シェアってなに、シェアキッチンってなに
岐阜県の大垣市で菓子製造業許可付きシェアキッチン「ちょいみせキッチン」を運営しています。シェアキッチンってなに。とよく聞かれます。
まだまだ、地方都市ではシェアという言葉自体が馴染みがなく、シェアオフィスやシェアカー、シェアハウスもほぼないに等しいくらいです。
戦後、モノのない時代を経て、戦後復興から高度経済成長期には、モノを持つ事が豊かさの象徴とされてきました。近年では、たくさんのモノで溢れる生活から、必要なものを、必要な時に、必要な分だけでいい。もたない暮らし、ミニマリスト、断捨離という言葉もあるように、モノへの価値も大きく変わってきました。そして、新しいウィルスの登場により人々の生活スタイルも大きく変わりました。
シェアキッチンとは
シェア(共有)とは、持ってる人が持たない人に共有することです。車や、お金、時間、空間、技術などの資産を、必要な人に必用な時に、必要な分だけ分け与える仕組みです。
シェアキッチンとは、文字通りキッチンをシェアする場です。キッチンってみんな家にあるじゃないと思う方もいるかもしれませんが、例えば、お菓子作りが得意な人がお菓子を販売したいと思った時に、保健所の認可のあるキッチンでしか販売することが出来ないのです。この保健所の認可というのが、一般家庭で取ろうと思うとなかなか大変。
・居住空間と分ける必要がある。必然的にキッチンが2つ必要
・キッチン内にシンクとは別に手洗いが必要。
・外側から温度がわかる冷蔵庫
他にも様々な施設基準があるのです。自宅で販売しようと思うと改装してキッチンを別に作るくらいの気合と覚悟、もちろん費用も必要になってしまいます。
趣味でお菓子を販売する事が難しいのです。それは、食べ物は、人の口に入るものであることから、一歩間違えば人の命を奪うことにもなりかねません。食品衛生の知識がないまま、無許可で販売するというのはとっても怖いことですよね。
多くの保健所の許可付きキッチンでは、事前のオリエンテーションやシェアキッチンの食品衛生責任者が注意を払い、利用者の食品衛生の知識を埋めるために、様々なルールや規定を設けています。時間貸しで必要な時間だけ保健所の許可のあるキッチンを貸し出す事ができる仕組みです。利用者は金銭的なリスクの負担を最小限に出来るだけでなく、場所と衛生管理の知識をシェアすることで、安全に食品を製造販売することができます。
最近ではシェアキッチンも様々な形態があり、菓子製造業許可を持たずに、一緒に料理を作って楽しむためのコミュニティ重視のキッチンやレンタルルームのような役割のもの、シェアオフィス にキッチンが付加されているなど様々な形態が出てきました。
このように、シェアキッチンも含めシェアする仕組みや、シェアビジネスが増えてきました。モノを所有する時代からシェア(共有)する時代に移り、資産をシェアするということで経済的な負担やリスクが軽減されるだけでなく、持っている人が、必要な人に提供することで、需要と供給として成り立っています。
「シェア」という概念は、モノや時間、空間、技術など様々なモノの共有へと拡がり新しい文化として構築されつつあります。また、単にモノや場所だけをシェアするだけでなく、シェアすることを通して、そこで生まれる人の繋がりを重要視することになってきました。核家族化や都市化がすすみ、地縁や血縁といった強い繋がりから、会社や組織で繋がりのある社縁、そして繋がりを自分の自由に選ぶ選択縁へと人々の繋がりが大きく変化している中で、地域における人の繋がりも変わってきています。
シェアキッチンを運営するなかで、シェアキッチンとは、単にキッチンをシェアするだけでなく、人と人を繋げていくことへの期待があると考えます。
地域におけるシェアキッチンがもたらす価値と存在意義について改めて考え、シェアキッチンが私たちにどのような未来をつくり、どのような社会を作っていくのかを考えるためのスタートとなることを願います。
つづく
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この記事は、著者の論文「シェアキッチンから生まれる繋がりに関する研究−「ちょいみせキッチンを事例として」−」から抜粋、改編しています。
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