ドビュッシー《亜麻色の髪の乙女》の分析(40%完成)
こんばんは、吉田(@yoshitaku_p)です。
今回はドビュッシーの『前奏曲集 第一巻』より8曲目《亜麻色の髪の乙女》を分析します。楽譜はimslpからダウンロードすることができます。
曲の構成
変ト短調、3/4の曲ですが、タイで引き伸ばされる音によって拍節感が失われている部分が多いです。
T.1~11の分析
【T.1~2】伴奏がない単旋律で演奏されます。最初のDesの音が引き伸ばされており、上がって下がるパターンが2拍ずつ演奏されるので、楽譜を見ないで3/4だと分かる人は少ないと思います。和音の面でも、Des-B-Ges-Esと順番に聞こえてきた上でGes-durに解決することはなかなか予想できません。T.2の最後でIV-Iの進行が聞こえてきますから、この2小節巻を無理やり分析するとIV9の和音といえるでしょうか。
【T.3~4】この曲で頻繁に現れるタンタタターの形は、2拍目の音が長いのでアクセントが2拍目に付いているように聞こえます。T.4は本来だったら無くても良さそうですが、3拍削って弾いてみると少し慌ただしいような感じがします。
【T.5~6】V-III-VIの和音が使われていますが、調性のある曲ではあまり使われない進行ですね。T.6ではIIIとVIが長三和音に変わり、Es-durで終止したような雰囲気を持っています。
【T.7】1拍目の音は前の拍で先取りされていますね。これでやっぱり2拍目に音があることが分かります。
【T.8~11】は譜面で見ると身構えそうですが、ドミナント和音が並行に移動しています。無理やり芸大和声の記号を書いておきましたが、分析としてはあまり意味はないですね。その後II-V-Iの進行があって、ようやく強い形でGes-durに解決します。T.10とT.11は同じ旋律が繰り返されていますが、こうされると耳に残りやすく、音域も下げやすくていい方法ですよね。
T.12~21の分析
【T.12~13】冒頭の和音が不思議な響きです。下からソ、レ、ラ、ド、ミですから、コードで表すとG♭sus4(6,9)という感じになるでしょうか。ペンタトニックスケールの音で作られており、旋律の音とも一致しています。
【T.14~15】再び和音が並行で移動しており、一番上の音を除くと長三和音の長三和音の第二展開位置で構成されています。一番上の音とそれ以外のリズムを合わせると、完璧に16分音符単位で噛み合います。そのままFesの音を導いて、ミクソリディアンのような響きになります。
【T.16~18】ここまでの最高音であるCesの音が出ており、T.3のように3拍目に音がなく、少し浮遊感があります。その後はFの音を飛ばして下行しますが、T.17とT.18はほぼ繰り返しになっていて、T.10~11を思い起こさせます。
【T.19~21】完璧なヨナ抜き音階で、Es,F,G,B,Cの音で旋律が作られています。3拍目の和音は下からB,F,As,C,Esと並んでおり、久石譲作品に通ずるようなオシャレな響きです。
T.22~27の分析
【T.22~23】ここでも1拍目の音がT.7のように先取りされています。急に現れた16分3連は装飾音なので無視できます。コードで見るとC♭-D♭-E♭mとなっており、しれっと同種短調であるes-mollに転調しています。
【T.24~27】並行に和音が動いているように見えますが、実は度数の関係が音によって変わっています。これは、Es,Ges,B,Dの音でのみ和音が作られているためですが、実はこの4音は冒頭で現れたものと同じです。T.27の2拍目でII-Vの進行が現れますが、これも解決せずにIVに向かいます。
T.28~39の分析
【T.28~32】冒頭を思い出させるようなIVの和音上の旋律の動きですが、先取りされて引き伸ばされており、T.31~32の旋律も同じように引き伸ばされています。
【T.33~39】T.33~34はT.12の動きが倍になっており、曲の終わりを示唆しているようにも見えます。T.35ではG,A,C,D,Eのペンタトニックを使って上行し、長く引き伸ばされた主和音Iで曲が終わります。
総括
拍節感が失われている部分が多いのは「乙女」なので女性終止を期待しているのかもしれませんし、単に好みなのかもしれません。
和音が並行で動いたり、ペンタトニックを多用したりしていましたが、これがドビュッシーらしさに通ずるのかもしれません。
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