第4回 ② ミミズと微生物、ウジ虫の力で生ごみを分解 東京農工大 農学部ミミズコンポスト管理局
大学内での循環を目指してスタートしたミミズコンポスト管理局(以下、ミミコンと表示)。第2回は、生協からでる生ごみをミミズコンポストやウジコンポストで堆肥化する仕組みとともに、ミミコンメンバーのコンポストへの思いを聞きました。
生協食堂の食品残渣を餌に
生協からの生ごみは、生協食堂が閉店した午後3時すぎに出されるとのことで、代表の三輪さんと宮崎さんに同行させてもらった。
ミミズの好物はキャベツの千切り!
生協から出る生ごみはさまざまなものがあるが、ミミズには主に野菜や果物くず、お茶がら、コーヒーかすなど、主に植物性の生ごみを与えているという。この日は、キャベツのカット野菜を中心に、食べ残しの野菜や揚げ物を入手!
「アンドレツリミミズは、これがとっても好きなんです」と、宮崎さんがまるでペットに餌をあたえるように、トングを使ってキャベツの千切りをコンポストの表面に丁寧に置いていく。というのも、千切りキャベツは、細かくカットされているため、ミミズにとって食べやすいサイズなんだとか。なるほど、ミミズの口を想像してみると、大きくカットした生ごみは食べづらそう。それにエサが大きいと食べ残しがでてしまい、そこから臭いが発生し、虫を呼び込んでしまう原因にもなるという。
ちなみに柑橘類の皮は、与えていない。というのも柑橘類の皮には、ミミズにとって有害なリモネンという化学物質が含まれていて、ミミズが死んでしまうこともあるという。
私が実践しているダンボールコンポストの場合、柑橘系の皮はコンポスト内の臭い消しにもなるため、積極的に入れているが、ミミズにとってはダメージになるというのは発見だった。また、ちいさなミミズは温度変化にも弱いらしい。
ミミズは意外とデリケート
「ミミズは夏の暑さに弱くて、29℃以上でストレスがかかり、35℃以上になると死んでしまうんです。そのため、夏場は直射日光があたらないようにみんなで屋根を設置したり、蓋の上に水をかけたりしてます」と三輪さん。それでも、このところの夏場の猛暑は、ミミズにとって過酷な環境らしく逃げ出してしまうこともあるという。
「ミミズの脱走を防ぐため、コンポストの空気穴にはガーゼを当てています。それに、ミミズは意外とデリケートで、学園祭でコンポストを展示する際に、コンポスト内を少しかき混ぜるんですが、これがミミズにストレスがかかってしまうようで、そのあと、少し元気がなくなってしまうんです」。
想像以上に繊細なミミズたち。ミミコンでは、生ごみを入れた量や生ごみの種類、気温、土の中の温度などをデータ化し、日々のミミズの変化を丁寧に観察、記録しながら、ミミズが暮らしやすい環境づくりを心掛けている。
コンポストの新星☆ ウジコンポスト
ミミズコンポストには、生協から出た食品残渣のうち、主に植物性の生ごみを入れているという。では、肉や魚など、動物性の生ごみはどうしているのだろう?
「ミミズコンポストに動物性の生ごみなどを入れると、アメリカミズアブなどのウジ虫が発生しやすくなります。ウジ虫は生ごみを分解してくれるので、処理速度も上がるのですが、あまりに大量に発生するとミミズにも悪影響があって。そのため、2022年からは、ウジコンポストを試験的に運用しています」。
ミミズコンポストの傍らに、先輩が自作したウジコンポストがあった。
生ごみの処理能力が格段にアップ!
