ことのはいけばな’22 啓蟄 第8候 『桃始笑』3/10ー
花を活けるように、言葉を三十一文字の器にのせて活ける。はなとことばを立てて相互記譜。七十二候のことのはとはなの旅。
11年目の3.11がやってくる。
暴力と殺戮も無くならない。
戦争はしませんという誓いを揺るぎないものに。
それにしても、だましだまし各地に造られた原発はいかにも脆そうで、
この弓形の列島は腫れ物のようにされている。四つのプレートに挟まれたあまりに危うき列島。
啓蟄の次候は「桃始笑」
花手水を「めぐり花」した。
震災の日までは白い桃。
そして雪柳。枝垂れ柳。
「花は紅、柳は緑」で、明るい桃色の桃にしたいけど、11日までは物忌。
白い桃の花も、雪柳とともに、ほろほろと散れば沫雪のよう。
天からの音信。
北国の海に激しく降る雪を幻視する。
海に揺さぶられる多島海列島、花綵列島の姿。
*ほろほろに花びらはとけ沫雪に柳のしだれそよゆれ初めて
*ほろほろと花はほどけて淡雪に枝垂れ柳のふれるおもかげ
*あの海へ浪の砕けてゆきやなぎ花の手水の伝うやなぎの
*嘘のよに光で満ちる春の海3・11ヤマタノオロチ
ーしかし、3・11の当日の朝、白い花桃だけでなく桃色の花桃を足す方が良いと思った。
亡くなった方々はひな祭りのすぐ後だっただろうし、お花見のことをその時思っていたかもしれない。
だから、桃を抱えて行ったのだ。
*夕まぐれ花のつぶてのレクイエム極楽浄土に果てるものたち
*桃色の雲居に光る花桃のかみなりのおと蕾割れゆく
*歌やめし空にインコの歌ひゞくひび割れし空連翹咲ける
*このはなに蜜を求めて来し鳥の冬は了れり虻のtweet
*花手水春の宵には土ひかり大きな蟾蜍の蟻狙いすましたり