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『アングスト/不安』映画の粗暴さと物言わぬ死者

薄曇りの中、少しヒンヤリとした田舎道を走る男の狂気じみた息遣いは、明らかに軽いジョギングではない。血に飢えた男の切実さがスクリーンから迫る。 リプチンスキーのカメラワークも彼にピタリと張り付くから、凝視する我々の目はすっかり酔う。三半規管が弱い人は、早々に観るのを辞めた方が良いかもしれない。寒空に響いた乾いたガンショットの後、ようやく水平になるかと思えば、斜めから被写体に差し込むようなロー=ハイ・アングルの組み合わせが平衡感覚さえ奪う。 ここにあるのは私生児として生まれた

    • 【第674回】『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(リチャード・マーカンド/1983)

       前作で冷凍人間にされたハン・ソロ(ハリソン・フォード)は、タトゥーイン星の砂漠に要塞をかまえるジャバ・ザ・ハットのところに飾られていた。C-3PO(アンソニー・ダニエルズ)とR2-D2(ケニー・ベイカー)が、ジャバ・ザ・ハットを訪ね、ハン・ソロとロボット2体を交換したいというルークの申し出を告げる。しかし、相手にされず、奴隷の身に。同じ頃、1人の賞金稼ぎが、チューバッカ(ピーター・メイヒュー)をつれてきて、ジャバ・ザ・ハットに渡す。その賞金稼ぎは実はレイア(キャリー・フィッ

      • 【第673回】『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(アーヴィン・カーシュナー/1980)

         宇宙要塞デス・スターが爆発し、その勢力も消滅したかと思われた帝国軍側は、やがて再び大きな軍団となって反撃を開始した。そのため反乱軍は後退し、レイア姫(キャリー・フィッシャー)は残された僅かな部下と銀河のはずれ惑星ホスに逃がれていた。そこはすべてが氷に閉ざされた惑星で反乱軍はそこに洞穴をつくって基地にしていた。シリーズ第2作となったトリロジー9部作のうちの5作目。ジョージ・ルーカスは監督を退き、職人監督であるアーヴィン・カーシュナーに監督を依頼。結果としてアクションがほどよく

        • 【第672回】『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(ジョージ・ルーカス/1977)

           記念すべきシリーズ1作目にして、全9部のトリロジーの4本目。公開は新3部作よりも前になったが、ジョージ・ルーカスは今作を撮った時から既に9本の壮大な構想を練っていたという。新3部作では、クワイやオビ=ワンに見出された若きアナキンが、ジェダイ・マスターになるという壮大な予言から始まったが、最後の最後に暗黒面に落ち、ジェダイは皆殺しにされ、オビ=ワンとマスター・ヨーダはしばし地下へと潜る。『シスの復讐』において、アナキンの妻であるアミダラは双子を身籠り、共和国崩壊の最中に生んだ

        • 『アングスト/不安』映画の粗暴さと物言わぬ死者

        • 【第674回】『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(リチャード・マーカンド/1983)

        • 【第673回】『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(アーヴィン・カーシュナー/1980)

        • 【第672回】『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(ジョージ・ルーカス/1977)

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          【第671回】『宇宙からのメッセージ』(深作欣二/1978)

           銀河系の遥か彼方にある惑星ジルーシア、太陽系から二百万光年の彼方にある平和な星であったが、今は宇宙の侵略者ガバナス人の要塞と化し、ジルーシア人は壊滅の危機に曝されていた。長老キド(織本順吉)はジルーシア人の絶滅の危機を救うべく、孫娘のエメラリーダ(志穂美悦子)に、奇蹟の願いをこめた8つのリアべの実を太陽系連邦へ向けて放ち、救世主となる8人の勇者を連れて帰るように命じた。エメラリーダのお供には用心棒ウロッコ(佐藤允)が付き、2人は早速リアべの実を持つ8人の勇者を探す旅に出る。

          【第671回】『宇宙からのメッセージ』(深作欣二/1978)

          【第669回】『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(ジョージ・ルーカス/2005)

