「ヤバいやつ」
腕をなめられた。
小学校3年生、大人の配慮を知らない僕は大声で叫び、先生のもとへ行き被害者面で訴えた。
先生は慣れた様子で、その子を違う教室へと連れて行く。
僕は冷ややかな目で見送った。
おそらく、僕の腕をなめた生徒は先生に怒られたのだろう。帰ってきたときの表情はしょんぼりしていた。
このことはすぐに他のクラスの人たちにまで伝わっていく。
また、事件が一つ増えた。
僕の通っていた小学校にはクスノキ学級という特別支援学級があった。
しかし、通常のクラスにも軽度の障害を持った子が何人かいた。
小学校3年生の子供にとってその子たちは障害を持った子ではなく「ヤバいやつ」であった。
その子たちがすることは当時の僕らには理解ができず、その子たちが起こした問題は事件としてうわさされた。
僕らは対策を考え始める。原因は障害を持った子、悪いのも障害を持った子、改善するべきは障害を持った子。いじめが始まる。無視したり、たたいたり、悪口を言ったり。
障害者施設でも問題を起こす利用者への対策が練られる。原因は障害を持った人、悪いのも障害を持った人、改善するべきは障害を持った人。虐待が始まる。隔離したり、攻撃したり、怒鳴ったり。
障害者施設での虐待は小学校3年生の教室で起きていたことと変わらない。障害者のことを理解できないヤバいやつだとし、事件が起きたらうわさして、いじめという改善策がとられる。
環境に原因を求めようとはしない。
障害者を変えようとするのでは小学校3年生と同じだ。
周りの環境に問題がなかったのか考え、時間をかけて辛抱強く改善していくことが必要だろう。
text/あきら
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