井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #39
#39
「失敗がこわい」をどう乗り越える?
高学年の子どもたちの対話ドキュメンテーション④
(#38の続き)
書籍『失敗図鑑』(大野正人著、文響社)を真ん中において始まった「Co-musubi」小学校高学年ミーティング。子どもたちだけの対話の続きです。
「ココ・シャネルがショーをやったら『いけてない』と言われた話は、失敗じゃない気がする」(#37参照)
「確かに。『いけてない』と言われるのは、あまり失敗じゃないなあと思った。審査員の人の見る目がないだけで、ココ・シャネルは失敗してない」
「その評価を聞いて落ち込んだだけ。本当は『いいショーだ』と思った人がほかにいたかも」
「審査員の好みも含まれるからね」
「失敗って『偏見』というか、自分がどう思うかが混じってくる。どこからが失敗でどこからが失敗じゃないのか。エジソンは自分で『自分は失敗したわけじゃない』と言っているけど、回りから見たら明らかに失敗しているかも」
「ただの強がりの可能性もある?」
「色でいうと分かりやすいかも。黒は薄めるとグレーになるけど、どこまで薄めたらグレー、どこまで薄めなかったら黒かというのは人によって違ったりするから」
「確かに」
書籍の中で「小さな失敗」として出てきた「嘘をつく」にも話題が広がりました。
「嘘をつくのは失敗ですか?」
「人によると思うけど。自分の場合はばれたときが失敗かなと思う」
「あー」(みんな同意するような声)
「ばれない嘘は嘘じゃない?」
「ばれたら失敗だと思う」
「いい嘘と悪い嘘は違うのかな」
「サプライズのパーティとかは、いい嘘かも」
「例えば、クラス全員で誰かのためにお楽しみ会をしようとして、そのことをうっかりもらしちゃったらサプライズが失敗だと思う」
「絶対に分かるような嘘は失敗じゃない」
「この本に出てきた『ランドセルくらいでかいハンバーグ』みたいなね。ただの楽しいジョーク」
「どこからがジョークでどこからがジョークじゃないのか」
「そういう境目みたいなのが難しいよね」
「人の定義にもよる。嘘をつかれた、とすぐにイライラする人もいる」
「嘘もいろいろ考えてつかないとだめなんだね」
「そうだね。でも、やっぱり正直に話したほうがいいかも」
「あ、嘘をつく前提でみんな話しているよね」
「あー」「ほんとだ」「確かに」(みんなはっと気づいたように)
絵の具の混ぜ方やお楽しみ会など、自分たちの身近な例を挙げながら、「人によって異なる」ことや「境目が難しい」といった、本質を突いた対話が広がっていきます。
(#40につづく)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。