読書録:令嬢はまったりをご所望。1|三月べに
婚約者に婚約破棄を言い渡され魔法学校を追放されたローニャが、喫茶店のオーナーになり第二の人生をまったり過ごしたい!というストーリー。悪役令嬢へ転生する王道の設定ですが、ストーリーは異世界転生に縛られないファンタジーです。(こんちゃ)
主人公ローニャの婚約破棄と喫茶店に訪れた獣人
ローニャの回想からはじまる。ローニャは伯爵家に生まれた令嬢で、9歳のときに王弟殿下のご子息シュナイダーとの婚約が決まる。もちろん親同士が互いの利益のために決めた縁談である。ローニャの家庭はあまり温かい家庭ではなく、幼少のころからずっと家族から冷たくされてきた。成績を1番取り続けても努力が足りないと罵詈雑言を浴びて育ってきた。
ローニャは前世の記憶があり、今世が死ぬ直前に読んでいた小説の世界で自分の婚約者がヒロインに奪われ婚約破棄・断罪されることを知っている。人生に対し諦めもあり、婚約破棄され生家を追い出されれば自由になれるのではないかと希望を抱いていた。
ローニャが喫茶店をはじめると、獣人4人の常連さんができる。1巻は、ローニャのこれまでの生い立ちや背景、そして獣人との出会いと仲良くなるまでのストーリーが描かれています。
【POINT1】もふもふな獣人のほっこりシーン
動物好きにはたまらない動物の毛のもふもふ。この世界では獣人は人間を引き裂くだけの力があり恐れられていますが、ローニャはその獣人のフワフワした毛、つやつやしたベルベッドのような毛に目を輝かせます。獣人のかわいらしいシーンが盛り込まれていて対照的でそこが面白い。
【POINT2】魅力的な獣人のキャラクター
ローニャの喫茶店の常連となる獣人のキャラクターが魅力的。
無口なリーダーのシゼ’(黒獅子)、本が好きでやんちゃなリュセ&チセを宥める本好きなセナ(緑カイゼル)、ツンデレでやんちゃなリュセ(白豹)、やんちゃで子どもっぽいチセ(青狼)
2020年10月現在で5巻まで出ていますが、ストーリーが進むにつれて、キャラクターの性格が徐々に見えてくるので、まるで自分がローニャと一緒に獣人と仲良くなって相手を知っていくような感覚になります。
【POINT3】目の前に映像が広がる文章
行ったこともない、見たこともない異世界ストーリー。自然に目の前にローニャがいる世界の風景が浮かびます。もちろん、ちょこちょこと挿絵があり世界観や人物の関係がイメージしやすいです。
ローニャの1人称がメインで、間に登場人物視点のサイドストーリーがあります。
頑張りすぎるローニャに感情移入[ネタバレ]
ローニャはとても優しい子で、ミサノ嬢の"勘違い"でローニャを追い詰めシュナイダーに婚約破棄させ略奪されたにも関わらず、復讐しようとは思っていません。むしろ自分に非があったとさえ思っています。(シュナイダーのことを許していませんが)それが、まったく嫌みもありません。
1巻にはローニャのこれまでがわかる内容ですが、深いところまでは分かりにくいところがあります。今後の展開の伏線になっている箇所もあり、ワクワクします。
私はセナが好き[ネタばれ]
獣人は仲間同士でジャレます。ローニャが初めてじゃれたのはセナ。ローニャはすべてを溜め込むタイプで甘えるのが苦手。獣人とジャレることでストレスを発散します。段々と距離が近づいていく様子がジャレる様子を通してわかります。
セナは読書が好きでローニャと本の好みも近い、リュセやチセと違って穏やかで聞き上手なので、ローニャから話を聞くのが上手。セナもローニャに惹かれているのに、距離を置くところや、シゼと近づけようとするところに胸キュンします。
物腰柔らかく、穏やかなのに、感情をむき出しにせず冷静に獣化するところなどちょっとお兄さん的な雰囲気をだしているところがまた素敵。甘えさせ上手なところも胸キュンポイントです。
購入はKindleがおススメ
原作はアルファポリス(小説家になろうから移籍)に連載中ですが、書籍化(コミカライズ化)されているものは有料掲載となるので、書籍かKindleでの購入がおススメです。
単価は高いですが、ボリュームもありますししっかり編集されています。欲をいうと、1000円超えなので目次の設定はしていただきたかったかなと思います。
小説とマンガでは若干ニュアンスが異なる
大筋のストーリーは変わりませんが、コミカライズ版はイラストなので、絵で補足されていたり、加筆されている部分があり、原作から読むとちょっと違和感がある箇所もありました。ただ、作中に出てくる妖精ロトはイメージのままですし、愛らしさやポトポト感がリアルに感じられてそこが良かったです。
Amazonレビューには、本作品の設定主人公ローニャが前世で過労死、死の直前に読んでいた小説の悪役令嬢に転生したという設定はいらないといったレビューがありましたが、ローニャを深く理解するには必要なポイントかなと思います。ローニャは前世の記憶を持っていますが、前世≒今世のローニャです。前世の性格や気質はほぼ変わっていませんが、今世で成長してきた環境が大きく性格に影響をしています。ただその成長過程で支えとなったのは、前世で知っていた婚約破談のストーリーであって、もしその記憶がなかったならおそらく潰れてしまっていたのではないかと思います。また16歳くらいの年齢でどこか大人びたところがあるのは、過去の記憶が少なからず影響しているようにも思います。悪役令嬢に転生していますが、この物語は主人公がスローライフを送りたいがテーマで、悪役令嬢がテーマではありません。悪役令嬢カテゴリだと考えていると拍子抜けしてしまうかもしれません。
ストーリーがローニャの中の時の流れのように穏やかにゆっくりと進んでいくので大きな変化があまりないので、そこが好みの分かれるところかなと思います。
ちなみに、2020年9月に最新刊の5巻が発売されています。この後のストーリーはほぼ更新がストップしているので、完結するのかな…とちょっと心配しています。