井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た#3
(3)親は誰もが新人。
情報の嵐が吹き荒れる荒野にポツンと立つ親たち
「親は、不安を起点にした子育てをしないほうがいい」
では、親は不安をどうやって取り除けばいいのでしょうか。言葉にするのは簡単ですが、実行するのはなかなか難しいものです。子育てと不安は表裏一体のようです。
「どんな習い事を小さいころにさせておいたほうがいいの?」
「小学校に入るまでに読み書きを学ばせたほうがいいの?」
「そろそろ何かスポーツもさせたほうがいい?」
「中学受験はさせる? させない?」
「スマホはいつから持たせる?」
子育てをしていると、親が選択しなくてはいけないことが次々と押し寄せるような気すらしてしまいます。
不安になるきっかけは、例えば、インターネットで見た広告、子育てブログ・雑誌の情報、街中に貼ってあったチラシ、ママ友との雑談、自分の父母からのアドバイスといった形かもしれません。
その度に親は頭を抱えてしまいます。
一人目の子どもの親になることは、誰にとっても「初めての経験」です。
さて、一般的な「仕事」を思い浮かべてみてください。初めての仕事に取り組むときは、先輩が後輩に教えたり、後輩が先輩のスキルを見て真似たりすることが多いものです。
子育てはどうでしょう。例えば、乳児の育て方については、両親学級など自治体のサポートがあります。「新人親」にとってはありがたい仕組みです。専門的なアドバイスをもらえるだけでなく、同じ悩みを抱えた親同士がフラットに触れ合える機会にもなり、「悩んでいるのは自分一人じゃない」と勇気づけられます。しかし、その後の子育てについてはどうでしょう。
子どもの年齢が上がるにつれ、前述のように、親の抱える悩みは多様化します。さらに子育ては、それぞれの子どもの個性、家庭の環境などが関係してくるので、誰かのアドバイスがそのまま自分の状況に当てはまるとは限らないのがまた難しいところです。
周りに相談できる「先輩親」や「同僚親」がいなければ、照らし合わせることができるのは「自分が育てられた経験」くらいしかありません。
さまざまな情報の嵐が吹き荒れる荒野にポツンポツンと一人で立たされた親が、不安にかられて、ただ消耗している――極端すぎるかもしれませんが、私はそんなイメージを子育てに抱いた瞬間が何度もあります。
子どもが大きくなってくると、子育てについてフラットに親同士が話せる場があまりない、という声はよく聞きます。子育てにおける先輩や同僚がいて、自分の不安や悩みを聞いてもらったり、違う視点からの意見をもらったりできるようなコミュニティが子育てには必要だと思います。
(#4に続く)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。