井上さんと一緒に、「もったいない子育て」をやめる旅に出た #28
嘘をつかれても対話はできるのか(前編)
「もったいないイベント」対話ドキュメンテーション③
子どもが嘘をついた……親としてはショックで怒りも湧き上がってきます。そんな場合でも、親子で対話することは可能なのでしょうか。「それって『もったいない子育て』!? イベント」(#27)で浮上した問いです。
まず「子どもの嘘」について。「子どもの嘘にも様々な種類があるのでは」という参加者の対話がありました。
・子どもは無意識に自分にとって都合のいいように話しをしてしまうこともある。
・自分自身を守ろうとしてつく嘘もある。子どもがとっさにつく嘘は反射的なものも多い?
・親に心配をかけたくなくてつく嘘もある。
・「自分の行動が悪いことだった」と認識しているからこそ、それを言いたくなくて嘘をつくことがある。
であれば
→子どもが嘘をつかないといけない事態にならないように大人が心掛けることはできるかも
→「嘘をついた」という事実だけで、全部を否定するのはよくないかもしれない
「人生において本当に親が叱らないといけない場面はそんなに多くはないと私は考えています。嘘にもいろいろな種類があるから一概には言えませんが、やはり中には叱る必要があるケースもありますよね」と井上さん。
親の想いを伝えるべきシーンでしっかり整理して伝えるにはどうしたらいいのか。細かなシチュエーションによって異なるのは大前提としても、やはり親自身が感情的になりすぎているとなかなかうまくいきません。
「これまでの経験で、親が怒った状態で話しても、親、子どもの両者にとって、何もいいことがないと分かりました」と参加者Aさん。それを避けるために、まず自分が怒っている状態であるということだけ伝えて、いったん時間を置く手法をとるそうです。
「例えば『親との約束を守らなかった上に、それを人のせいにするような嘘』を子どもがついた場合。『嘘をつかれてママは今怒っている。今は怒っているから、何を言っても話は聞けない。後でね』と怒りながら伝えます。そして、自分の感情が収まってから『さっきは強く言ってごめんね。でもママは悲しかった。傷ついている。だからどうして嘘をついたのか教えてほしい』と話します」。「自分は怒っている」と口に出すことで、自分自身の状態に気づけるメリットもありそうです。
教員の顔も持つ参加者からはこんな提案も。「先生のお面をつけていると少し距離をおいて見られますが、親の立場だと感情が先走るのは本当によく分かります。ただ、『あなたは本当はどうしたかったの?』という質問をして、子どもの答えを聞き、『あ、あなたはそうしたかったのね』と子どもの想いをいったん引き受けることは大事だと思います。死ぬこと以外は、どんなとんでもない言い分でも、まずいったん引き受ける。でないとだんだん子どもが本音を言わなくなる可能性があります」
ニュートラルな「インタビュアーのお面」を、常に頭の片隅に置いておく。そして必要に応じて短時間でいいのでその「お面」をパッとつけて、子どもが本当はどうしたかったのかを聞き出す。それを意識しておけば、次につなげることができそうです。
(#29につづく)
書き手:小林浩子(ライター・編集者/小学生の親)
新聞記者、雑誌編集者などを経て、フリーランスのライター・編集者に。 自分の子育てをきっかけに、「学び」について探究する日々を重ねる。現在、米国在住。