低周波治療って何なの?
接骨院で働いると患者さんから
『電気ってなんでやるのですか』と、よく聞かれます。
そうですよね。よく分からないですよね。
慣例儀式みたいにどこでも行われていますけれども、説明をしてくれるところは少ないと思います。
実はいろいろな効果が期待されている優れモノなのです。
何よりも副作用が少ない!
これって意外と大切で、薬なんかではよく効く反面、副反応も大体でてしまう。
花粉症では薬を服用すると鼻水などの症状が治るが、眠くなってしまうなんてことも起こるのです。
電気治療でも副反応はありますが、あまり出ないのです。
では、そんな低周波治療にはどのような効果があるのか見ていきましょう。
痛みを軽くする
一般的に電気治療を活用する目的として『痛みを軽くする』という効果があります。
大昔にはシビレエイを使って電気治療したとういう人もいたそうです。
(よく試してみようと思ったな・・・)
痛みを感じる周辺に触刺激(ここでは電気)を与えることで、痛みの感覚を邪魔するという根拠から使われています(ゲートコントロール論)。
簡単に言うと、脳が刺激(ここでは電気)を感じると、もともとあった痛みを感じにくくなるというのです。
そして電気刺激を感じると、身体の様々な反応により疼痛物質を軽減させることとつながり、結果、痛みが和らぐ効果があります。
少し難しい言い回しでしたが、痛いところに手を当てる・さするという行為も科学的根拠はあります。
(痛いの痛いのとんでけ~♪、にも疼痛軽減効果はあります!)
痛みに対する電療法・TENS
医学的に電気を使った鎮痛方法はいくつかありますが、最も代表的なTENS(経皮的電気刺激療法)についてお話していきます。
少し専門的な話となってしまいますが、興味がある方はお付き合いください。
TENSはゲートコントロール論に加えて、内因性オピオイド(体の中か出る痛みを抑える物質)放出も関係していると考えられています。
効果を上げるポイントとして周波数(1秒間に+・-が切り替わる波の数)、パルス(波ではなく衝撃のこと)持続時間、強度、治療時間、設置部位を考慮することが大切です。
適当に電極を付けたりしてるように見えますが、こういうことも考えて私達はやっています。
10Hz以下の周波数を低周波、100Hz前後の周波数を高周波と呼ばれていますが、一般的に多いのが低周波治療器です。
痛みをコントロールするうえで大事なのは皮膚の刺激ではなく、深部の太い求心性神経線維を刺激することが大事になってきます。
設置部位は電極を痛みの直上に置くことが多いですが、この時、端子を近くに並べてしまうと刺激が表面上にしか走らず、皮膚刺激となってしまいます。
ですので、痛むところから少し離れた部位につけたりすることもあります。
結局、痛みを感じる・伝えるのは神経(脳、脊髄など)なので、そこにアプローチをかける必要があります。
また、痛みの種類、部位を推測してデルマトーム、スクレロトームに設置すのも効果ありの可能性があります。
サッカー選手みたいな名前が出てきましたが、説明が長くなってしまうので下の図を見てください。このように神経が支配されていると考えられています。
痛みがあるとき、この範囲にTENSを付けると効果があるというデータが多くあります。
実は驚くことに、負傷した反対側に電極をつけても同じ神経節範囲であれば痛みが和らいだというケースもあるのです。
ケガした場所ではないところも痛みを感じるのはこのためでしょう。
(例 腰が痛むときピンポイントで指をさせず、この辺りが痛む)
電気治療を使い分けるにはどの組織で痛みを出しているか推測・見極めることが大切です。
皮膚や筋、または滑膜、滑液包、またはどの髄節レベルであるか考えに考えています。
皮膚や筋はデルマトーム。
骨膜、関節包ならスクレロトーム。
毎回、患者さんの話を聞いて、いろいろ試行錯誤しながらやっているので、微妙に電極を置く部位が変わったりしてくのです。
