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Vol. 17 2024年11月リーダー 「多様性を味方にする ~ 共感する力 ~」 by 紫藤由美子

多様性とは、人種、性別、年齢、国籍、文化、価値観、宗教など、さまざまな「違い」のことを言いますが、今回はいくつかの側面から多様性について考えてみたいと思います。

文部科学省の発表によると、現在日本で不登校となっている小·中学生は29万9048人にのぼります。昨年から5万4108人増え、22.1%の増加です。不登校の原因には、家庭の問題、学校の問題、本人の無気力などが挙げられていますが、どの場合でも、「学校に通わせることが正解」とされ、不登校は「悪」とみなされがちです。

ある大学の学長は、戦後の「6·3·3」(小学校·中学校·高校)単線型の教育改革が影響を与えているとコメントしています。知識習得を中心とし、偏差値で階層化された学校制度です。画一化された知識習得を中心とする教育では、ついていけない子供たちは「落ちこぼれ」とされ、自分を相対的な位置付けで評価するよう追い込まれます。

一方、戦前の教育制度では「複線型」のシステムが採用され、旧制中学から医学専門学校に進んだり、小学校から実業学校で学ぶということができていたのだそうです。子供の頃から、個性や特徴、興味を尊重し活かしていく道を選ぶことができたのですね。
イタリアルネサンス期の彫刻家(画家·建築家·詩人でもある)ミケランジェロはこのような言葉を残しています。

彼が彫刻に取り組む時、

「私は叡智に導かれて、石の中にひそむ芸術作品を取り出しているに過ぎない」「私は大理石の中に天使を見た。そして天使を自由にするために彫ったのだ」
「余分なものを取り除いていることにより、彫像は完成していく」

石像を創っているのではなく、中に眠っているものを取り出していると言うのです。

持って生まれた才能、天から授かる天才を見極め、その才能が開花できる環境を整えることで、それぞれが自分の才能を発揮する人生を歩めるということではないでしょうか。これが多様性の豊かさの土台になるように思います。

親や学校の役割はそこにあるように思います。ビジネスにおいても、経営者·リーダーが個々の資質を見極め、それぞれが伸びる環境を整えることで、社員のやりがいや幸福度、安定した定着率、そして結果として生産性にもつながるのではないでしょうか。

サラダボウルと言われる、圧倒的な多様性·異文化が混在するニューヨークに関しての国勢調査の結果を数ヶ月前に共有しました。住民の49%が家では英語以外の言語を話し、200以上の言語が街で聞かれます。


写真:canva.com/Pawen_aparatem_go

文化·宗教·法律·常識など、違う背景をもった人たちが共存するわけですから、自分の価値観や意見や独自性を大事にしながらも、相手を尊重し調和をはかり、個と集団のバランスをとりながら生活をする姿勢が求められます。

「違い」を、善悪や正誤ではなく、ただただシンプルに「違う」と受け入れる受容力と共感力によって、そこにこそ多様性の強みが生まれます。相対的な評価を超え、絶対的な価値観の相互認知に基づく共存が実現できるのです。

別の視点として、東洋哲學には「唯一無二」「縁起」「不二」「諸行無常」といった本質に触れる言葉が多くあります。

唯一無二は、ただそれ一つしかなく、二つとないものを言い、
縁起は、すべてのものはお互いに関連し影響し合って成立していることを言います。不二は、一見対立したり二元的に見えるものも本質的には一つであることを言います。また、諸行無常は、存在するすべてのものは変化し続けることを示しています。

これらは、多様性や変化を受け入れるために必要な智慧であり、心の在り方を示す言葉であるように思います。

多様性の豊かさの土台となる「自分の才能を発揮する人生」であり、「唯一無二の人生」を生きたいですね。

その上で、究極の在り方としては、この変わり続ける世界において、「自分」に固執せず、起きていることは受け入れ、お互いを尊重し、共存することを意識すると、自分が単なる「個人」ではなく「全体の一部である」と感じることができると言うことなのではないでしょうか。

多様に見えるものの根底には、すべては繋がっていると言う共通の基盤が存在しているように思います。

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