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町内会のコミュニティ軸を分析してみる

【これはどんなnote?】
このnoteは、「コミュニティの軸とは?」の記事の続編として、具体例を交えながらコミュニティ軸についてさらに深掘りします。今回は、地域コミュニティの代表格である「町内会」を取り上げ、その特性を軸の観点から分析してみました。


こんにちは、コミュカル Mitzです。
コミュカルでは2021年より「コミュニティを企業のビジネスに本気で繋げる」を掲げ、最近ではコミュニティ推進のプロフェッショナル集団 CommuPro Guild を立ち上げ、常に20以上の企業/コミュニティの企画運営を推進しています。
先日公開した「コミュニティの軸とは?|本質的な価値に繋がる8つの軸を紹介」で「町内会のコミュニティ軸は何になるのか?」というご質問をいただいたので、今回の記事では、町内会が持つコミュニティ軸を整理し、その特徴や課題、運営のヒントについて考察してみます。


町内会は複数軸で成り立つコミュニティ

前回のnoteで、コミュニティの軸について「関心軸」「共感軸」「成長軸」「貢献軸(影響力軸)」「交流軸」「居場所軸」「相互支援軸(価値交換軸)」「娯楽軸」の8つを紹介しましたが、結論から言いますと町内会は、一つの明確な軸ではなく、複数の軸が重なり合いながら成り立つコミュニティと考えます。
その地域の特性やそこに住む人たちのニーズ、町内会に参加して活動するかたの目的などに応じてその複合性が変わってきます。

今回は町内会を構成する可能性のある複数の軸を一つずつ掘り下げ、その役割と重要性、さらには軸同士の相互関係について考察してみます。


1. 貢献軸(影響力軸)

町内会における貢献軸は、地域全体の安全性や暮らしやすさを高めるための活動に繋がります。この軸は、住民一人ひとりが「自分たちの地域は自分たちで守る」という意識を共有し、能動的に行動することを促します。
防犯、防災、美化といった活動が主軸になりますが、こういった活動は単なる物理的な改善に留まらず、それぞれの活動が持つ本質的な意義は、「地域住民の意識改革」と「地域の持続可能性」の両立にも繋がります。

例えば、防犯パトロールは物理的な安全確保だけでなく、「犯罪が起きにくい雰囲気」を作る役割を果たします。美化活動では公園や道路をきれいにするだけでなく、「住民が誇れる地域」を形成するという精神的な効果も期待されます。また、防災訓練は地域が災害に直面したときのリスク軽減を目的としていますが、参加者が「地域の絆」を再認識する場としても機能します。

町内会の貢献軸が持つ最大の価値は、住民一人ひとりに「この地域の一員として貢献している!役割を果たしている!」という帰属意識を提供することです。

意義: 社会的な意義が高く、住民が「地域を守る」「地域を守るために貢献する」という意識を持てる軸です。


2. 居場所軸

町内会における居場所軸は、「地域の中で安心して過ごせる場を提供すること」を中心に据えています。
現代の日本では、少子高齢化や単身世帯の増加によって、孤立が深刻な社会問題となっています。こういった背景から、町内会における居場所づくりの取り組みは、単なる物理的な空間の提供ではなく、心理的な安全性やつながりを提供することを重視しています。

例えば、高齢者向けの見守り活動は、生活の安全を確保するだけでなく、高齢者が地域とのつながりを感じる重要なきっかけとなります。新しい住民が町内に馴染むためのイベントは、その地域ならではの文化の共有や住民同士の信頼関係の構築を促進します。こういった活動の根底には、「孤立を防ぐ」という強い目的も込められています。

居場所軸の成功には、その地域に住む人たちが「ここにいていいんだ」と感じられる雰囲気づくりが欠かせません。そのため、運営側は地域の方全員に対して公平な態度で接することや、意見を丁寧に聞くことが求められます。この軸の究極的なゴールは、「誰もが孤独ではなくそして気兼ねなく過ごせる地域」を実現することです。

意義: 現代に多く見られる高齢化社会や孤立社会の対策として重要な軸。


3. 関心軸

町内会における関心軸は、「その地域ならではの人や文化や伝統を好きになってそれを楽しむ・学ぶ・守る」という目的を持っています。
この軸では、住民の共通の興味や関心を活用し、それを通じて地域全体(コミュニティ全体)を活性化させることを目指しています。特に日本では、地域ごとに独自の文化や伝統(行事)が根付いていることも多く、それらを新たな住民や次の世代へ継承する活動が町内会の重要な役割の一つです。

例えば、夏祭りや盆踊りは、地域住民が世代を超えて楽しむことができる象徴的なイベントです。こういった行事は「楽しみ」の提供だけでなく、「その地域やそこに住む人たちを好きになる」「好きになった地域における他者や自分の役割」を再認識する場でもあります。また、伝統行事・伝統工芸や地元食材をテーマにしたワークショップなど、教育的な要素を持つ活動も効果的です。

