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手紙を書くように仕事をする方法

アサイン、ウィンウィン、マイルストーン。
安易に飛び交う横文字と、炭酸入りのコーヒーがとても苦手だ。どちらかと言えば、昔からあったけど、今も愛されているものに惹かれる傾向にある。どら焼きとか、桃太郎とか、鼻歌とかね。

知りたがりな性格のせいか、昔から気になることはたくさんあり、仕事をしている今も、気になる産業はたくさんある。でも、好き嫌いがハッキリした性格のせいか「推したい会社」は数少ない。人にはさまざまな尺度があるため、これから推す「産報出版」という会社と、業界紙の魅力を、数ある意見の一つとして、最後まで読んでもらえると、とても嬉しい。

アグリ―、オンスケ、エビデンス。
安易に飛び交う横文字と、「常識的にわかってると思うけど…」という人や、「アメリカでは…」という人がとても苦手だ。

だから、古くからあるけれども必要とされ続けている「業界紙」という仕事と、それに関わる人が好きだ。業界紙の読者は、当然、その業界の人ばかりだ。しかし、狭い範囲だからこそ密度が濃く、念入りに読むと、世の中のことがわかる。…ような気がしている。

業界紙は多くの場合、「その業界にとって大きなニュース」「業界の地域別・産業別の特集」「その業界に役立つ商品」の3本立てで構成されている。

業界の大小はあれど、プレイヤーは限られており、多くの場合、数十年プレイヤーは顔見知りだ。そのため、記者が忘れずに掲載しなければいけないのが、「鍵となる企業の社長変更」や「葬儀の情報」だ。

ビジネスモデルとしては、紙面の下部が広告スペースになっており、その業界の人・企業に届けたい商品を持っている企業が、広告スペースを購入し、商品情報を掲載する…といったもの。

業界紙の価値は、業界に従事する人数の中での読者数のシェアの高さで決まる。業界紙とは、その業界の「交換日記」のような役目を担うことになるのだ。記者は、日記を書くのが苦手なキープレイヤーのために、気持ちを代筆する。

だから、業界紙に掲載されているのは情報であり、ストーリーであり、世間話しだ。昔、学校で「しゃべると教師に怒られるから手紙を回していた」なんて経験がある人は、それを千人単位でやっていると思ってもらえれば間違いない。クラスに1人は居た、色恋の情報に詳しいやつや、秘密をいっぱい知っているやつ。それが業界紙であり、その記者には求められる。

業界紙の記者は、たまに「紙面は迅速性がツイッターに劣る」といった指摘を受けることがある。

しかし、それは的外れだ。

先日、町工場の社長の訃報が、その業界紙に掲載された。すると、1日中その記事に関する電話が鳴り続いた。

あいつは何歳で逝ったんだ?
うちの会社で役に立てることはあるか?
葬儀はどこでやるんだ?
あいつとは昔から営業先で顔を合わせていたんだよ。
震災の時には家族の次にあいつの安否確認の電話した。
ご家族は気を落としてないか?
あいつはゴルフが下手だったんだよな。
また温泉にでも一緒に行きたかった。

数々の問い合わせからは、悲しみと、多くの想いを感じ取ることができた。

紙の時代は終わった、迅速性に欠ける、拡散性が薄い、紙媒体は年配者しか読まない、効率が悪い、近々無くなる仕事だろ。

…だから何だ。

届けたいのは紙じゃない。紙じゃないから、溢れた想いの受け皿にも姿を変えることができる。

性能と正論の外側にも確かに世界は広がっている。

遠くのシリコンバレーよりも隣の町工場。

これからも身近な情報を寄せ集めて、少しだけ工夫して、整えて、届けるべき人に届けてたい。

#推したい会社

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