           クローン大戦勃発から4年が経過し、戦争は銀河共和国優位の情勢にあった。しかしそんな中、パルパティーン最高議長(イアン・マクダーミド)がコルサントに襲来した独立星系連合軍に捕らえられてしまう。繰り広げられる艦隊戦の中をパルパティーン救出に向かうオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)とアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、パルパティーンが捕らえられている敵の旗艦インビジブル・ハンドに突入し、再びドゥークー伯爵(クリストファー・リー)と対決。新シリーズ3部

          【第669回】『スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐』(ジョージ・ルーカス/2005)

          【第668回】『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(ジョージ・ルーカス/2002)

           エピソード1より10年後。オビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)と、彼の熟達したジェダイの弟子へと成長したアナキン・スカイウォーカー(ヘイデン・クリステンセン)は、いまや高名な元老院議員となったパドメ・アミダラ(ナタリー・ポートマン)と久々に再会。パドメは暗殺の標的にされているのだが、その謎を突きとめようと、オビ=ワンは銀河の辺境へと旅立つ。そこで出会ったのは、かつては崇敬されたジェダイ・マスター、しかしいまは分離主義運動の指導者となっていたドゥークー伯爵(クリストファ

          【第668回】『スター・ウォーズ エピソード2/クローンの攻撃』(ジョージ・ルーカス/2002)

          【第667回】『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(ジョージ・ルーカス/1999)

           遠い昔、はるか彼方の銀河系。平和だった銀河共和国に混乱が訪れていた。通商連合は辺境の惑星との交易ルートヘの課税問題に決着をつけるべく、武装艦隊で惑星ナプーを武力封鎖。即位間もない若き女王アミダラ(ナタリー・ポートマン)は連合の要求を拒否し、事態は悪化。元老院は調停のため、ふたりのジェダイの騎士クワイ=ガン・ジン(リーアム・ニーソン)とオビ=ワン・ケノービ(ユアン・マクレガー)を派遣するが、背後では暗黒卿ダーク・シディアスによって巨大な陰謀が進行していた。スター・ウォーズ・新

          【第667回】『スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス』(ジョージ・ルーカス/1999)

          【第666回】『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(鹿島健城/2016)

           2015年9月27日、台湾・台北駅前、太川陽介と蛭子能収の凸凹コンビは、3泊4日のバスの旅の為にこの地にやって来た。今回のマドンナ役は三船美佳。2007年にスタートした番組は、太川陽介と蛭子能収に女性ゲスト1人を加えた3人が、日本国内にある路線バスを乗り継いで、3泊4日の日程内に目的地への到達を目指す旅番組として大ヒットを記録する。旅のルールとして、1.高速道路は通行禁止、2.タクシーや鉄道は使用禁止、3.バスが繋がらなければ歩く、4.ケータイ電話やスマートフォンでの情報収

          【第666回】『ローカル路線バス乗り継ぎの旅 THE MOVIE』(鹿島健城/2016)

          【第665回】『二重生活』(岸善幸/2016)

           カーテンを開け、薄明かりに照らされる東京の朝、白いベッドに眠る若いカップルの姿。先に目覚め、欲情した鈴木卓也(菅田将暉)はまだ目を開けられない白石珠(門脇麦)の上に覆い被さる。コンドームを付けてと窘められるカップルの荒い息遣い。やがて彼氏をシャワーに行かせたヒロインは3階のベランダでタバコを吸いながら、向かいの豪邸に住む親子に視線を移す。補助輪なしでフラフラしながらも、数m走る幼い娘。その背中を夫婦は厳しくも優しい眼差しで見つめていた。大学院で哲学を学ぶ珠の部屋に、ゲーム・

          【第665回】『二重生活』(岸善幸/2016)

          【第664回】『ステーキ・レボリューション』(フランク・リビエラ/2014)

           フランス・パリ、シャロレー牛の繁殖農家に生まれたフランクは家業を継がず、映画学校に入り、ファッション・フォトグラファーの助手として生計を立てていた。彼が仕事の関係でニューヨークに渡った時、最初に食べた旨い肉が「Peter Luger Steak House」の熟成牛だった。それ以来、フランクは子供の頃から一番だと信じて疑わなかったシャロリー牛の旨さに疑問を持ち始める。果たして世界一の肉とはどこの産地の牛肉なのか?その謎に迫るため、監督のフランク・リビエラはパリでいちばんの精

