或る引きこもりの朝
※18〜19歳、毒親からの逃避、その直前記事です
いつものように深夜の静寂を堪能した。夜は生きやすかった。
真っ暗な部屋。青白いテレビの明かりと、その画面に幸せそうな女の子。
唯一の安らげる空間だ。
画面の中の日常から幸せを抽出したようなストーリーは、30分足らずで幕を閉じる。
少し寂しいなと想いつつ、時計を見遣ればもう夜明けが迫っていた。
秒針に急かされこみ上げる不安に顔がひきつる。夜のしじまを諦めて寝室へと向かう。歯磨きを済ませておいてよかった。
空腹はピークに達していた。眠剤投入のタイミングとしてはこの上ない。
が……薬容れを開けて悩む。
残薬が少ない。抗不安薬で代用しても良いけど、そっちはさらに損耗が激しい。
最近耐性もついてきた。そろそろ断薬の時期だろうか。
そうして、今日の夜明けは眠剤無しでやり過ごそうと決めた。
薬を飲まないならと、込み上げる胃酸を抑える為ブラックサンダーを齧る。安い割にカロリーも高かった気がするしサイズ感もちょうど良い。何より美味しい。優秀。
……短針は依然として右下でだらけている。なんだか動悸がしてきた。眠気は来ない。気づけば空も白んできた。窓を開けてみれば東の空にポツンと明けの明星。
気高いその光は白い朝の気配に飲まれまいと、その存在を鋭利に訴えていた。
なんだか救ってやるような傲慢な気分で、その煌めきを写真に残す。縮こまった明星は不憫に思えて、焦点を外した。
これで存在は伝わるだろう。
カーテンを閉め、逃げるように布団に潜る。
まだ眠気は来ない。
不安だけが秒針のリズムで冷ややかに肺を包み込む。背すじを這い上がる。
どれくらい経っただろうか。
もうすっかり朝だった。身震いをする。
そろそろきつい。断薬はものの数時間で諦める事として、眠剤を口に放り込んだ。
布団に戻り、amazarashiを聴きながら理性が歪むのを待つ。…1h待っても来ない。中途半端に減薬したのが原因か……追加する。
…………来ない。理性を溶かす酩酊が、さしあたっての生きる意味が。
少し絶望して、なんだか自棄になって、安ワインを流しこんだ。…凄く不味い。即座に水で口をゆすいで、寝室に戻る。
足も思考もふらつかせ、よく分からないままカーテンの陰に座り込む。窓越しに人の声…いつの間にか短針は起き上がっていた。
その事に意味もなく落胆して、項垂れた視線の先…スマホを意味もなく手に取った。
そうして、今に至る。
すっかり眠るタイミングを見失ってしまった上に、ただでさえ不足気味の眠剤をムダにしてしまった。
今日はこれからどうしようか……明日は…今年は…将来は…人生は。いつもの思考のループ。
死にたいのかな、生きたいのかな。
生きる意味は…?
うっかり誰かに洩らせば、馬鹿馬鹿しいと返ってくる疑問。それはそうだ…1年前ならこんなこと思いもしなかった。
多分今日も、そんな物とじゃれあって夜を待つ。苦痛なだけだ…何も出てこないというのに。やっぱり馬鹿馬鹿しい。もう選ぶだけだというのに。
※コメント等あれば思い出せる限りの続きを書きます。