パルス時間考えますと、感覚レベルTENSを適用する際はAβ線維を脱分極させる50~100μ秒、運動レベルTENSを適用する際は運動神経を脱分極させるために100から200μ秒が推奨されています。
なんのこっちゃ、と感じると思いますので聞き流してください。
これは何の話かというと、痛みの治療か、運動療法の目的かに分かれるという話です。
後ほどお話いたしますが、電気は運動療法の目的にも使われたりします。
次に電気刺激の強さですが、簡単に言ってしまえば、受ける人が程よく感じるレベルでよいです。
目で見てピクッピクッと筋肉が動いていれば効果はあります。
刺激が強くても弱くても効果に大きな変化がないとデータがありますので、個人の好みで調節してください。
私は電気刺激が苦手なので最弱にしてます。。。
電気治療時間はTENSの場合、15分から30分で効果を発揮させるとありますが、様々意見が分かれているところです。
創傷に対する電気療法
ここでいう創傷とは皮膚のことも指しますし、筋・筋膜のことも指します。
我々は後者の治療に使います。
ここで治癒の流れのお話を少し。
ケガをすると発痛物質ブラジキニンという物質が損傷部から出ます。
これが高濃度になると通常43℃で反応するものが32℃反応してしまい、平熱でも痛みを感じてしまうのです。
ですのでケガをしたり、炎症が起こったらアイシング・圧迫をしてブラジキニンを出さない、もしくは出しても作用させない処置が大切になってきます。
これは比較的簡単にできますので、応急処置として是非行ってください。
組織の修復には酸素と栄養素の確保が大事です。
治癒過程で血管新生されたら、繊維芽細胞が活性化され、次に肉芽形成されます。
また多核白血球は損傷部において壊死組織の囲み貪食を始める。
つまり、新しい建築が始まり、壊れた組織は削除してくれます。
ここから電気の話に戻ります。
白血球はマイナスイオンを持つから電極は+を付けて引き寄せます。
逆に増殖細胞はプラスイオンだから-の電極が有効です。
目に見えないですが、大切な設定です。
創傷治癒に有効なのは高電圧電気刺激HVPCと微弱電流刺激microcurrentという機器もあります。
これは比較的新しいものですが(と言っても20年くらい前からありますが)、この詳細はまた別の機会に。
筋力低下に対する電気療法
東ヨーロッパではスポーツ医学領域で筋力増強目的に電気刺激療法が開発させられた歴史があります。
今は通販とかでもよく見かけますね。
また、失禁治療を目的に干渉低周波電気刺激を骨盤底筋群に機能改善として泌尿科領域で使われることもあるなど、筋肉に電気刺激を与えて強くする目的にも使われています。
他に脳卒中や脊髄損傷、筋腱断裂、もしくは長期間のギブス固定やベット上での安静、廃用症候群や加齢によるサルコペニアなどがありますによって起こった筋力低下治療にも使ったりします。
麻痺が、ある方に電気刺激をすると筋肥大効果が認められています。
これは筋収縮だけでなく、神経系にも刺激され動かしやすくなる結果だと考えられております。
ですので廃用症候群などの全身状態の低下や虚弱高齢者には筋力増強に多少有効かと考えられています。
随意的(自分で動かす運動)な運動と合わせるとさらに神経系も刺激され、良い傾向がありますので組み合わせたりしています。
また健常者に対して行っても効果が少ないですがあります。
ただ、ムキムキにはならない程度です。
アスリートにも筋力増強効果はあったのですが、パフォーマンス向上には繋がりませんでした。
禁忌事項
電気治療の適応外もあります。
・妊娠されている方
・悪性腫瘍がある方
・ペースメーカー等電極が体内に埋め込まれている方
などなど
このほかにもいくつかありますので、基礎疾患がある方などは一度医師にご相談ください。
以上、電気治療のことを簡単にご紹介しました。
今ではほとんどの治療院で活用されておりますし、私も多く活用してます。
皆さんも効果を知った上で治療していただくと実感が増すかもしれませんので、是非治療院の方に質問したりしてください!