          【第664回】『ステーキ・レボリューション』(フランク・リビエラ/2014)

          【第663回】『バッド・ボーイズ』(リック・ローゼンタール/1983)

           イリノイ州シカゴ、夜の街では16歳の高校生ミック・オブライエン(ショーン・ペン)が今日も非行を繰り返していた。中年のバッグを引ったくり、追ってきた男を夜の闇の中で殴打すると、その男の財布からも有りっ丈のカネを抜き取る。マフィアさながらの個人プレーだが、彼にはカール(アラン・ラック)という悪友がいた。ボロ・アパートの部屋に戻り母親を呼ぶも、娼婦をしている母は愛人と共にバスタブに浸かっている。面白くないミックはアンプにギターを繋ぎ、夜中に大音量でかき鳴らしている。一方、ミックの

          【第663回】『バッド・ボーイズ』(リック・ローゼンタール/1983)

          【第662回】『透明人間』(ジョン・カーペンター/1992)

           夜のサンフランシスコ、美しいゴールデン・ゲート・ブリッジの夜景が彼方に見える海の上を、ヘリコプターが飛んでいる。地上では「Instant Rooster」のトラックにカメラが仕込まれ、夜の街をくまなく捜索している。やがて誰もいないデスクからニック・ハロウェイ(チェヴィ・チェイス)の声がする。しかし、ピンク色のチューインガムを膨らますと、当時の最新VFX技術を駆使した人影が浮かび上がる。やり手のビジネスマンとして、土地の買収や株取引でも儲けていたニックは3月のとある火曜日、会

          【第662回】『透明人間』(ジョン・カーペンター/1992)

          【第661回】『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(スティーヴン・フリアーズ/2016)

           1944年アメリカ・ニューヨーク、様々な音楽家を支援するために設立されたヴェルディ・クラブの夜は静かに幕を開ける。黒のタキシード姿のシンクレア・ベイフィールド(ヒュー・グラント)が独特の声色と俳優仕込みの名司会ぶりで客席を盛り上げると、ワイン色の緞帳がゆっくりと上がり、緑溢れる庭先の舞台装置と伴奏者が出て来る。今日の主人公であり、湯水のごとく親の財産を使い、このクラブを創設したフローレンス・フォスター・ジェンキンス(メリル・ストリープ)は天井裏でワイヤーに吊るされ、その出番

          【第661回】『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』(スティーヴン・フリアーズ/2016)

          【第660回】『ブレアウィッチ』(アダム・ウィンガード/2016)

           1994年のハロウィンの季節に起きた猟奇的な失踪事件、モンゴメリー大学映画学科の三人の同級生、女性監督のヘザー、撮影担当のジョシュ、録音担当のマイクは、数百年前から伝わるブレアの魔女伝説(ブレア・ウィッチ伝説)を題材にした卒業制作のために、40年代にラスティン・パーが7人の子どもを攫ったブラックヒルズの森を訪れる。だが、森の中で撮影を続ける三人は不可解な現象にまきこまれ、想像を絶する恐怖を体験し、そのまま消息を絶った。結局、3人の遺体は発見されず、事件の1年後に森の中で彼ら

          【第660回】『ブレアウィッチ』(アダム・ウィンガード/2016)

          【第660回】『ブレアウィッチ2』(ジョー・バーリンジャー/2000)

           1994年のハロウィンの季節のある日、モンゴメリー大学映画学科に通う三人の学生、女性監督のヘザー、撮影担当のジョシュ、録音担当のマイクは、ブレアの魔女伝説(ブレア・ウィッチ伝説)を題材にしたドキュメンタリー映画の制作のために、ブラックヒルズの曰く付きの森を訪れる。だが、森の中で撮影を続ける三人は、不可解な現象にまきこまれ、想像を絶する恐怖を体験し、そのまま消息を絶った。結局、3人の遺体は発見されず、事件の1年後に森の中で彼らが撮ったと見られるビデオテープだけが発見された。全

          【第660回】『ブレアウィッチ2』(ジョー・バーリンジャー/2000)