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まなかい;大寒 第70候・款冬華(ふきのはなさく)

款冬華(ふきのはなさく)の「款冬」とは、本来「フキタンポポ」のことで、いわゆる僕たちが蕗味噌にする蕗とは違うらしい。中国には日本で「蕗」と呼ばれる植物はもともとないそうなので、この字も本来は甘草の一種を指すそうだ。「蕗」の漢名は「蜂斗菜」となっている。こうなると、漢字でどう表記したらいいかわからなくなるけれど、僕たちが蕗味噌にしたり、葉柄を食べる「フキ」は、ヤマウドやニラ、ミツバ、セリなどとともに、日本に自生する数少ない野菜の一つ。古名は「ふふき」とある。


「吹く」という言葉と関係ありそうだ。

早春の大地の気が吹き上がるように感じての名付けだろうか。

柔らかく広がった葉は、浮いてるように見えるから「ふふき」なのだろうか。

はたまたまだ冷たい風に、「ふふ」と笑っているように見えたのだろうか。

苞の中を除くと、沢山の花が小坊主のようにも見える。

いずれにしても「款冬」というフキタンポポと同じく、冬の雪や寒さを凌いで顔を出すのだから、多少ごっちゃになっていてもよしとして、顔を覗かせたばかりの蕾を愛でて、春を待つことにしよう。


蕗の薹の苦味と香りは、冬からの目覚めを促してくれる。

丸い姫達磨のような花の蕾。摘み取ってみると案外軽く、手の中でふわりとしている。明るい萌黄色も嬉しい。

そもそもまだ裸の木の下を落ち葉や雪を踏み分け探したりするのが心地よい。

冬の土用の心身の代謝にはなんともいえずふさわしく、肚から春が広がる。そういえば原は、腹や肚と通じている。身体の原っぱに、晴れやかな春の蕗の薹。

(写真は『柳宗民の雑草ノオト1、2』ちくま学芸文庫)

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