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古代緑地 Ancient Green Bert 第12話 「コーヒーカップ」
家族が寝静まった夜更けは 小人さんたちの時間です
小人さんたちは 棚の影から姿を現すと
テーブルにひょいとよじ登り 家族がテーブルに残したままの コーヒーカップをノックします
窓からは月明かりがさっと射し込み 少し開いている窓から吹き込んだ風がカーテンをふわっとさせると 魔法もほどける時間
コンコンコン!
「さあ僕たちが来たよ」
「遊ぼうよ」
すると不思議な事に
テーブルの上の家族4人のコーヒーカップが コトコト コトコト
コーヒーカップは好みが出るものです
4人家族の4つのカップはそれぞれユニーク 小人さんたちもお気に入りがあるみたいです
お兄ちゃんのカップはちょっとパンク 大人っぽいノワールなコーヒーが好み
妹のカップはふんわりした優しい感じ もっぱら カフェ オ レ
お父さんはドラゴンの絵のこちらがお気に入り イタリアン ローストが好き
お母さんは色が綺麗な風景の描かれたアンティークのカップ やや
フルーティな 酸味のあるコーヒーが好みです
ほら コーヒーカップたちがまわり始めましたよ
遊園地にあるあれです
お母さんのはティーカップですけど 黄色が綺麗で
外にぐるっと絵が描いてあります どこか牧歌的で 春夏秋冬の風景が一巡り
小人さんたちは 周りを囲んで
お茶を飲みながら ゆっくりカップが回るのを眺めています
月明かりが映り込んで 幻燈を見ているようですね
お父さんお気に入りのドラゴンのカップ
こちらでは小人さんたち ドラゴンをそそのかして
カップから飛び出したドラゴンに乗って 大騒ぎ
ドラゴンは時折 ピンクの可愛い火も吹きますから 暗いお部屋に花火みたい キャーキャー言いながらおうちの空を飛んでいます
お兄ちゃんのカップでは 小人さんたち なにやら中に入り込んで 絵柄の天使や怪魚や髑髏と談笑していたかと思うと
骸骨が奏でる音楽に合わせて外に出て 踊り出してしまいました 怪魚はカップの中をぐるぐる カップもカチャカチャ 踊ります
おうちの人が起きないといいけど
女の子のカップは なんでも甘くマイルドになる
ホイップがあふれたようなピンクのカップ
小人さんたちはホイップ風呂につかって 鼻歌交じり
カップも一緒にお尻を振っています
もう方々で くるくるしながらの大騒ぎ
あれ 静かに!
案の定 誰かが階段を降りてきます
まずい!
みんな 引き上げだ! 急げ!!
お母さんは ちょっと居間を覗きましたが 特に変わった様子はなかったので
おトイレに寄って また二階に上がっていきました
朝 テーブルに陽が射し込みます
鳥の囀りが聞こえる 静かな朝です
カップたちは さも昨晩のまま動いてなんかいないですよと 言わんばかりにすましています
ん?
ホイップが点々と 戸棚の方へ続いていますね
今日もきっといい一日となるでしょう
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古代緑地 第12話 「コーヒーカップ」アップいたします
ゑ本はちょっと賑やかな感じになりましたが お話の種は 京都の六曜社で 黄色いランプの下 カップの底に現れた 海の果ての理想郷 青い鳥が島の上高く飛んでいる その鳥と目があって囀りの声が聞こえてしまったこと
一瞬が限りなく深く感じられると何度でも物語の種として再生します