古代緑地 Ancient Green Bert 第5話 『荒野のけもの』
遮るもののない荒野で佇んでいる もふもふのけもの
今にも風で飛ばされそうに危なっかしくゆれています
このけものたちは 食べ物がなくなったり季節の入れ替わりになると風待ちをして 風でころがって移動します どうしてものときは歩きますが 不慣れなので ヨタヨタ ぷるぷるして お年寄か!って思ってしまいます
季節の境目になると どこにいたのか荒野のいたるところにある小高い丘や岩場にたくさんのもふもふがあらわれて 風を待つのです
草原の起伏に沿って 無数の丸く刈り込まれた草がゆれている そんな景色があらわれます
とても大きいものは家族玉と言って直径が5メートルほどになります
とにかく風まかせ運任せ バラバラになってしまうと悲しいので 家族が集まって風が来たら 一斉にころがっていくのです
恋人玉もいます 恋人玉は恋人っぽい形でくっついています
日の出の方向にある東の果ての岩山の稜線が 桃色に染まると ほら 風が動き出します
それを受けて 一つまた一つと旅立っていきます 良い風が来て 一斉に動くときは 大地がそのまま流転していくみたいなのです
くるくるくるん
グルングルン
ふわふわふっくら バウンバウン
そんな調子で
ほかの仲間を乗り越えていくものだってあります 枯葉や埃を巻き上げ 小さな昆虫や 時には野ねずみだってまきこみながら どこか遠くの新世界へ
でも逆風で戻ってきてしまうものもあるんですけどね
綿毛のような毛は少しの水があればそれを吸って重くなるので 若々しい草のあるところ 水のあるところで うまい具合に止まるのです 止まったところで 鼻をクンクンしながら 短い手足を出して ジタバタしながら起き上がり ぷるぷると探検をはじめます
昨日まで 見渡す限りの枯れ草玉だった荒野は すっかり丸坊主 。。。おや ひとつ 小さな玉が あんなところに あ 大きな玉も少し離れて ひとつ ふたつ
ははあ きっと 大きな二つの玉はお父さんとお母さん 小さいのは独り立ちしたばかりの お兄ちゃんでしょうか 小さい玉は かすかに震えているように見えます
太陽が高くなり だいぶ暖かくなりました 優しい風が吹きわたり 草を揺らしています
あとほんの少し心をほどいて 温かな東風に身をまかせるだけなのです
^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^
古代緑地 Ancient Green Bert 第5話 「荒野のけもの」
乾燥した荒野でも旅立っていく生き物がいました