デジタルトランスフォーメーションの新たな展望(CompTIA米国本部ブログより)
こんにちは。CompTIAマーケティング担当の吉村です。
9月に入り少し暑さも和らぐのかしら・・と期待をしていましたが、まだ暑い日が続くようです。
今回は、2020年以降、ITのバズワードとして語られ続けているデジタルトランフォーメーション(DX)についてのブログのご紹介です!
テクノロジー業界では、ハイプサイクル( hype cycles: 特定のテクノロジーに対する期待から普及までの過程を示した図)についてよく語られることがあります。新しいトレンドは想像力をかき立て、業界に従事する技術者や専門家も最先端のツールやプラットフォームの可能性を思案します。時に、ハイプの正当性が示されるケースもあれば、その逆もあります。さらには、正当性が示された場合でも、実現までかなりの時間がかかることもあります。
デジタルトランスフォーメーション(DX)は、長期的な意味合いについて未だ議論が続いているトピックの一つです。数年前に現れたこの用語には、「組織のテクノロジーの取り組み方に真の変化が見られる」と見る人、「あまり実用的な価値のないBuzzワード」と見る人など、賛否両論があります。
当初のハイプはパンデミック時には沈静しましたが、「テクノロジーの役割」について、組織はより戦略的な思考に戻りつつある今、このトピックが再び盛り上がりを見せていることに注目しています。CompTIAのリサーチチームは、組織がDXについてどのように思考しているのか、また、業務上の観点からそれが実際に何を意味するのかを見る調査を実施しました。
DXを推進するもの
調査の詳細に入る前に、組織における「テクノロジーの役割」について、2つの大きな転換を考えてみましょう。1つ目は、テクノロジーを戦術的な必要品としてではなく、戦略的な機能として捉えるという「マインドの転換」です。
長年テクノロジーは、事業部門をサポートする役割を果たし、その事業部門が組織全体のミッションを推進していました。つまり、IT部門は突きつけられた要件をもとにシステムを構築し、コストセンターと見なされるのが一般的だったのです。今日、テクノロジーは依然としてサポート的な役割を担いますが、事業部門と協力して組織目標を直接推進することが多く、部門間の対話や、テクノロジーに必要な投資利益率(ROI)に影響を与えます。
2つ目の転換は「アプローチの転換」で、テクノロジーイニシアティブの主な焦点が明確化されます。これまでは、組織のコンピュータープラットフォームの能力やアクセシビリティを向上するなど、テクノロジー基盤の構築に注力されてきました。クラウドとモバイルが、本質的にこの基盤を安定させたことで、現在では、アプリケーションの構築により多くの労力が費やされていますが、そこには、組織によるソフトウェア開発やデータ分析に投資することで複雑化しています。
これらの転換の詳細については、CompTIAのホワイトペーパー(英語)をご参照ください。Using Strategic IT for Competitive Advantage / The Role of Emerging Technology in Digital Transformation
これら2つの転換が相まって、組織では単にテクノロジーを持つだけでは競争上の差別化要因としては不十分だというところまで来ています。次の課題は、革新的な方法でテクノロジーを活用して、顧客にリーチし、新たな市場に拡大することです。
DXの5つの要素
「マインドの転換」と「アプローチの転換」がDXを推進するのであれば、次の大きな疑問は「DXとは何か?」です。CompTIAの調査により、テクノロジーオペレーションを構成する主要分野を中心としたDXの5つの要素が明らかになりました。
1. Evaluation and Adoption: 評価と導入
この包括的な取り組みには、「新たな要素」と「進化的な変化」の両方が含まれます。「新たな要素」は、企業が新しいテクノロジーを評価する方法に見られます。多くの企業は、これを実施してこなかったため、チームを再編成し、評価と実装のプロセスを構築する必要があるかもしれません。「進化的な変化」は、導入のスピードに見られます。これまで完全に確立されたテクノロジーを導入していた組織も、テクノロジーの恩恵を加速させるためにさらなるリスクを背負う必要があるかもしれません。
2. Cloud-First Infrastructure: クラウドファーストのインフラストラクチャ
特にパンデミックの後に、企業は、回復力と柔軟性を構築する方法としてクラウドシステムに投資しています。インフラへのクラウドファーストのアプローチは、必ずしもクラウドに限るという意味ではありません。コストやセキュリティの観点から、多くのシステムはオンプレミスに留まるかもしれません。しかし、クラウドアーキテクチャは、検討下にある新システムにとって最初の選択肢となり、クラウド移行が有効となる既存システムを特定する取り組みも継続されるでしょう。
3. Software-Defined Processes: ソフトウェア定義プロセス
何年もの間、多くの組織はベンダーからパッケージされたソフトウェアを導入するだけで、社内でのソフトウェア開発はほとんどありませんでした。しかし、インターネットアプリケーションや、マイクロサービスアーキテクチャ、そしてオープンソースコードのおかげで、状況が一変します。現在、多くの企業が、カスタマイズや自動化を目的として、ある程度のソフトウェア開発を行っています。このようなソフトウェアチームが行う作業は、社内プロセスの改善を目的としています。
4. Data-Driven Decisions: データドリブン型の意思決定
非構造化データや膨大なデータセットに関する新たな機能が、データ分析に対する高い需要を生み出しています。経営層や上層部のマネージャは、意思決定を行う際に新たな知見を活用したいと考えています。しかし、データアナリストを見つけることだけでは解決策になりません。データ分析は、データ管理における強固な基盤の上に成り立つもので、多くの企業は、データドリブン型になるための第一歩として、データベース管理に投資し、データフロー全体を検証しています。
5. Cybersecurity-Aware Operations: サイバーセキュリティを意識したオペレーション
サイバーセキュリティは、デジタルオペレーションのあらゆる側面に織り込まれています。かつては非常に防御的な考え方(セキュアな境界)であったものが、今では複雑でプロアクティブな哲学(ゼロトラストアーキテクチャ)となっています。サイバーセキュリティは、技術システムからビジネスプロセス、従業員の行動に至るまで、業務のあらゆる部分で考慮されなければならなりません。多くの点で、サイバーセキュリティはITトピックではなく、財務や法務と変わらないビジネス上の必須事項となっているのです。
大きな課題であり、DXが真に影響を与えるのは、これらの要素を融合させることです。今日多くの組織が、ハイブリッドアーキテクチャの最適化、Webプレゼンスの向上、多様なソースから成るデータの管理、サイバーセキュリティモニタリングの自動化など、これらの分野でのイニシアティブを進めています。真のトランスフォーメーションは、こうしたイニシアティブが部門の垣根を越え、営業効率の改善や顧客満足度の向上など、より広範な目標を達成するために連携することで実現します。
DXのハイプサイクルは数年前より始まっていますが、最終的な可能性を理解するにはまだ日が浅いように感じます。私たちは、今日のデジタル経済において組織が新たなレベルに到達するために、DXがどう役立っているかを理解するために、このトピックのさらなる探求と、さまざまなオーディエンスとの対話を楽しみにしています。