「基本的にウジ虫は、なんでも食べてくれるんでミミズコンポストに入れられなかった生ごみをすべて投入しています」と三輪さん。
ウジというと、ぎょっとする人も多いかもしれないが、その分解量は微生物と比べるとはるかに多い。私が実践しているダンボールコンポストにも、夏場など気温が高くなるとアメリカミズアブなどのウジ虫がやってくることもある。しかし、虫が入ることで圧倒的に分解量が増え、温度も上がる。
また近頃、注目されているように昆虫はタンパク質の塊。虫が入ることで、より良質で栄養たっぷりな堆肥ができるのだ。
ミミズコンポスト管理局では、ウジコンポストを設置後、生ごみの全体の処理能力が格段にアップしたという。「アメリカミズアブは、45℃まで生存可能なのでミミズが弱ってしまう夏場の生ごみもどんどん分解してくれるので助かります」。
2023年度(4~10月)、ミミズコンポストとウジコンポストに投入した生ごみは、約71kg。できた堆肥は、大学内の畑サークル(農工やさい塾)で野菜作りに使われている。農工大では、ほかにも学内で飼っている牛や馬の糞も近隣の農家さんなどで利用されているという。
ミミズコンポストからはじまる未来
学内全体で、循環への取り組みを行っている東京農工大学。最後に、ミミコンに入ったきっかけや思いを聞いてみた。宮崎さんは
「中学時代を過ごしたアメリカ・カルフォルニアでは、学校で回転式のコンポストを実践していたんです。その体験もあって、以前からコンポストには興味があって。生協の残飯を使って堆肥を作ることは、フードロスをなくして資源を循環することでもあり、ミミコンは、環境問題の解決のひとつになると思ったのがきっかけです」。
部長の三輪さんは、
「生協から出る生ごみは一定でなく、大量の場合もあるので、ミミズたちが分解できる量のバランスを見ながら投入しています。また、夏場はミミズがバテ気味なので餌をキャベツの千切りだけにするとか、ミミズの様子をみながら調整するのが、難しいことでもあり楽しみでもあります」。中学校からの体験が今の活動に繋がっている宮崎さん。そして入部3年目、コロナ渦の影響もあり、なかなか活動が思うように進まない中でも管理局をまとめてきた三輪さんからは、常にミミズが暮らしやすい環境に心を配る様子が伝わってきた。
後日、ほかの部員の方々にもミミコンに入部した動機や活動について伺ってみた。入部したばかりの1年生、𠮷村さんと二瓶さん、姫野さん。そして2年生の阿部さん。
入部してまだ2ヶ月、1年生の生物生産学科二瓶さんは、
「家でも家庭菜園をやっていたのですが、生ごみから土を作るのが面白いなーって。いろいろな部活がある中で、土を作れるのはミミコンだけというのも入部の動機になりました」。
環境資源科学科1年生の𠮷村さんは、高校2年生の時に訪れた農工大の学園祭で、ミミコンを知り、
「学食から出た生ごみが堆肥になるという仕組みに興味があって。食品ロスにも貢献できていることもすごいなと思って」。𠮷村さんは、農工大の食品ロスに取り組むサークル「のこすまいと」でも活動。日常生活でも、賞味期限が早いものから買い物を心掛けているという。
応用生物科学科の姫野さんは、実家で畑を耕していたこともあってミミズは身近な存在だったという。
「ミミズが好きで可愛いなって思って入部したんですが、ミミズコンポストのミミズは、畑で見るミミズと全然違っていて。そこでミミズにはたくさんの種類があることを知ったんですが、これからは、ミミズの種類や構造やミミズの生活についてもっと学んでみたいな思っています」。
知れば知るほど、奥深いミミズの世界。まだまだ知られていないことも多いようだ。農学部地域生態システム学科2年生の阿部さんによると
「日本には、少なくとも500種類のミミズが暮らしていると言われていて、種類によって、色や形、暮らしぶりも違っていたりするのが面白いんです。でも、世界的に見ると、日本はまだミミズの分類が遅れていて」。将来、ミミズの研究をしたいと思っているという阿部さんは、これからのミミコンの未来についても語ってくれた。
「ミミズと土を使ったコンポストは、自然界という大きな視点から見ると、本来の姿じゃないなって思うんです。もっといろいろな生物、種を混ぜてコンポストができないかなって。それに今のプラスチックケースのコンポストも改良することで、コンポストティー(液肥)をとったり、もっとミミズを増やして上手に管理することで、生ごみの分解を促進することもできるんじゃないかなって思っています」。
ここ数年は、コロナウイルスにより、先輩たちが培ってきた技術や意識の継承が難しかっただけに、これからは、さまざまなアプローチから、ミミズコンポストの可能性を模索したいという。なにより、学生時代から日常の問題として、フードロスや地球環境について考え実践していることに頭が下がる思いだ。
ミミズ愛あふれるミミコン部。今後は、ミミズコンポストやウジコンポストの体験により生まれた多くの発見や気づきから、新しいリサイクルの形を発明、提案してくれそうだ。日本のダーウィンが生まれる日も近い!
参考リンク
東京農工大学 ミミズコンポスト管理局
https://web.tuat.ac.jp/~mimicon/index.html
第4回① ミミズと微生物、ウジ虫の力で生ごみを分解 東京農工大 農学部ミミズコンポスト管理局
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