戯れ言

「つまりだな」
男はそう切り出した。切り出したということは、何の脈略もなく言い出したということである。
私は頷いて相槌を打っておく。
そうすると、男も頷いた。
「つまりだな。この星畑(ほしばたけ)に撒いた種はあと3週間もしたら根付いて、また新たな星になるってことだ」
私と男の目の前ではぴかりぴかりと不明瞭に曖昧な間隔で明滅する星の種たちが綺麗に並んで土の中から私たちを見つめている。
男はまた言う。
「だから、収穫は3月(みつき)もあとになったら出来ると思うからちゃんと世話してくれよ」
世話、というと?と私が問えば、彼は怪訝そうな目で私を見た。
変なことを聞いたろうか。
「世話って言ったら、光すぎないようにとか、雑草抜いたりとか、水やったりだよ。お前さん、そんなことも知らないでこの仕事に手を挙げたってのか?おかしな奴だなア」
男の目から逃げるように私は地面から生えもしていない星たちの影を見下ろしていた。

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