【参加レポート】事業構想ツアー2021夏@丹波篠山 3日目 (林業・集落)
事業構想ツアーの3日目は、あいにくの雨模様でのスタート。当初の予定では化学肥料不使用・農薬不使用の野菜を生産している「丹波篠山 吉良農園」を訪問することにしていたが、予定を変更して"木のある暮らし"をテーマにした複合施設「mocca」を訪問した。暮らしの中に「木」を「加」えるというコンセプトから「木加 (モッカ)」=「mocca」と名づけらたそうだ。
moccaは江戸時代の古民家を改装した施設で、カフェ、コワーキングスペース、木工所、宿泊施設が併設されている。コワーキングスペースは、自動車メーカーのダイハツがサテライトオフィスとして利用しており、農業支援などのプロジェクトを進めている。木工所では「きこり」のサポートにより、山で切り出した木から椅子やタンスなどの家具を制作することができる。また、滞在しながら制作を進めることができるよう、宿泊施設も併設されている。
運営にあたっての想いや苦労についてのエピソードを聞くことができたが、特に印象に残ったのが「あらかじめゴールを定めて活動しているわけではない」という考え方である。
例えば、コワーキングスペースであれば利用者数や単価を想定して事業計画を考えるのが一般的であるが、そういった事業のゴールを設定するのではなく「人が集まる場所にしたい」という想いを伝えて資金調達をしたという。
銀行の担当者からは「コワーキングスペースを利用する人は本当にいるのか?もっと人がいるところではないと採算がとれないのでは?」と最初は融資をなかなか認めてもらえなかったそうだ。
売上目標を決めて事業を計画するのではなく、自分がやりたいこと・実現したいことのイメージを先に作り事業を進めていくという姿勢は、事業構想の重要なポイントであると感じた。
次に、里山の古民家を宿泊施設として利用することができる「集落丸山」を訪問した。集落丸山は、地域の人々と交流しながら里山で営まれている日本の伝統的な暮らしを体験する農泊の成功事例として知られている。集落丸山には、古民家を改装した「明かり」「ほの穂」という一棟貸しの宿泊施設が2棟あり、さらに「ひわの蔵」(フランス料理) や「ろあん松田」(蕎麦) といったお店も併設されているため、宿泊だけでなくグルメ目的の来訪者も多いという。
この集落丸山は、1日目にお話を伺った「一般社団法人ノオト」の金野幸雄さんを中心に、集落住民も参加する有限責任事業組合を作って200年から運営されている、観光客の誘致やイベントの企画をノオトが担い、宿泊棟の運営や情報発信を集落住民が担うことで、サービスを作りあげている。農泊が事業として魅力的だから始めたのではなく、集落の景観や暮らしをなんとか残したいという想いで始めた取り組みであり、事業構想の起点は前述のmoccaの場合と同じであると感じた。
集落丸山の中を散策した後、フランス料理「ひわの蔵」で食事をとった。お店自体も築100年以上の古民家を改装したものであり、掛け時計やアンティークの家具がおかれた店内で、丹波篠山の地元の食材を使ったコース料理を楽しんだ。
事業構想ツアーの3日目では、事業構想の起点をどこに置くべきかを学ぶことができた。MBAで経営学を学んだ我々は、事業を構想するにあたって強味・弱みを分析したり、KPIを定めて管理しようとしがちである。しかし、今回訪問したmoccaや集落丸山では、自身がやりたい事を見極めて「まずはやってみる。やってみたら何かが変わる。」という姿勢が起点となっている。この違いを実感することができたことが、今回の事業構想ツアーに参加して得られた一番の学びであった。
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