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5.和声課題の間違い探し

この記事は和声のマガジンに含まれています。
その0:芸大和声の補足ノート
その1:和声のススメ
その2:知識0でも(きっと)分かる和声概論
その3:実際の曲を和声分析してみる(Ave verum corpus)
その4:ポップスに和声の考え方を活用する
その5:和声課題の間違い探し

こんばんは、吉田(@yoshitaku_p)です。

皆さん、芸大和声の学習はどのくらい進んでいるでしょうか。課題の実施はしてみましたか?

I巻の内容を習得するだけでも美しい動きを作ることはできるのですが、最初の方は課題の実施をスムーズにできるようにするための基本的な扱い方しか出てきません。

和声学を習得するにはいい本なのですが、作曲をするにあたって活用するためにはあまり実践的ではないところにこだわりすぎているとも言えるでしょう。

そこで今回は、例外的な連結禁則を区別できるように、和声課題の間違い探しをしてみたいと思います。

下にある楽譜はI巻のp.66、課題24の1を実施したものです。

範囲としては3和音の第2転回位置までの和音が使われていますが、この中に例外的な連結と禁則がいくつか含まれています。

ちなみに例外的な連結についてはp.118「配置・連結の一般的可能性」を参考にしてください。

次から解説をしていきますので、少し楽譜を見て考えてから下にスクロールしてください。


1. IIの第1転回位置の和音

I巻のp.54には「第3音を含む(根)密が最適であり」とありますが、ページ下の方に書かれている(3)密(根)開を使うことも多いです。

今回の実施では、2小節目で(3)密が使われていますが、外声間に並達8度ができています。

外声間の並達8度はソプラノが順次進行をする場合はよいのですが、今回は跳躍しているのでNGです。

2. V-VIの例外的な進行

3小節目から4小節目にかけてV-VIの進行がありますが、導音が上行していません。

一見これは間違いのように見えるのですが、p.124で例外的な進行として認めています。これは導音が内声にあって目立たないためでしょう。

3. VI-IVの連結

共通音を保留せずに密集配分から開離配分に連結していますが、連続8/5/1度、並達8/5/1度ができていないため問題ありません。

4. IV-IIの連結

5小節目のIV-IIの進行ですが、こちらも共通音を保留せずに連結した結果、連続8度と連続5度ができています。

基本的に共通音を保留しない場合は配分を変えることをおすすめします。

5. I-IVの連結

I巻では明確に書かれてはいないのですが、実施例を見るとソプラノを根音で終わらせている課題が大半を占めています。

例外的に変終止の場合に第3音で終止するものもあるのですが、今回の課題ではそれを試そうとした結果、7~8小節目で外声間に連続8度ができています。

もしIVが第2転回位置だったらこのソプラノの動きを使うことができましたが、今回はソプラノを保留する必要があります。


まとめ

基本的なルールは大切なのですが、あくまでもそれらは連続・並達を作らないためのルールでしかありません。

I巻の最後の方には、標準外の配置についてもまとめられているので、じっくり読んでみることをおすすめします。

和声は禁則やルールが多くつまらないものだと思われがちですが、音の扱い方を身につければ、日頃の作曲の中でも十分に活かせるはずです。

ただ、一般的な作曲と4声体での作曲では前提とする条件が全く違うので、くれぐれも和声のルールにとらわれすぎないようにしてください。

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