親子の対話に悩んでいます。「5歳の母のおうちリベラルアーツ」シリーズ③
■はじめに
「5歳の母のおうちリベラルアーツシリーズ」3回目となる今回は、Co-musubi 代表井上さんと未就学児・低学年の子どもの親たちによる「子育てのおける日常の悩み」をテーマとした座談会のレポートをお届けいたします。
これから数回にわたって座談会での様子を投稿していく予定です。
今回の悩みは、「親子の対話」についてです。
■座談会の参加者
井上:Co-musubi 代表理事
富岡:小学校2年生と4年生姉妹の働くママ。日本の教育環境では、育つにつれて子どもの可能性がどんどんなくなっているように感じている。
田渕:年長の娘のママ。最近、「探究」という教育概念を知ったけれど、自分にない「観察する」とか「深い思考」を知りたいと思っている。
お悩み「家庭で深い対話をしたいけど、うまくいかない…」
田渕:前回レポートした調和塾での発表者の親子のみなさんに憧れを持ちました。それ以降、家庭内に対話する文化を作りたいと思い、娘に話しかけているんですけれど、うざがられています。(苦笑)
富岡:私は、子どもには話したいタイミングと話したくないタイミングがあるみたいだなって感じています。それに加えて、子どものブームを理解しようとする気持ちは持ってます。
娘のその時の旬のトピックについてガンガン一緒に楽しんだり、話したりすると、彼女も乗ってきます。
基本的にもっと見てほしい、聴いてほしいというのは子どもの中にあって、それを気持ちの上昇気流にのせていくイメージを持っている。
でも、娘と対話するときに「こういう意見もあるよね。」「こういう考え方もあるよね。」と突っ込みを入れることがあるせいか「ママは『デモデモ怪人』だ。」とも言われています。
井上:親子って近い関係だからこそ、対話って難しいですよね。
ダイアローグ・ラーニングという法人名のように、対話を大切にした教育環境の中で子どもたちは時間をかけて育ってきた、ということもあり、発表をしたCo-musubiの 6 年生やその保護者が理解している「対話」をそのまま参考にするのはお勧めしません。
特に未就学児&低学年までは、言葉優先というより経験優先なんですよね。
■未就学児・低学年の子どもとの対話の土壌づくり
田渕・富岡:経験優先?
井上:ともに経験することを通して「今、どうだった?」「楽しかったね。」など共有しながらも、子どもにじっくり耳を傾け、『あなたが話すことをいくらでも聞きたいよ。』という意思表示を返していくような対話スタイルです。
子どもが話をしていて『楽しい』と感じることが対話のモチベーションになります。だから、親も子どもと一緒に楽しい経験や少し勇気が必要な挑戦をし、行動したからこその『子ども自身から湧き出る言葉を聴く』のに徹する。そういった姿勢が、未就学児・低学年の時期だからこその対話の土壌づくりにつながると考えています。
■なぜ対話の信頼関係を育む必要があるのか。
井上:『あなたの話を喜んで聴いているよ。』という信頼関係がない状態で、親から「どうして思ったの?」と訊かれると、『めんどくさい。』『否定されている。』『受け入れられていない。』という思い込みが子どもたちに強く出やすい。
田渕:まさに我が家ですね。
井上:親子の間での対話のための土壌が豊かになると、「どうしてそう思ったの?」「もっと聴かせて。」と親側のアクションを好意的に受け取れるようになる。
親子だとしても「信頼」は関係性の中で育むもので、スキップできるものではない。
まずは「あなたの話がもっと聴きたい。」「あなたのその考えも素敵ね。」と、親子間で誠実な信頼関係を育んでおくことが先かな!
■中学年からはどのように対話を進化させていくのか
井上:その後、中学年くらいの年齢になると、無意識の領域までもっと探れるようになります。
というのは、「どうしてそう思ったの?」と訊かれた時の答えは、「そういえばどうしてかな?」と、一度立ち止まって考えることで自分でも気づける、通常では意識していない思考領域にあることが多いですよね。
物事も、見えていることより見えていない部分の方が大きいように、人間の思考も、意識できているものよりも無意識下にあるものの方が多い。
意識できる段階の言葉だけを交換するのは、会話ではあるけれど対話とまでは言えないのかなと。
無意識の領域からその子の言葉が引き出されることによって、「自分は本当はこう思っていたんだ」と心の声を自分でも聴けるようになります。
また、だからこそ人はお互いの価値観を理解し合うことができます。
そういった思考の潜りができるようになるのは、人によって違いはもちろんありますが、中学年くらいの年齢のように見受けますね。
家庭では、低学年さんまでに対話の土壌を豊かにして、中学年さんの年齢くらいになったら、徐々に「どうしてそう思ったの?」「どこからそんなふうに感じたの?」と少しずつ問いかけはじめたら十分です。
高学年の年齢になったら「で、あれば…」という新たな視点を提供してみる。
中学生になったら、「じゃあ、こういう場合はどう思う?」と新たな角度や視座からの問いかけをしてみる。
問いは、年齢が低いほど単純&少なめに。
年齢と共に徐々に多角的多重的に、レイヤーや角度を変え問いに複雑さを加えてみる。
高学年や中学生くらいになると、他者に圧倒されず自分の考えを置き合い、友好的に議論をしながら合意形成をしていけるようになります。
■今回のまとめ
井上:スモールステップを理解して、ゆっくり段階的に対話の文化を家庭内に育むのがおすすめ。
たとえ隣りに並んで座っていても、親子の関係性が横ではなく縦の構造になっていないだろうか?とこまめに確認できるといいですね。
未就学児・低学年さんとは、横にいて一緒に経験する・楽しむ・仲間になるのが最初のステップ。
子ども時代の気持ちを思い出して、親自身も素直に楽しんだらいいと思います。
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以上、座談会の中から「親子の対話」についての部分をご紹介しました。
もしこのレポートが少しでも子育ての力になったら嬉しいです。
ご感想などお待ちしています。
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ライター| 田渕 由記