第4回① ミミズと微生物、ウジ虫の力で生ごみを分解 東京農工大 農学部ミミズコンポスト管理局
第3回でお話しを聞いた金森さん宅で、ミミズコンポストのお話しを伺ううちに、「ミミズコンポスト」への興味がわいてきた。
英語では、「ミミズ」をearth wormという。直訳すると土・大地を這うように進む。まさに土を耕す生き物のことだ!
『進化論』の著者チャールズ・ダーウィンは、晩年をミミズの研究に捧げたという。かのダーウィンが夢中になった「ミミズ」。もっとミミズの世界を知りたい! そんな時、東京農工大学農学部に、「ミミズコンポスト管理局(通称・ミミコン)」という自主ゼミナールがあることを知った。農学部にあるミミズコンポストって、なんだか面白そうだ!
早速、府中にあるキャンパスに伺った。今回は、2回にわけて東京農工大のミミズコンポスト管理局のコンポストについて紹介したい。
ミミズの住まいはプラスチックケース
2019年に発足したミミコンの部員は、現在9名(2024年度)。春休み期間中の3月末、代表の三輪さんと、宮崎さんが取材に応じてくださった。
広大な畑が広がるキャンパスの一角に、ミミズコンポストがあった。
ちなみに、「自主ゼミナール」とは、農学について自主的に学ぶことを目的としたサークルのことで、ほかにも「狩り部」や「養蜂サークル」「ミニホースの会」など、農工大らしいユニークな活動がある。
訪れると、目に飛び込んできたのは、意外にもクーラーボックスを大きくしたようなプラスチックのケース!
ミミズ=自然というイメージからすると、ちょっと人工的な感じだが、この中にたくさんのミミズが暮らしているという。三輪さんがコンポストを開けると小さなミミズが見えた。思ったよりもかなり細くて小さい印象だ。
コンポスト向きのミミズって?
一般的なミミズのイメージといえば、庭や畑でニョロニョロと動いているミミズだ。これは、フトミミズといって、主に土を食べてその中にいる微生物を栄養源としている。
一方、コンポストには、アンドレツリミミズとシマミミズ、2種類のミミズを使っているという。
「アンドレツリミミズとシマミミズは、生ゴミや野菜くずなどの有機物を餌としているので、コンポスト向きのミミズなんです。シマミミズは、釣りの餌用にも飼育されているので、釣具店で購入できるんですよ」と三輪さん。ミミコンでは、この2種類のミミズと微生物の力を利用して生ごみを分解しているという。
宮崎さんが、「ミミコンの間では『アンドレ』って呼んでいるんですよ」と赤い色をしたアンドレツリミミズを指さしてくれた。まるで推しの愛称のような呼び名からも、ミミコンの皆さんがミミズを可愛がっている様子が伝わってくる。ミミズの周りには、小さなお団子のような黒い粒が見える。一見、土のようにも見えるが
「これはミミズのフンなんです。アンドレツリミミズやシマミミズは、生ゴミや枯葉などの有機物を消化し、フンとして排出するんですが、その時、腸内で消化した物質や土が粘り物質で練り合わされて、お団子のような形=団粒になるんです」と三輪さん。
通常、ダンボールコンポストなど好気性(酸素を必要とする)コンポストでは、微生物の動きを活発にし、生ごみの分解を促進するために、毎日、コンポストをかき混ぜ、酸素を取り入れる必要がある。しかし、ミミズコンポストの場合は、丸いフンが空気の通り道を作る。そしてミミズが動くこと=攪拌効果がありため、かき混ぜの手間がいらないのだ。通気性の良い土は、植物にとって根も張りやすく、フンは栄養となる。まさに「earth worm」だ。ちなみに、ケースの中身は、もとはキノコの菌床だったそうで、今は、そのほとんどがミミズのフンだ。
シマミミズの寿命は2~4年くらい。死んだミミズは分解され、土の養分となるという。土を耕し、最後まで土の栄養となってくれるミミズって、なんてけなげなんだろう。
ミミズコンポストを使って
大学内での循環モデルを形成
では、そもそも東京農工大でミミズコンポストをスタートしたのだろうか? その理由のひとつが「大学内での循環モデルの形成」だという。
「ミミコンでは大学の生協から出る生ゴミをミミズの餌にして堆肥を作っています。その堆肥で野菜などの作物を育て、作物を農工大で消費することで、大学内での小さな資源循環を目指しているんです」と三輪さんは語る。
現在、ミミコンではできた堆肥を学内の畑サークル、農工やさい塾で使い、野菜を育てている。
こうした大学内で循環モデルを軸として、2019年にミミズコンポストを発足。以来、生ごみの処理や堆肥の熟成方法、堆肥の成分分析、堆肥の使い道、生産した作物の消費方法などを模索、活動をはじめた。
大学内での循環を目指してスタートしたミミズコンポスト管理局。次回は、生協からでる生ごみをミミズコンポストやウジコンポストで堆肥化する仕組みとともに、ミミコンメンバーのコンポストへの思いを聞きました。
第4回 ② ミミズと微生物、ウジ虫の力で生ごみを分解 東京農工大 農学部ミミズコンポスト管理局