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【グッズ】項目2.あなたがスポーツクラブのグッズ担当になった最初の1日目にやるべきこと

このnoteは、新しくグッズ担当になった方に向けてのnoteのため、「入社してすぐ」または「担当変更があって」新しくグッズ担当になったというシチュエーションを想定しています。

もしあなたがプロスポーツクラブのグッズ・MD担当になったときに、まず最初の1日目にやるべきこと。

それはグッズを企画したり、デザインを考えたり、売店に立ったりすることではなく、まず最初にやるべきことは「そのクラブのグッズの立ち位置を知ること」です。

こう書いてしまうと当たり前で、「何を知るのか…?」についても色々とあると思うのですが、まず知るべき立ち位置は「そのクラブにおけるグッズの役割」と「現在のグッズのコンディション」です。

1.そのクラブにおけるグッズの役割

前回のnoteにも書きましたが、プロスポーツクラブがグッズを売る目的は3つに集約されます。

● 収益(利益)を上げる
● 売上を上げる
● ファンのエンゲージメントを高める。

もちろん、そのすべてを追い求めていくことは必要なのですが、何に重点を置いているのかはクラブによって差が大きく、この3つが相反関係になることもあります。

例えば…
ある程度、売上の規模が大きく自社店舗やオンラインショップも整備されているようなクラブであれば、所属する全選手のデザインを展開するグッズを作ったり、そのクラブ全体のブランドを向上させるようなグッズ展開を行うことも可能です。

その最たる例がDeNAベイスターズの「+B(プラスビー)」です。

私も数回しかショップやスタジアムに行ったことが無いので肌感覚の感想でしかないのですが、横浜という街において、「ベイスターズ」や「野球」をどうやって浸透させていくかというブランディング(≒ファンのエンゲージメント)と、収益性を高いレベルで実現していると思っています。
(ただ、これも想像でしかないので私自身もっと深く知っていきたいと思っています…!)

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阪神タイガースも「TORACO」や「HTIG」のようなグッズ展開に加えて、女子野球チーム新設など、球団全体のマーケティング戦略として「女性」の接点を増やしているのが分かります。

サッカーでも鹿島アントラーズやツエーゲン金沢、湘南ベルマーレがブランディング(≒エンゲージメント)に重点を置いていると思われるグッズ・MD展開を仕掛けています。

独自ブランド以外にも、例えば全選手展開やマスコットのグッズなど、多品種のグッズを揃えることにより、その選手やマスコットが好きなファン・サポーターのエンゲージメントを高めて、売上を上げることもできます。

ただし、その反面、多品種製作するということは、在庫が残るリスクを抱えると同義なので、もし商品が売れ残ってしまったら、”収益性(キャッシュを生む)”という面ではリスクが大きくなります。印刷技術の向上などで小ロット多品種を展開できるアイテムのカテゴリーは広がってきましたが、それでもアイテムによって在庫リスクは0にはなりません。

もし、あまり売上規模が大きくなく、そのクラブにおいてグッズに求められていることの比率で”収益性”が高いのであれば、前回のnoteで例に挙げたように、そのクラブのグッズ全体をライセンシーとして受託してもらえるメーカーや広告代理店などの企業を探すことも必要です。

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ただし、プロ野球のようにプロパティの価値が高く、ある程度グッズの売上が見込めるクラブは一握りで、多くのクラブにとっては、ライセンシーになってもらう地場の企業を探すのは非常に困難です(私も過去にあるクラブから、クラブのグッズ全体を委託できる会社を探してほしいという依頼を受けたことがありましたが、やはり実現は難しかったです…)

最近では在庫リスクを持たず、だれでもグッズを製作・販売できるSUZURIのようなサービスも出来てきたので、自クラブのプロパティを使ってSUZURIでグッズ展開して、公式オンラインショップとして販売するクラブが出てくるかもしれません。(ただ、その方法でファンのエンゲージメントを高め続けるには限界が来るので、どこかのタイミングで運営方法を切り替えざる得なくなる可能性が高いです…)

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他の多くのクラブやスポーツ団体が実施しているように、自社でグッズを販売する場合…
できる限り固定費や経費をかけずに在庫リスクを抑えて小ロット多品種の商品を365日ずっと企画し続けて、倉庫の管理もしながらillustratorの画像加工を勉強してPOPやバナーを作って、販売日には自分でショップのレジにも立ってグッズを販売する方法を模索する必要があります。
クラブによってはグッズ担当が1人(専任であればまだ良くて、大変なのはチケットやファンクラブなどの業務と兼任しているパターンも…)のことも多く、グッズ担当は頭も体も手も足もフル稼働させることが求められています...。こう書くと大変なことばかりですが、グッズ担当は1つの商店を任されるのと同じだけの経験を積むことができるので、スキルアップする機会の多い業務でもあります。

