体がしんどいと思ってたら憑いてた話(後編)
前編はこちら。
なんやかんやあって私の中にはどうやら霊的ななにかがいるらしいことが発覚。
先生もナカタさん(先生を紹介してくれたお友だち)も笑っているけど、こちとら一緒に笑っている場合ではない。
まぁともかくここから本格的な除霊(お祓い?)がスタートするわけだが、その前に先生に「お手洗い大丈夫?」と聞かれた。
初めての場所でトイレを借りるのが苦手な私は「大丈夫です!」と断ったのだが、これが後にとある事件を引き起こすことになる。
先生は私に再び手を合わせるように促し、今度は「座ってるのもそのうち辛くなるだろうから寝転がっちゃっていいからね、あと我慢しないで声とか出していいから」と卑猥なアドバイスをくれた。
一体なにがこのあと起こるのだろう…私、人妻なのに!
そうこうしているうちに先生はまたお経を読み上げながら私のおでこに手を当てた。
ポクポクどころかカッカッカッ!と強めに響く木魚の音に、耳が激しく鼓動を打ち始め、自分の意思とは関係なく体が倒れていった。
「マジでこれなんなん?」と心の中でつぶやきつつ、未だ半信半疑な私に次なる変化が襲い掛かってきた。
なんかめっちゃ息が苦しい。胸がぎゅ~っとする。恋なの?
苦しさに身悶え始め、ついには「ああああ…」と声が漏れ出した。(えっちではない)
そのうちあ~とかう~と言って唸りだし、もがいて地べたをバンバン叩いた。(全て自分の意思とは関係ない)
先生が「名前は?」と聞くと、唸りながらなにかを言おうとしているのがわかったがなかなか言葉にならずに、先生はYES・NOで答えられるような質問に変え性別や年齢を聞き出した。
合っていれば首を縦に振り、間違っていれば横に振る。
私の体を別の誰かが勝手に使い質問に答えていた。
すると途中から少しずつ言葉を発するようになり、会話がスムーズに進むようになった。
最終的に分かったことは、最近事故で亡くなった女性が憑いていたこと。
若くして突然亡くなってしまい、どうしたらいいかわからなかったということ。
私の自宅に近いお墓で私に入ったそうな。
悲しみに共鳴するように少しだけ涙が出て、先生の合図とともに彼女は成仏していった。
(私なんだかすごい体験してる…成仏できてよかったね…)
そんなことを思っていると先生が「次の者」と言った。
ん?次の者?
私に憑いていたのはひとりではなかった。
促されるように2人目、3人目と出てきては、どこで憑いただの亡くなったのは何才だの、各々個性あふれる自己紹介をしては先生に成仏させられ私の中から出ていった。
はっきりめに喋るおじさん、言葉遣いが丁寧な淑女風の女性(生理痛が重たかった原因はこの人らしい)、サイコパスな感じの若いメンズ、病気で亡くなった子供(おかぁさーん!!と突然泣き出して一緒に泣いた)などが私の中に入っていた。
(あと何人いるんだろう…)
途中、そんなことを思いながら、私の体(本体)にはある異変が。
めちゃくちゃおしっこしたい。
割と序盤(2人目)くらいから尿意を催していたのが、いよいよ限界のマジ膀胱がショート寸前くらいになっていたのだ。
しかしながら、私(本体)は自分の意思で喋ることができない。
初めての場所で初めての体験(初対面の人の前でお漏らし)なんてそんなこと!私人妻なのに!
依然として続く先生と中の人の会話。
このままだと、成仏の合図(ちょうど膀胱に近いお腹あたりをグッと押される)で私の膀胱が成仏してしまうかもしれない。
今私の体を借りて喋っている人がどんな人だったのかを聞く余裕もなく、とにかくおしっこが漏れそうという気持ちでいっぱいな私。
それを伝える手段がなく、どうかこの人が最後であってくれと願い、自分の言うことを聞かないながらに堪える膀胱。
「よし、じゃあ今から成仏させるからな」
と先生が言うと、
「トイレ行きたいって言ってるよ」
まさかの救世主現る。
私の体をつかい私の中の私でない人は、私の心の叫びを先生に伝言してくれたのだ。(ややこしい)
先生は「お、おう。わかった」と言って、救世主こと私に憑いてた人を成仏させた。
そしてすぐさま私(本体)を起こし、トイレに行くよう促した。
ちなみにその時助けてくれたその人は男性だった。(ちょっと恥ずかしい)
多少ボーっとしながらトイレを済ませ、先生の所に戻った。
「まだいるから」と再度私を寝かせ始まるお経。(まだいるんかい)
そしてここからはなんと可愛らしい動物の登場。
猫ちゃん。
驚いたことに私の体勢は次第に寝転がる猫の様になっていき、手をグーにして仰向けでゴロゴロとくつろぎだした。
先生の質問に「うん!そうだよ!」と可愛らしい返事をし、成仏できると知ると嬉しそうに「やったぁ!」と言っていた。(私の顔も勝手に笑っていた)
素直に成仏していった猫。控えめに言って超可愛かった。
そしてその猫曰く、あと一人いるよと言っていたので次が最後のやつなのだろう。
先生が「出てこい」と言うと、気怠そうな態度の悪いのが「あー」と言いながら出てきた。
なんだこいつ。斜に構えた感じで出てきおって。これから先生に成仏してもらえるのよ!ありがたく思いなさいよね!なんてことを考えていると、先生が「きつねか?」と中にいるやつに聞いた。
(きつねなんて本当にいたの!?)と驚いていると「あーそう」と答える私。(もちろん私はきつねではない)マジかよマジなのかよ。
その後先生ときつねが話をし、どうやら私が小学生の時に憑いたらしいことがわかった。
最初出ていくことを嫌がっていたきつねだったが、先生に「地獄に落とすぞ」と言われたことで素直に私から出ていくことになった。
そんなこんなで全ての中の人たち(動物含む)は私から出ていき、各々行くべき場所に旅立っていった。
終わった後はお守りをいただき、数日は体がだるくなるからゆっくり過ごしてなどのアドバイスをもらって自宅に帰った。
「いっぱい憑いてた!いっぱい喋った!」と興奮気味に夫やナカタさんに報告。(ちなみにナカタさんも喋るタイプ)
もちろん私の膀胱の救世主のことも。
世の中には信じがたいことがたくさんある。
今まで私には関係ないと思っていた今回の出来事。
まさか自分の身を以てそういう世界を証明することになるとは思いもしなかった。
というか憑きすぎじゃね?
もちろんこの体験談を読んで下さった方々の中にも「信じる・信じない」があっていいと思う。
創作だと思っていただいてもいいし、中には「私も!」という人もいるかもしれない。(誹謗中傷は私の心が傷ついちゃうのでおやめください)
とにもかくにも、こんなことがある(尿意を霊体に伝言される)人もいるんだなぁと楽しく読んで頂けたら幸いだ。
おしまい。
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