。いずれもCityLabという都市デザインを中心に扱うウェブメディアからの記事です。アーバニスト(都市計画の専門家)を中心に根強いファンが多いこのメディアは、the Atlanticというメディア企業によって2011年にローンチされたものです。今回はこのメディアにまつわるトピックをひとつご紹介します。
実はこのCityLab、2019年12月に売却され、いまはオーナーが変わっています。その人こそ、前NY市長で経済・金融分野の大手メディア企業"Bloomberg社"オーナーのマイケル・ブルームバーグ氏です。この"事件"が、CityLabの読者の一部を不安にさせたという記事があります。
なかでも注目を集めたトピックのひとつは、オーナーが行ったNY市長時代に関するCityLabの記事がどうなるのか、また今後、ブルームバーグ氏に関する記事をCityLabは書けるのか、という問題でした。都市の"経営"を重視するブルームバーグ市政はニューヨークのあり方を大きく変え、よく知られている"High Line"などのプロジェクトもその成果のひとつです。その成果が良くも悪くも世界中に影響を与えているいま、ニューヨークに拠点を置くCityLabが、ニューヨークについて書くことにバイアスをかけられてしまう、というのは非常に厳しい問題だったはずです。
しかも当時のブルームバーグといえば11月末に大統領選への民主党公認候補選びへの立候補を表明したばかり。メディア企業のオーナーによる大統領選出馬自体に懸念が示される中、その傘下に入るCityLabの動向も難しくなるだろうことは容易に想像できました。だからこそ、CityLabのファンたちは不安を隠せなかったわけです。
それでは結果はどうだったでしょうか。興味深いのは、その後のCityLabにもブルームバーグの都市政策や提言について正面から扱う記事が出続けていること。昨年12月から今年4月までに、記事内でブルームバーグ氏に言及する記事は少なくとも6本あります。うち3本にはオーナーについてのdisclosure(情報開示)が読者むけに添えられています。
disclosureあり
1/22/2020公開|「Inside Bloomberg's $1 Trillion Infrastructure Plan」Drawing on his time as New York City mayor, Michael Bloomberg proposes handing power and money to urban leaders as part of his Democratic presidential bid.
2020/1/13公開|「What Mike Bloomberg Got Wrong About Redlining and the Financial Crisis」Comments about New Deal-era housing discrimination made by presidential candidate Michael Bloomberg echo a familiar narrative about minority homeowners.
2020/2/25公開|「Why Black Businesses and Homeownership Won’t Close the Wealth Gap」Economic plans like Mike Bloomberg’s assume that boosting black homeownership and entrepreneurs will close racial wealth gaps. New research suggests it won’t.
disclosureなし
disclosureが無いものは2本。
2019/12/5公開|「An Urban Agenda for the 2020 Candidates」Some 99 mayors have a new policy agenda for the presidential candidates. Their message: Fund the priorities our local citizens are actually talking to us about.
2020/4/24公開「Density Has Saved Lives in New York City — and Can Do So Again」Before coronavirus transformed urban life, New York had achieved a massive public health success, thanks in part to the city’s now-maligned layout.
disclaimerあり
2020/2/26公開|「Joe Biden, Gentrification Foe, Has a Housing Plan」Biden pledged to halt displacement during the South Carolina debate—a reflection of how critical housing is in a state with sky-high eviction rates.
最終的に民主党の公認候補に選ばれたジョー・バイデンの住宅政策について報じていたこちらの記事の末尾には、disclaimer(注意書き)がつけられていました。
Disclaimer: Michael Bloomberg is also seeking the Democratic presidential nomination. He is the founder and majority owner of Bloomberg LP, which recently acquired CityLab.(注意:マイケル・ブルームバーグは、民主党の大統領候補にもなっている。彼は、最近CityLabを買収したBloomberg LPの創設者であり、大多数のオーナーである。)
以上をみているかぎりでは、記事ごとの対応に差はあるものの、現代の都市デザインにおける最重要人物のひとりとなったブルームバーグ氏に関する記事を書き続けることは、20年4月の段階ではひとまず可能でありつづけているようです。読者コミュニティの不安にたいして、内部の記者はひとまずの応答を出し続けられているという印象を受けます。
とはいえその内実がどうなっているか、また今後どのような展開になってゆくのかはわかりません。CityLabが置かれた状況は極めて特殊ですが、同時にニューヨークという都市のあり方を強く印象づける出来事である、と言えそうです。
今週は以上です。ありがとうございました。
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