価値の抽出/セレクトのコツって? 知見聞いてみ隊vol.2
こんにちは、コンセントのUX/UIデザイナー荻原です。
「勉強会や本で知識を得たつもりでも、いざ実践してみると『え、これってどうやるの…?』と手が止まってしまう…」
この記事は、そんなお悩みにスポットを当てた社内の取り組みである「知見聞いてみ隊」のレポートです。今回のテーマは「どのように価値の抽出/セレクトをおこなうの?」。
主に価値分析についてのお話になります。
取り組みの性質上、記事の内容が必ず正解ではないこと・初歩的な学びも含んでいることを念頭に読んでいただけると幸いです。
登場人物
どのように価値の抽出/セレクトをおこなうの?
質問者さんから経験者さんへ共有したお悩みは以下です。
価値マップのあり方について
1.必ず主観が入ることを前提に、捉え方と伝え方は使いわける
1つめのお悩み「質問①:ユーザーの声から抽出した価値は、断定的に捉えるべきか、可能性として捉えるべきか?」について聞いてみました。
実際にユーザー調査から明らかになった価値なのだから、「〜に価値を感じている」と結論づけて良いのか。あくまで可能性として捉えておくべきなのかというお悩みです。
個人の解釈や主観が入ってしまうので、捉え方としては断定的なものとして扱うほうが難しい。ただ、伝え方はその時々で最適な形を模索するべき、ということですね。今まで「主観が入っていることを前提に捉える」こと自体、意識的におこなえていなかったなという気づきがありました。
また、伝え方として「断定的に伝える」か「可能性として提案する」のかは、調査の目的によっても変わるのではという考え方も聞くことができました。
例えば具体的にユーザーの要求や期待の理解が必要な場合、客観的な事実として分析結果を断定的に伝えればよい。逆に、ユーザー自身が気づいていないことを探索的にリサーチする場合は、調査者が状況に応じて解釈し、仮説としてどんどん可能性を提案していったほうがよいという考え方もあるのでは、とのことです。
価値分析の目的やゴールに応じてもまた、アプローチや伝え方を考えることができるということですね。
2.より本質に迫るために「一緒に考えていく」を共有する
主観が入っていることを前提にするならば、抽出した価値を断定的に捉えることはプロジェクトメンバー全員にとってリスクがあるのでは。メンバーのうち1人でも絶対的な正解だと思って進めてしまうと、他に検討すべき事柄が抜け落ちたり、後の進め方で認識に相違が出る可能性があるのではないか。
「なるべく提案の形で共有するのが良いのでは?」という仮説のもと、どのように共有するのが建設的か?また、どのように社内外のプロジェクトメンバーと関係を築いているのか質問してみました。
断定的に伝えるか可能性として提案するか、まずはどちらの方がよりお互い納得ができるのか探ることが大事ですね。かつ、リサーチを創造的かつ本質的なものにするためには、「一緒に考えていく」という空気感をどのように醸成していくのかが肝になってきそうです。
3.手法は、考え方の軸を握ることが大事
「質問②:KA法を取り入れるのはどんな時?」という質問に対しては、そもそもKA法をKA法として使うことはあまりないかも、という回答をもらいました。
手法のテンプレートだけではなく、手法の根幹である考え方の軸を握っておくことが大事ということですね。そして、場面場面ですぐに取り出せる選択肢をつくっておくために、日々のインプットが大切だなと改めて思いました。
また、別軸として場面によってもテンプレートに当てはめるか否かが変わるそうです。
その資料を用いてどれくらい他の人に説明する責任をもつのか。
プロジェクトでつくったものがどれくらい表に出ていくものなのか。
などにより、中間成果物の整理度合い・可視化度合いの必要性が変わってきます。それ次第でテンプレートを取り入れるのか、そのエッセンスだけを使ってラフにディスカッションするのかは変わってくるというお話でした。
価値の分析方法について
1.切片化には、結局プロジェクト理解が最重要
「質問③:リサーチしたデータを切片化する際、どのような発話を抽出すべき?大事なことは?」には、こんな回答をもらいました。
