言葉を定義する時のポイントや方法
こんにちは。UX/UIデザイナーの黒坂です。
私の所属するコンセントのProduct Design groupの取り組みとして、プロダクトのライティングをよくするためのガイドブックを作成しています。
前回の記事では、「ライティングをするうえで前提となる観点」と「構築または品質の維持・改善するためのアクションとリファレンスの一覧」をご紹介しました。
今回の記事では、解像度を一段階上げて、プロダクトで使われるあらゆる言葉を定義するポイントと方法をご紹介します。
プロダクトの構築や改善に関わった方は、経験があると思いますが、ボタンやナビゲーションのラベルや対象の呼び方など、プロダクトに登場する言葉は、さまざまな媒体に掲載され、関係者も多いことでブレやズレが出てきてしまいます。
ブレやズレを解消することで、ブランドイメージの維持、ユーザーの認知負荷や開発時の検討コストを下げることができます。
プロダクトや組織の状況に合わせて、最適な言葉の定義方法を見つけていただけると嬉しいです。
言葉を定義する時のポイント
1:課題の優先順位をつけ、スコープを定める
言葉はプロダクトのあらゆるところに使われるので、理想的な状態(すべての言葉が指針に則って決められており、統一されている状態)を目指そうとすると挫折しがちです。
いきなり理想的な状態を目指すのではなく、自分たちにとっての優先順位を最初に決めましょう。
課題発見のための問いかけ例:
言葉の定義ができていなくて、ユーザーの体験が損なわれているところはどこか?
言葉の定義ができていなくて、問題が起きそう/すでに起きているところはどこか?
言葉を再定義することで、プロダクトの魅力や印象が好転しそうな言葉はあるか?
言葉の定義をすることで、業務の効率化に寄与しやすいのはどこか?
一般的に「言葉の定義」=「用語集づくり」と想像しがちですが、数を絞って主要な言葉の定義をするだけでも良いです。詳しくは下記「言葉の定義方法ギャラリー 」を参照してください。
2:対象の言葉を選んだ理由や背景を言語化する
言葉を定義する時は、決めた理由や背景、使わない言葉(Don’t)やその理由もセットで言語化・記録しましょう。
決めた理由や背景を言語化する意味:新しく言葉を定義する際に決めやすくなる
使わない言葉(Don’t)の理由を言語化する意味:定義した言葉の理解が深まる
例:
3:指針を定める
言葉選びの根拠として全体へ適用する指針を定めましょう。
最初から指針を定められるなら定めても良いですが、「2:対象の言葉を選んだ理由や背景を言語化する」のように個々の判断を積み重ねた先に見えてくることもあるため、どちらから実行しても良いです。
指針は組織やプロダクトの全体戦略と合致させるのが基本です。
組織の「事業戦略」と合致させたグランドルールの例:
中長期計画では、既存プロダクトの機能や価値をtoC向けに展開していく。 これまでは、すでに予備知識のあるtoB向けに展開していたため簡略化していたものも、よりターゲットが広くなるtoC展開においては、より平易に丁寧なコミュニケーションへと変更をしていく。
プロダクトの「ブランド戦略」と合致させたグランドルールの例:
人々の創造性を掻き立てるような余白や遊び心を表現することが重要。言葉や言葉の使い方もそれにともない、漢字表現よりも平仮名表現を推奨し、ビジネス領域で通じるカタカナ用語なども堅苦しさを感じさせる要素になるため、できる限り用いない。
4:定義する対象物の共通認識をもつ
言葉に対してもっているイメージは人それぞれです。特にプロダクトに関連する言葉は、会社組織やチームの規模、文化、社風によって、使われ方が違うことも多いです。
同じ言葉から別のものを想像してしまう状態だと、言葉の定義をするための議論が難しくなります。
議論している対象は「なに」で、「どこまで」を指すのか、共通認識をもつことを心がけましょう。
図示化して議論することをおすすめです。
5:判断に迷う時は、ボイスアンドトーンやペルソナに立ち返る
1〜4のポイントを抑えたとしても判断に迷う場面は訪れます。そんな時はライティングガイドブックVol.1「STEP1:準備編|最初に理解しておきたいこと 」で示したユーザーペルソナやボイスアンドトーンに立ち返りましょう。
言葉の定義方法ギャラリー
プロダクトのフェーズや課題によって最適な定義方法を選択しましょう。
定義方法をいくつか紹介しますので、参考にしてください。
ステートメント型
プロダクトの紹介文などを書き、文章の中で主要な用語を定めていく方法
どんな時に活用すると良いか
まずはプロダクトにおいて重要な用語から定義したい時
大きな方向性が揃っていないため、個々の言葉の議論や決定が進まない時
入ってると良い要素
だれに、なにを、どうやって提供するプロダクトなのかを示す要素
その結果どんなベネフィットを生み出すのかを示す要素
これによって定義される言葉
ユーザー(=だれに)をどんな言葉で呼称するのか?
自分たちのプロダクトの提供価値(=なに)を一言で表現するとしたら?
具体的な手法(=どうやって)を説明するとしたら?
生み出されるベネフィット=ユーザーに訴求するコアの価値は?
定義する時のポイント
なるべく言葉を精査する
例)当然対象は「ユーザー」でしょ・・ではなく、顧客・利用者・従業員・○○職の人など、解像度を上げて議論するプロダクトのイメージに合わせた言葉遣いを意識する(ボイスアンドトーン)
モデル図型
プロダクトに登場したり関係する情報や人、機能などのオブジェクト同士の構造や関係性を図示し、プロダクト全体の中で言葉を定義する方法
例:ビジネスモデル
どんな時に活用すると良いか
言葉の粒度を揃えたい時
プロダクトの関係者や、その関係性を表す言葉を定義したい時
コンテンツモデル・オブジェクトモデル・コンセプトダイアグラム・・さまざまなタイプがありますが、言葉の定義において「モデル図型」は有効です。
辞書型
辞書のように言葉とその定義を列挙する方法(いわゆる用語集)
どんな時に活用すると良いか
すでに多くの単語が存在しており、さまざまな場所で掲載されている単語を収集しながら表記揺れ統一していく時
定義が曖昧な類義語が複数存在している時
データベースにして単語の選択の作業コストやブレの最小化を図りたい時
ルールブック型
一つひとつの言葉そのものではなく、「表記ルール」を定義する方法
どんな時に活用すると良いか
UIテキストなど、統一した文章構造で断続的にライティングが続く時(そしてそれを複数のUIデザイナーが担うなど、担当者も複数いる場合)
新規の画面を設計する時
次回は、「基本のUIテキストライティング」をお届けします!
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