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「セブンイレブンの梅『独占』農家も 濃密すぎる経済圏」に注目!

セブンイレブンの梅干し「独占」農家も 濃密すぎる経済圏 コンビニ大全⑥ - 日本経済新聞 (nikkei.com)

和歌山県みなべ町。日本一の梅の産地で、多くの生産農家や加工メーカーがひしめきます。とりわけ「紀州南高梅」が有名で、果肉や皮が厚い最高級品です。明治時代に高田貞楠氏が60本の梅を植えたところ、その中で優良品種を発見しました。これを母樹として地元で受け継がれ、「南高梅」ブランドとして広がっています。

地元有力メーカーの一社が「南紀梅干」です。みなべ町にある1000を超す農家のうち、木下農園など約300の農家から梅を仕入れ、コンビニエンスストアから百貨店向けまで幅広い取引先に梅干しを製造します。その本社で社用車のナンバープレートを見ると「7-11」。主要取引先のセブン―イレブン・ジャパンに対する愛情が「だだ漏れ」しています。

どれだけ関係が深いのでしょうか?実はセブンイレブンのおにぎりで売れ筋上位の梅おにぎりの梅を、ほぼ南紀梅干が供給しています。セブン&アイ・ホールディングス傘下の小売り各社に梅干しを卸しており、売り上げの約60%がセブングループ向けというから驚きます。

セブンとの付き合いは1985年に遡ります。セブンイレブンの担当者が梅干し商品の調査で訪れた際、南紀梅干の細川行広氏(現社長)は「これはチャンスだ」ととらえたそうです。当時、セブンイレブンは3000店足らずで関西に店舗もなかった頃ですが、きめ細かい供給体制に将来性を感じ取っていました。「物流を制するものは世の中を制す。それを実践しているセブンはさらに大きくなる。いずれ関西にもやってくる」

まず梅干しの供給を始めながら、細川社長はおにぎりの具材向けに納入すべく動き出しました。自社製の梅干し入りおにぎりを自ら作り、東京のセブンイレブン本部を回っていたといいます。

もっとも原材料の調達基準は厳しいです。セブンイレブンの品質管理担当者は取引先工場にいつでも立ち入ることができるなど、多くの厳格な条件があります。さらにバイヤーが自信のある原材料を見つけても、セブンイレブンの社内で品質管理の壁にぶち当たり、却下されるケースも珍しくありません。

南紀梅干は基準を満たし、1990年代に入り、おにぎり向け梅干しの納入を決めました。しかし納入後も厳しい試練が待っていました。当初は梅干しを練り物にしておにぎりに入れたが、「食感が乏しい」として種抜きの梅干しを作ってほしいとの要請を受けます。この頃、種なしの梅干しおにぎりはなく、設備もありません。そこで手作業で一つ一つ種を抜き、納めていました。

以降もカリカリした食感の梅干しなど、革新的な素材作りを求められるたび、苦心惨憺(さんたん)して作り上げました。革新的な商品にとどまらず、「お客様がさほど気にならないレベルまで変えていこうというのがセブン流」と話す細川社長は、今も取引関係の強化に余念がありません。

「商売としてのけじめがあって、なれ合いがない。基準通りのことをやれば、約束は必ず守ってくれる」と話し、こうも言います。「セブンの厳しさのおかげで、どこにも負けない競争力をつけることができた。難題を解決すればするほど、チャンスが増える」。南紀梅干のある、みなべ町にセブンイレブンはありません。そういう意味では「遠くて不便な」存在ですが、長年にわたる両者の関係は実に濃いそうです。

具材にとどまらず、おにぎりそのものも年々進化しています。2023年には京都の老舗米屋にルーツをもつ八代目儀兵衛(京都市)が米を監修したおにぎりを売り出しましたた。セブンイレブンは粒立ちがよく、甘みを引き出したおにぎりを目指し、米のブレンドや精米技術などを儀兵衛と共同で開発しました。

セブンイレブンは、まず今の消費ニーズをとらえ、どんなコンセプトの商品を作るかを考え、それに応じた原材料などを選び抜き、仕入れていきます。時には世に知られていない原材料を見つけだし、採用するケースもあります。

滋賀県近江八幡市で小麦などを栽培するイカリファーム。日本で流通する小麦の大半は輸入ものですが、地元の製パン会社から「学校給食向けに滋賀県の小麦で作りたい」と相談を受け、小麦作りに乗り出しました。

小麦栽培は簡単ではなく、中でもパンに使う強力粉用の小麦は品質を安定させるのが至難の業です。イカリファームの井狩篤士代表は小麦の「ゆめちから」や「ミナミノカオリ」などを試行錯誤しながら、繰り返し改良して実現しました。

こうした取り組みについて井狩氏が数年前に関西の大学で講演すると、聴講者の一人に偶然、セブンイレブン向けの総菜などを作るメーカーの社長の娘がいたそうです。帰宅して講演内容を話したところ、興味を持った父親がイカリファームを訪ねてきました。

父親はそこで技術レベルの高さに驚き、セブンイレブンの担当者に「イカリと取引しないと損をするよ」と助言しました。セブンイレブンがさっそくイカリの小麦を製粉したものを調べてみると、その通りでした。「3カ月後にはセブンから採用の連絡が来た」(井狩代表)

2022年にはセブンイレブンの2種類のコッペパンで採用された。2024年も人気商品「ちぎりパン」にイカリが栽培し、昭和産業が製粉した「近江金色」が使われています。セブンイレブンは近年、地域ごとの食への対応を強化しており、関西エリアの2000店以上で「イカリ小麦」の商品が広がっています。

もっとも、取引が一度成功したからといって、調達の継続が保証されているわけではありません。井狩代表はセブンイレブンの動向や反応を注視しながら、さらなる品質改良に取り組みます。

チェーン全店の売上高で5兆円を超え、食品だけで4兆円近くを売り上げるセブンイレブン。その競争力は、足元の消費者ニーズを貪欲につかみ、原材料の段階から徹底的に掘り起こし、精査を続ける厳しさに根ざしています。近くて便利なコンビニ経済圏は、人々が身を粉にして働いてきた歴史の上で成り立っているのです。

セブンイレブンの品質のこだわりは食の安全・安心へつながりますので、とてもこだわりがあります。その中でも、おにぎりのこだわりは品種・産地を厳選し「低温精米」をすることでご飯の旨味と食感をアップしています。また、一つ一つ丁寧に作られ、パッケージでは海苔の食感を活かすため外気の影響を受けない構造になっています。

そして、冷蔵庫で保管すると硬くボロボロになるおにぎりは「20℃管理」を徹底しています。さらに、手を洗ったら手袋をつけて入室し、食材を扱う際はさらに専用の手袋を付けるなど、「素手にならない」こだわりがあります。

様々なこだわりの上で、私たちに届くセブンイレブンの食品。これからも多くのこだわりでみんなを笑顔にするセブンイレブンに期待しています。

※文中に記載の内容は特定銘柄の売買などの推奨、または価格などの上昇や下落を示唆するものではありません。