ストレスは悪いもの?「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」ケリー・マクゴニガル
ストレス、と聞くと誰もが悪いもの、最終的には健康を害するもの、と思って、避けたがるものだけれど、ストレスのない人生なんてありえない。でも、そもそもストレスは悪いもの、と思っていることが悪い、というところからスタート。
著者はスタンフォード大学の健康心理学者、ケリー・マクゴニガル博士。以前、TED Talkで見たとき、「なんて美しい人なんだろ〜、天は二物も与えるのね」と思ったけれど、二物どころか、何物も与えているんだ。広範囲の研究事例、多くの人のストーリー、ていねいな人間味あふれる温かい解説、とてもわかりやすい本。
印象に残ったところは以下。
▫️ ストレスが悪者にされたわけは、ハンガリーの内分泌学者、セリエの実験用ラット実験からはじまった。それを人間にもあてはめて、世界中の人に、ストレスは有害である、と思い込ませたこと。しかし実際には、ストレスには、有害なものもあるが、役立つものもあるのに。
▫️ ストレスは悪いと思うことによって、身体にも悪い反応が起こる。
▫️ ひとたび、「ストレスは役に立つ」というマインドセットを受けた人は、一度のマインドセットで、その後ずっとストレスに対する反応が変わり、うつになりにくく、人生に対する満足度が上がる。
▫️人はどうでもいいことにストレスは感じない。ストレスを感じる=自分の大切なものがおびやかされているときである。
▫️人生に生きがいを感じている人々は、あまり生きがいを感じていない人に比べて、心配事が多く、ストレスも多い。自分の役割に取り組み、目的意識をもって、チャレンジして生きれば、ストレスも避けられない。
▫️お母さんを自殺で亡くした人が、愛する人を偲びながら活動するボランティア団体を立ち上げ、活動している。人生が180度変わった。しかし「母をなくす前の自分より、今の自分のほうが好きですが、だからといって、母が生きていてくれたら、と思わないはずがありません。母の死がよいことだったとは思いません。そこに何らかの意味を見出すことができたのはよかった、ということです。」
▫️ 上記に対して、著者、マクゴ二ガルは言っている。
「この違いは非常に肝心であり、逆境によって強くなる、ということを理解する上で、もっとも重要なことのひとつ。苦しむことじたいによいことなどない。トラウマ体験がすべて、成長につながるとは限らない。苦しみによって、成長するとき、成長となる糧はあなた自身のなかにひそんでいる。それは、あなたの長所や、価値観、逆境のよい面を見つめようとするあなたの態度です」
本の中で、あなたの価値観を考えてみる、というのがあった。
病気、愛する人の死、災害、リストラ‥‥、人生でストレスを避けるのは不可能で、現実を否定しても意味がない。そのとき、自分が大切にしている価値観を思い出すことで、自分がストレスにどう反応するか、を選べるようなるそうだ。
3つ選びましょう、と書いてあったけれど、とても3つだけ選べなかった。
私が大事にしたいことは、
・信仰
・健康
・美しいもの、アート
・自然
・好奇心、チャレンジ、革新、変化
・ユーモア
・旅
かなと思った。価値観を心に止めることによって、ストレスが「自分の意思に反して、身に降りかかってくるもの」から「いちばん大切なことを再認識し、深く心に止める機会」へと変化するそうだ。
また、難易度の高いことにチャレンジするとき、あらかじめ、ストレス目標をたてる、といいそうだ。「わたしはストレスによって、どんなふうに成長したいんだろうか」
ストレスがまったくなさそうなところ、それは棺の中。
ストレスはなくならないけど、ストレスと成長、充実は切り離せない。そう考えると、もはやストレスはストレスではなくなるかも。