井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #38
「失敗がこわい」をどう乗り越える?
高学年の子どもたちの対話ドキュメンテーション③
(#37の続き)
「ひとりずつ意見を言っていく感じ?」
「そんな感じがいいと思う」
「じゃあ、みんないったんミュートを外そう」
そんな風にして、「失敗」について、子どもたちだけの対話が始まりました。司会係をあえて決めなくても、自ら自然に「交通整理」をする子が出てきたり、流れを変える絶妙な問いを投げかける子が出てきたり。自分たちで対話をつくり上げていきます。
「言いたいことがある人は手をあげよう。せーの」(みんな挙げる)
「僕は、失敗して恥をかきたくないかな」
(みんな口々に)「うん」「私も」
「どんなときが失敗だとみんな思いますか」
「私の場合は、例えば何か間違えたときとか、間違えたことをやったとき……」
「私は、嘘がばれたとき。あと『話を盛っているでしょ』みたいな顔を誰かにされたときと、忘れものをしたとき」
「ぼくは自分の思い通りにいかなかったとき。自分はこうしたいと思っていたけど、そのような行動ではできなかった、みたいな」
「それは私もそうかも」
「めちゃくちゃよくある」
そもそも「失敗するのがこわい」ということを自分自身で認めて、その理由を探るのはなかなか難しいもの。みんな自分の内側を冷静に眺めています。
「で、今どういうことを話すんだっけ」
「なんで失敗が嫌なのか、だよ」
「失敗したら嫌だと思うのは、たぶんほめられたいという気持ちがあるから」
「周りの目が気になる」
「そう、周りの目が気になる。こいつ浮いてると思われたくない」
「間違ったことをすると怒られたりすることもあるし」
「失敗したときに他人から評価されるのが嫌。あとであれこれ言われるのではとびくびくしてしまう」
「あ、(発言がほかの子とかち合い、ゆずり合う)じゃあ、〇〇のあとで俺しゃべってもいい?」
「いいよ」
「僕は、失敗すると怒られるから失敗は嫌で、だから成功しようとして焦っちゃって失敗することはよくある」
大人は無意識に子どもに「正解」を期待してしまいがちです。そんな大人の「期待」を感じなくていい場があれば、自分の内側にある思いをどんどん自由に言葉や行動に変えていけるのかもしれません。
(#39につづく)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。