#10 コンポストでどのくらいCO2排出を減らせるのか?(その1)
本当に暑かった今年の夏…そんな中で日々考えるのは、コンポストをやることでどのくらい温室効果ガス削減に効果があるのか!ということです。
これについては、いろんな計算法、考え方があるのですが、今回はそのひとつ、「環境省 ゼロカーボンアクション30」をご紹介します。
HPはこちら⇒環境省 ゼロカーボンアクション30
これは、2021年に国が作った「地域脱炭素ロードマップ」の中で発表されたCO2削減のアクションリストです。
30個の行動の中の20番目になっているのが「自宅でコンポスト」。
(HPでは隠れていてちょっと見にくいのですが、「食ロスをなくそう!」のタブの中にこの情報があります。)
~「ゼロカーボンアクション30」から引用~
(20) 自宅でコンポスト
生ごみをコンポスターや処理器を使って堆肥化
・生ごみの減量と子どもへの環境(家庭)教育推進活動に繋がる。
・作った堆肥を家庭菜園やガーデニングに活用できる。
(家庭菜園やガーデニングによりリラックス効果も)
そして、「年間のCO2削減量」として
「18kg/世帯
生ごみを可燃ごみとして処理せずに、コンポスト等で堆肥化した場合」
とあります。
おっ! なかなかこういう風にはっきりとした削減量を示している資料が少ない中、これはどんな計算かな?と思い、ゼロカーボンアクション事務局に数字の根拠を伺ってみたところ、こちらの論文をもとに試算していることがわかりました。
「家庭用生ごみ処理機の環境負荷評価」(2008)
(こちらのページで読むことができます。)
少々、古い論文なのですが、なかなかこういった研究が少ないため、現在時点でベストとみなされたものかと思います。
そこで、この論文から数字がどうやって計算されたのかを、見てみました。
この研究では京都市福知山市の生ごみ処理機・コンポストの使用に関するアンケートや、生ごみ処理機のメーカー等から得た各種データをもとに、ライフサイクルアセスメントを行っています。
分析したのは、以下の3種類
●電気式生ごみ処理機(乾燥型)
●電気式生ごみ処理機(バイオ型)
●コンポスト容器
全て耐用年数5年として、以下の項目を細かく計算しています。
この論文の数字を元に、ゼロカーボンアクションでは、以下のような計算をしているとのこと。
①コンポスト利用により生ごみ収集・処理に伴うCO2排出量を削減
■ごみ収集・・・3kg-CO2/台・年
■ごみ処理(焼却)・・・17kg-CO2/台・年
②コンポスト容器の製造~廃棄に係るCO2排出量の増加分を加味
■プラスチック製・1.5kg想定・・・0.5kg-CO2/台・年
(①―②)×(1-現状実施率)=18.291-CO2/台・年
※現状実施率は6.2%
ということで、最初に出てきた「年間のCO2削減量 18kg/世帯」となるそうです。
(ちなみに、こちらの論文ではコンポスト容器1台あたりの年間生ごみ処理量を475Kgとしており、一日あたりにすると1301g。アンケートに基づいているそうですが、今の感覚だとかなり多めな数字ですね・・・ )
(さらに、もうひとつ・・・この論文の計算では、CO2削減につながったのは「コンポスト容器」のみで、電気式生ごみ処理機についてはいずれもCO2排出量が増加していました。乾燥式・・・149.8kg/年、バイオ式・・・22.4kg/年の増加です。)
さて、この削減量の18kgがどのくらいなものなのか、が気になるところですが、
ゼロカーボンアクションの他の数字と比較してみましょう。
例えば・・・
●節電(エアコンの使用時間を1日1時間短くした場合)…26kg
●衣類の購入量を1/4程度にした場合・・・194kg/人
●マイバッグの活用(年間300枚のレジ袋を、ポリエステル製のマイバッグ(3枚)に代替した場合)・・・1kg
●木を1本植林した場合・・・0.8kg
●食事を食べ残さない(家庭と外食の食品ロスがゼロになった場合)・・・54kg
となっています。
エコアクションの代表選手、マイバッグに比べるとかなりの削減量がありますね。
ただ、日本人ひとりあたりのCO2排出量(年間)は、1780kg。
コンポストで減らせる分は1%くらい・・・ということになります。
「なーんだ、やってもしょうがないじゃない」と思う方もいると思いますが、温暖化対策に関しては、私は「今、やれることを全部あわせてやる」が大事だと思ってます。1%でも、増えるんじゃなくて、減る方向に行くのは大きいのではないでしょうか。
実は、生ごみコンポストのの温暖化防止効果については、さらにプラスαがあります。
「削減」(=排出量を減らす)のみならず、二酸化炭素の「吸収」にも貢献できる・・・つまり、コンポストは使えば使うほど、すでに大気中に放出されてしまったCO2を「回収」して減らす効果もあるのです。
実は、今、世界的にコンポストが注目されている理由も、ここにあります。
コンポストをやることは、最近の言葉で言えば「ネイチャー・ポジティブ」「リジェネラティブ」(やればやるほど、環境を良くしていく)な行動になるのです。
これについては、第2弾の考察としてまとめてみようと思います。
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