プロジェクトをきちんと理解しておくという点が、こういった場面でも生きてくるのだなと学びでした。また、インタビューでのポイントが抽出時のポイントにもなるというお話も、感覚的に認識していた部分だったのできちんと理由を聞くことができたことでより理解が深まりました。
2.価値の抽出は、文脈と先のフェーズを見据えておこなおう
「質問④:切片化したデータから価値を抽出する際、価値をどの程度抽象化するべき?ポイントって?」については、抽象化の粒度として抽出した価値だけ読んで「『確かにこういうの、あのユーザーが求めていそうだな』と伝わるレベルにする」という前提のもと、さまざまな角度からポイントを聞くことができました。
今回出てきたポイントをまとめると以下3つです。
解釈の飛躍が発生するフェーズなので、インタビューの前後情報を踏まえて根拠をつくる。
提案した価値が、検証可能か考える。
問題解決的な価値と意味形成的な価値があることを理解、区別して整理する。
この中でも特に「提案した価値が、検証可能か考える」という点が、自分の中では発見でした。価値の確かさを検証する場合や、価値をもとに具体アイデアを考え形にした時に、計測ができないのでは改善していくことも難しく…。
モノ・コトを作成・改善する前の価値探索フェーズから、プロジェクトを俯瞰しゴールを見据えて動いていけると良いですね。
3.価値を構造化する時、すでにわかっていることはやらない・言わない
「質問⑤:抽出した価値を構造化する際に気をつけるべきことって?」についても教えてもらいました。
1つ目:先にラベリングを考えて振りわけようとしないこと
例えばサービス利用前、サービス利用中…のようなカテゴリーを先につくり、そこに得た価値を分類するのは価値の構造化ではなく情報整理になってしまいます。価値と価値の間に共通項を見出して、グルーピングをしていくことで、そこにある価値の芯や軸がなんなのかを見出していくことが重要です。
参照記事(https://kmhr.hatenablog.com/entry/2020/06/27/165042)
2つ目:わかりきったことは言わないこと
「何々ができて便利な価値」のような、「そりゃそうでしょ」というものは、言わなくても良い。 例えば「効率的な価値」があった場合、それが「どのように」効率的なのかというところに新しさや発見を見出していけると良いよね、とのことでした。
どちらもついやってしまいがちな点だと思います。聞いた点に気をつけつつ、自分なりの新しい発見ができると良いですね。
4.「間違っていたら…」ではなくて、「説明できるか?」を気にしよう
今まで何度も出てきた主観が混ざるものであるというお話に対して、「でも、もしも主観的に切り取った部分が、間違ってしまっていたら?」という点を、最後に聞いてみました。
漠然と間違っていたらと不安を抱えるよりも、「説明をきちんとできるか」の方が、ゴールが明確になりますね。また、誰も正解なんてもっていないことを前提に動くことが大切だと感じました。
まとめ
今回印象的だったのはやはり「主観」というワード。質的調査は絶対的に主観が入るものであり、誰も正解はもっていないものである、というのは心に留めておきたいです。その上で、クライアントとどのように納得感をつくり上げていくのか、協創していくのかという観点を忘れずにプロジェクトを進行していきたいですね。
また、特に最後の話は、何かとすぐ不安になりがちな自分にとって勇気になるというか、一歩自信をもってやってみよう!と背中を押してくれるような考え方で、今回お話を聞くことができてよかったなと思います。
いかがだったでしょうか?
この記事を読んで、自分もここ悩みがち…、自分はこうしているなぁ…など少しでも共感したり、思ったことがあればぜひコメントに書き込んでいただけたら嬉しいです。
コンセントではデザイン分野が多岐にわたることもあり、キャリアを形成する上で新しい分野に挑戦する人が少なくありません。そして、その中には「最近UX/UIについて学び始めた」という人もいます。そんなUX/UI初学者に対して知見をひらいていこう!という取り組みが「知見聞いてみ隊」です。
引き続き「UX/UIデザイン」にまつわるテーマで第3回も開催・記事化する予定ですので、お楽しみに!
▼▼▼「ペルソナ」について話した第1回はこちらから▼▼▼
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