こみゅリポ vol.03「エスノグラファーと解き明かすゲームコミュニティ」〜スマブラSPコミュニティ概要〜
Tonamelのコミュニティマネジャーのさとけんと、いろいろなゲームコミュニティのイベントオーガナイザーが集まって、ゲームコミュニティの魅力や謎を、プレゼン/ディスカッションを通じて明らかにしていくイベント「こみゅリポ」。
vol.03の回は「エスノグラファーと解き明かすゲームコミュニティ」というタイトルで行われ、『大乱闘スマッシュブラザーズ SPECIAL』、通称『スマブラSP』において、関東オフ大会「ウメブラ」や「スマパ」など、数々のオフライン大会の現場で活躍される、ぬくぬくさんによるプレゼンが行われました。
プレゼン後は、ぬくぬくさんと文化人類学的・社会学的に様々なフィールドを調査・研究するエスノグラファー神谷俊さんを囲んでディスカッションが行われ、vol03の他登壇者であるCHANGさん、新風みこさん、Odaさん、主催メンバーのわっち、さとけんも参加しました。
スピーカー紹介
ぬくぬく
スマブラSP界隈のオフ大会運営者。コミュニティを発達させる祭祀としてのイベントに興味あり。最近は趣味で空家をゲーミングシェアハウスに改造中。
twitter:@Esounanda
スマブラSPコミュニティ概要
『スマブラSP』は20年の歴史を持つ、押しも押されもせぬ人気対戦型アクションゲームの最新作。任天堂の人気キャラクターが勢揃いするゲームということで話題となり、最新作『スマブラSP』では過去に登場したすべてのキャラクターが登場し、ソニックやロックマンなど任天堂以外のキャラクターも集まった上に、様々な遊び方も挑戦できることで、初心者から上級者まで幅広く支持を集めています。
プレゼンでは、コミュニティ大会にどのようなプレイヤーが参加しているのか、ぬくぬくさんは「ウメブラ」を例に紹介しました。結論から言えば、15~24歳の男性が大きく占めており、「男子校」に例えます。
そうした彼らにはDIY精神、つまりツールから大会まで自分たちで必要なものをまかない、高額賞金はなくとも参加者も大会運営を手伝う非営利の大会がほとんどで、例としてユーザー側で作り上げたウメブラをはじめ、コロナ禍の以前には1ヶ月に全国で150~200件ものオフラインイベントが開催されていました。
エスノグラファーと解き明かすゲームコミュニティ
このような盛り上がりを見せる『スマブラSP』のシーンですが、ぬくぬくさんはまだ課題は残っていると危惧します。まず、このようなコミュニティでも「死因」は存在するのか、また盛り上がりすぎたシーンで特に初心者、新規参入者が入りづらいと感じないか、またコミュニティ大会が「祭儀」であるなら、どのように強化していくのが効果的か。
この質問に対し、神谷俊さんはコミュニティの本質について解説しながら、意見を提示しました。
「コミュニティに参加する人は、参加することに何らかの『価値』『意義』を感じている。だから、ゲームコミュニティに参加することによってどのような価値が得られるのか?を常に確認していくことが大切」
とアドバイスを提示します。また、チャット欄を踏まえて、次のようなアドバイスも頂きました。
「「熱」という言葉がよく出たので、この「熱」をいかに共有・維持できるかが、コミュニティを活性化させるために必要ではないか。」
これを受けて『スマブラDX』の大会を主催するわっちさんは
「元々”遊び”が原点にあったのが、いずれ”誰が一番強いのか”を探る過程となり、大会が開かれるようになった」
と話します。
コミュニティが停滞していく理由については、神谷さんは地域コミュニティの例をあげ、次の2つに要因があると解説します。1つはコミュニティ関係者の内部の人間関係が衝突してしまうというパターン。そして、2つ目はコミュニティが排他的になり、外部者が参加しにくくなることで弱体化していくパターンです。
このような停滞を回避するために、神谷さんは「祭り」をモデルに対策を提示してくれました。誰もが参加できる「場」をつくること。そして、その準備や後片付けをコミュニティメンバーが自主的に行う仕組みをつくることで「熱」を実感する機会をつくること。さらに、外部からやってくるゲストに「祭り」の楽しみ方を適切に教えて「熱」を伝搬させていくこと、などです。
一方でコミュニティの人数が増えすぎると、これらの「熱」が伝搬しにくくなるというリスクも説明してくれました。具体的には、150名を超えると、互いを深く理解することができなくなったり、よく分からないメンバーが増え、コミュニティの一体感も生み出しにくくなるリスクについても教えてくれました。
最後に神谷さんは、このようなコミュニティ運営を行うためには、コミュニティの自治機能を強化する必要についても提示しました。コミュニティのコアとなるメンバーを把握し、コミュニティを運営するためのコアグループを内側に作っておくこと。そして持続的に新しいコアメンバーをコアグループに取り込むことで、コミュニティ内の新陳代謝を促すのことも大事だと締めくくりました。地域コミュニティや祭りなど、全く異分野の研究事例などをお話いただきましたが、ゲームコミュニティの運営に関してもヒントが多く、学びのある時間となりました。
トークの内容をより詳しく知りたい方は、こちらのリンクから当日の「こみゅリポ」の録画をご覧ください!
※音声が少し乱れております
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