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井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #27
ヒーローインタビューで見えたもの
「もったいないイベント」対話ドキュメンテーション②
「私は、常に保護者のお面をつけっぱなしで、本当の自分の顔が分からない人になっているかも、と思いました」。記事#23について、こんな感想をくれたのは、小学生の子どもがいる参加者Eさん。
「『次はご飯を食べさせなきゃ』など、わが子にやってほしいタスクが常にある。そして、子どもがそれをしないことが多いので、いつも『ちゃんとしつけないといけないのでは』という保護者モードになっています。だから夫と子どもが外出して1人になれると、保護者のお面が取れて、本当にホッとします。その時間がとても大事です」
【それって「もったいない子育て」!? イベント】の対話ドキュメンテーション(#26)の続きです。
お面が必要な場面はもちろんあります。ただ、つけっぱなしでは疲れてしまいます。まずは、その瞬間、あるいは後から振り返ってでも「自分がどのお面をつけているか」に気づくことが大事なのかもしれません。
そして、参加者Aさんが披露してくれたあるエピソードから、「対話」と「お面」の関係性もくっきりしてきました。
「Co-musubi」で知った「ヒーローインタビュー」を小学生の子どもと実践したら、子どもが習い事の試合で優勝した、とAさん。ヒーローインタビューとは、ある目標を達成した後という想定で、スポーツの試合後のヒーローインタビューのように質問をする手法です。
親「優勝しましたね。おめでとうございます!」
子「ありがとうございます!嬉しかったです」
といったやりとりからスタート。「優勝するために、どんな気持ちで挑みましたか」「どんな点に気を付けたことで優勝につながったと思いますか」「それは具体的にどの部分ですか」といった質問をします。
Aさんの問いかけに対して、子どもは「練習のときに先生から言われたこのポイントに気を付けた」など、具体的に答えてくれたそう。「アドバイスの内容を自分の頭でイメージして自分の言葉ではっきり言語化できました。それによって内容に腹落ちして意識をそこに向けて試合に生かせた。また、すでに優勝したという気持ちで話しているので、できている自分もイメージできた。そのおかげで、自信を持って堂々と試合で実行することができたのだと思います」とAさん。
まさにオープンクエスチョンの対話です。ヒーローインタビューをしているときはインタビュアーとして、目の前の人が最大限にいい答えを出せる問いかけをすることに集中しています。「保護者のお面」や「いいお母さんのお面」のことは忘れています。その点がいいのだと思います。
さらに参加者同士の対話は進み、「子どもが嘘をついたときでも、親子で対話することは可能なのか」という問いが出てきました。
(#28につづく)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。