“ワンオペ育児”と“KPI”に見る定義付けの落とし穴
「ワンオペってなんですか?」
最近、続けざまにこんなことを聞かれて、ハッとしました。子育て世代では日常用語として使われているワンオペ育児。ニュースでも取り上げられることもあるし、世間一般で使われる言葉のような気がしてしまうことも、しばしば…!!ですが、話題になっていると感じるのは当事者だからなのですよね。
新しい言葉=定義・概念は、今まで見えなかった事象を可視化するのに、とても有効に働く。そして、背景を共有している人にとっては、端的に意味を共有出来る道具となってくれる。ワンオペ育児という単語で、今まで隠れていた社会課題が浮き彫りになるのは良いことだと私も考えています。
一方で、この単語を多用することによる弊害もあるのだろうなぁ…とも感じるのです。言葉によって定義付けされることによって、事実が歪んで見えてしまったり、手段が目的になってしまったり、といった事が起きる。そして、そのことを心に留めているつもりでも、時々、忘れてしまったりする。(自戒を込めて…!)
実は私は、ワンオペ育児という言葉があまり好きではありません。パートナーがやっている家事が見えなくなってしまうから。自分がワンオペ育児をしていると定義付けすることで、他の人がやってくれている動きが見えなくなってしまうのが嫌なのです。住宅ローンの返済や、保育料の支払い、車の運転などだって立派な家事だし、ワンオペじゃない部分だってあるかも知れない。
小さな家事を認めるだけで、関係が変わることはよくあります。自分がやった仕事を見てくれている人がいると嬉しいですからね。そこから、もっとやろう♪という気持ちも生まれるのです。ワンオペという言葉で、最初からその可能性を否定してしまうのは、勿体無い!!
だから、私自身がこの言葉を使うのは、家に夫がいない出張時などに限られています。普段はワンオペじゃないという意思を強固に持って使うのです!笑
同様に、法人向けの相互理解研修をしていて、KPIという単語をよく耳にするようになりました。これもビジネスの世界ではよく聞かれる言葉で、「何を今さら…」というくらい当たり前?の言葉。でも、KPIという言葉の定義があることによって、KPI設定が手段ではなく、目標になってしまうことがあるような気がしたのです。
なんだか違和感を覚えたのが、「KPI設定しましょう!!」で、話が終わっているように見えた点。KPI設定することで、その場の議論は収束するように見えてしまう。そして、恐ろしいことに仕事が増える…!苦笑
もちろん、KPIを上手に使って仕事を減らして、生産性を上げていらっしゃる企業さまもあります。何のためにやるのか?という部分をきちんと共有した上での、ゴールへ到達するためのKPI。そこを忘れてしまってはいけないのでしょう。
特に、私が取り扱っている相互理解は企業文化と表裏一体という側面も強い。だからこそ余計に、形だけではなく、文化として根付いているのか?という部分に敏感なのかも知れません。とにかくKPI設定をして、数字だけを追いかけていても、そもそも心理的安定感なんて数字に表れるんだっけ??みたいな部分もありますしね。形式だけでは見えない部分を見落とさないようにしたい。
言葉による定義付けは大きな武器となる。時として、世界を変える力を持つ。一方で、言葉の持つ力は大きく反作用することもあるのだなぁ。そう言った事象が起きる可能性も心に留めながら、上手に新しい概念を取り入れていきたい。ふと、そんなことを考えたのでした。
3-5年後に家族で世界に飛び出します、たぶん◎