余談ですが、一番大変なのは「そのクラブはグッズに何を求めているのか?」が定まっていない状態かもしれません。。これは本当に私見ですが、「他のクラブやスポーツ団体がグッズを売っているから、なんとなくグッズを作って売っている」...というのは誰も幸せにならないと思っています。。

2.現在のグッズのコンディション

そのクラブがグッズに求める役割は「現在のグッズのコンディション」を知ることでも見えてきます。
そのクラブのコンディションにより「いまは売上とエンゲージメントを高める時期」であったり、「いまは収益性(キャッシュ)を最優先にする」…といった判断になる場合があります。

観るべき観点には以下のようなものがあります。

● 在庫
● 仕入れ先
● 売上(販路別)
● 売上(カテゴリー別)
● プロモーション方法…など

次のnoteでは「3.年間の販売と仕入計画」を書く予定ですが、その計画を立てるためにも上記の理解は必要で、その中でも一番重要なのは「在庫」です。

3.在庫とは

国語辞書には「在庫(ざいこ)とは商品が倉庫などにあること。またその商品。」とあります。

大雑把なイメージだと「グッズを作って売れ残ったもの」が在庫だと思っている人もいるかもしれませんが、クラブのグッズを1つの車に例えた場合、在庫は”ガソリン”だと思っています。

4つのタイヤを仮に「スタジアム」「ショップ店舗」「オンラインショップ」「外部委託」だと考えた場合、そのタイヤを回し続けるためにガソリン(在庫)が必要になります。
クラブがその車でどこに向かうか(グッズの役割)は、そのクラブが置かれている状況によって異なりますが、いまその車のガソリン(在庫)がどうなっているかを知らずに進むことは出来ません。

少し脱線しますが、それ以外にもエンジンが”企画力”、シャフトが”物流”、計器類が”マネジメント(販売管理システム)”だと思っていて、その車のガソリン残やスピードをチェックしながら、アクセルとブレーキをどう踏むか…がグッズ担当者の醍醐味だと思っています。

もし、在庫が足りないと何が起きるか?
まず売るものが無いので売上を確保することができなくなり、新しいグッズが無くなってしまうとその店舗の魅力自体やファンのエンゲージメントの低下を招く危険があります。(厳密には在庫が多いように見えても、”死に筋”と呼ばれる商品カテゴリーが大多数を占めている場合、在庫があっても売上は伸びません)

逆に在庫が多い場合(おそらく多くのクラブがこの状況にある可能性が高いです)は何が起きるか?ガソリン(在庫)が重たくなりすぎて車が動かなくなります。
在庫は商品をメーカーに発注して、仕入れ代金を払って納品された資産なので、在庫が眠っている倉庫には現金が積まれているものだと思ってください。その在庫はグッズショップに陳列されて、お客さんに購入されて始めて現金化されます。
もし2,000円の商品を1,000個仕入れた場合、200万円の現金が必要です。その200万円があれば選手の遠征費やスタジアム備品改修など、チームの強化やファンサービスに繋げることができたかもしれません。

自社の商品を知るという意味でも、まずは自クラブに「在庫帳簿」と呼ばれる、「その商品の在庫がどれだけあるか?」を管理しているリスト(在庫管理システムやExcel)があると思うので、「帳簿」と「実在庫(実際の商品)」を数えて照合する(棚卸)から始めてください。

そして、そのあと商品ごとに「どれだけ仕入れたか」と「どれだけ売れたか」で売れ筋と死に筋を見つけることが必要です。もし死に筋が多い場合は売上拡大やファンのエンゲージメントを高めるよりも「いかに収益(キャッシュフロー)を改善するか」を重点におくべきです。

在庫の”死に筋”と”売れ筋”を把握して、もし”売れ筋”の商品を見極めることができれば、次はその商品が売れる時期と単品ごとのリードタイムをもとに「年間の販売と仕入計画」を立てます。詳しくは次の「項目.3」で記載していきます。

昔に比べるとロット(発注単位)も小さくなってきましたが、”ぬいぐるみ”はリードタイムも長くロットも大きいカテゴリーの商品です。
マスコットの認知・関心の向上や、マスコットが好きなファン、サポーターのエンゲージメントにはとても重要なアイテムですが、その裏にはクラブは小さくはないリスクを抱えて商品を発注しています(ぜひ買ってあげてください…!)

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最後に…
前回のnoteを書いたときも考えていたのですが、あくまでもこのnoteは私の経験や読んだ本の内容を基にしていますので、不十分なところや人によっては違った意見もあると思っています。
もし不十分なところがあったり違った意見があれば、ぜひ読んで頂いた方にもnoteに寄稿頂くことで、スポーツのグッズ・MDに関する議論や相互理解が深まっていけば良いなぁ…と思っています。
このnoteは帰宅後に家族が寝静まった後に書いているので本当に孤独なので…(涙)ぜひスポーツの現場にいる多くの人達が、noteやスポーツ系サイトなどに自身の経験や知見を広めて共有・シェアするような機会が増えていくと嬉しいです。

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