関心軸の本質的な意義は、地元への興味関心を高めた先にある「地元愛」を醸成し、住民がその地域に誇りを持つことを促す点にあります。この軸が強化されることで、住民一人ひとりが「この地域に住み続けたい」と思うようになり、結果的に地域全体の活性化が進みます。

意義: 地域文化の継承や住民同士の絆を深める軸。


4. 相互支援軸(価値交換軸)

町内会における相互支援軸は、「住民同士がその地域のリソースを活用・共有し、助け合いを通じて価値を生む」ことを目指します。
この軸は、特に少人数で密接なコミュニティで効果を発揮します。町内会が持つ「顔の見える関係性」を活かして、住民同士が互いに支え合う仕組みを作ることがこの軸の最大の目的です。

子育て中の親が協力し合って送り迎えや子供用品や学用品のシェアを行ったり、高齢者が生活用品の買い物を代行してもらったりするケースがあります。また、地域の困りごとに対して専門知識を持つ住民がボランティアで助けることもあります。

相互支援軸の重要なポイントであり魅力は、単なる一方的な支援ではなく、「与えることと受け取ることのバランス」が取れた助け合いの場を作る点にあります。この軸が充実すると、住民間の信頼感が深まり、地域全体が一体感を持つようになります。

意義: 助け合いの精神を醸成し、地域全体の連帯感を強化。


5. 交流軸

町内会における交流軸は、「地域の住民同士が気軽に顔を合わせて、つながりを作る」ことを目的とます。
この軸は、特に「住民の数のわりに住民間の関係性が薄くなりがちな都市部」において重要となることがあります。交流イベントを通じて、住民が「つながり」の第一歩を踏み出すことを促せます。

新年会や餅つき大会やBBQ大会といったイベントは、住民が互いを知り合うきっかけとしても機能します。また、地域住民ないでの共通の趣味を共有するグループ活動(囲碁クラブやガーデニングクラブやスポーツサークルなど)を推進するのも交流軸の一部として有効です。こういった活動は、単なる交流だけに留まらず、新しい人間関係や協力関係を生む土台となります。

交流軸の本質的な価値は、「住民同士が日常の中でお互いを気軽に頼れる関係を築く」ことです。これは居場所軸と同様で、地域の住民が「孤独感を感じない地域社会」を実現するための基盤になります。

意義: 気軽な交流が地域住民同士の顔が見える関係を築きます。


町内会が抱える課題と運営のヒント

複数の軸が絡み合う町内会に存在する課題と、それに対する運営のヒントを考えてみます。

課題1: 参加者層の偏り

昔からその地域にいる高齢者中心になりがちで、若年層や新しい住民が参加しにくい。

  • 課題に対するヒント

    • 若年層向けの活動(BBQ大会やスポーツイベント)を増やす。

    • SNSやLINEグループを活用し、情報共有を効率化する。

課題2: 活動の属人化

特定のメンバーやリーダー的存在だけに頼りすぎる傾向がある。

  • 課題に対するヒント

    • 町内会や町内イベントの運営メンバーをローテーション制にする。

    • 活動内容や運営ノウハウをマニュアル化する。

課題3: 活動目的の曖昧さ

町内会活動自体の目的が不明確で活動に参加している住民やそれを見ている側の住民のモチベーションも低下する。

  • 課題に対するヒント

    • 各活動ごとに「この目的は何なのか」を明確にし、それを住民にしっかり共有する。

    • 防災や文化活動など、それぞれの活動の必要性・重要性を伝える場を個別で設ける。


コミュニティとしての町内会|所感

今回は、コミュニティ推進のプロフェッショナルの立場で初めて「町内会」について当てはめ考えてみました。そして町内会は、地域コミュニティの基盤として非常に重要な役割を果たしており、また多くのヒントがあると感じました。

町内会は単一の軸ではなく、その地域文化や住民の方々の特性に応じて 貢献軸・居場所軸・交流軸・相互支援軸などが複合的に絡み合うことで、多様な住民のニーズを満たしています。
しかし、複数軸があるからこそ、運営が複雑化しやすいという一面もあります。(目的や軸を明確にしやすいビジネスコミュニティより町内会の方が運営が難しいと言っても過言ではありません。)
そのため、まずは軸ごとに活動を整理し、どの軸を優先するのかを明確にすることが鍵となります。


余談

わたし自身、CLS高知という地域主体のコミュニティ運営に携わっており、また2025年より仕事として九州地方のコミュニティ推進に関わり始めました。今回考察したことはコミュニティ推進者としても新たな気付きも多く非常に有意義な機会となりました。感謝!


最後に

最後に簡単ですが、コミュニティのプロである弊社&プロ集団 CommuPro Guildの紹介。
株式会社コミュカルはテクノロジー×コミュニティ×メディアのプロフェッショナル企業として活動しています。
CommuPro Guild はコミュニティ推進のプロフェッショナルメンバーの集った集団です。
わたし Mitz 自身もコミュニティのプロフェッショナルとして様々なコミュニティ運営者からの相談に1on1で答えています。お悩みや相談のある方、ご興味ある方はお気軽にご連絡ください。
(ご相談は無料です)

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