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これが県民の総意? 秋田県議会の意見書否決に思うこと

 これが秋田県民の総意と言えるのか?
 そう感じる出来事があった。秋田県議会6月議会で、議員が提出した二つの意見書案が、反対多数で否決された。

 一つは「特給法の廃止及び教職員の働き方改革の促進を求める意見書」。
 もう一つは「保育士配置の充実等を求める意見書」。

 いずれも学校の先生、保育士の働き方をよりよくすることで、そこで育つ子どもたちの人権や安全を守ろうという意見書だ。「なぜ、誰が反対したのか?」。一県民としての率直な感想だった。
 ちなみに意見書とは、議会の意見や希望をまとめた文書のこと。議会の議決、つまり「秋田県の総意」として、国会などに提出される。

 秋田県民は、この意見書に反対なのだろうか?

「子どもの現場」からの悲痛な声

秋田県議会6月議会で否決された二つの意見書

  意見書の内容は、秋田県議会ホームページから見ることができる。
https://pref.akita.gsl-service.net/_files/00081504/07_R050706.pdf
 二つの意見書についての議会でのやりとりは、155ページ以降に載っている。

 「教員の働き方」について意見書を出したのは、櫻田憂子議員だ。櫻田議員は、秋田県内の教育現場の現実として精神疾患で休む先生が多く出ていること、病気をしても休めず、心療内科の薬を飲みながら働いていること、「次に誰が倒れてもおかしくない状況」であることなどに触れ、「こんな学校を救ってほしい」と訴えた。

 さらに、この意見書に賛成する立場から加藤麻里議員が考えを述べた。
 加藤議員は、学校行事や部活動の見直しが表面上は行われているが、実際の負担はほとんど変わっていないと指摘。毎晩8時、9時まで働く県内の先生の「ほかのみんなも頑張っている。自分だけ早く帰るとほかの人たちに迷惑がかかる」という言葉を紹介し、家庭生活を犠牲にして働かないと学校が回らない現状について触れた。「教員が安心して働ける環境は、子どもたちの学びの場を充実させ、学ぶ権利を保証する上でも欠かせない」と加藤議員は訴えた。

 「保育士配置の充実」についての意見書は石田寛議員が提出した。石田議員は「県内には保育士資格を持っている人はたくさんいるそうですが、違う職場で働いている方が多い。理由は、保育現場は責任が重く、職場は戦場のようなのに賃金が安いからと言われている」と述べた。

 賛成の立場から発言をしたのは、佐藤光子議員だ。
 佐藤議員は「保育士1人で4、5歳児30人を見る」という現行の保育士配置基準について、「そもそも保育士1人で30人の子どもを見るというのは、75年前の状況・環境に合わせたものであり、社会が激変し、一人一人に対応した個別的な保育、多様な保育、子どもたちの主体性を重要視する保育など、多くのことを要求されている現代の保育現場では、それが25人程度に緩和されたとしても大きく状況は変わりません」と指摘。さらに、この配置基準は少子化が進む秋田県の状況に合わないと述べた上で「秋田県の保育の質と量を確保していくためにはさらなる改善が必要で、地域の実情に合った保育の在り方を国に要望していくべき」と訴えた。

自民と公明が全員「反対」

 どちらの意見書も、大切な視点である。この時点で採決結果を知らなかった私は、議事録を読み進めて思わず「うそだべ?!」と声を上げてしまった。二つとも「起立少数」で否決されていたのだ。

 「否決したのって誰?」。秋田県議会のホームページで調べようと思ったが確認できなかったので、秋田県議会事務局に電話で問い合わせたところ、全戸配布されている「あきた県議会だより」に載っているとのことだった。アーカイブがホームページにあって、確認することができた。(10、11ページ)
https://pref.akita.gsl-service.net/_files/00079655/dayori184.pdf

 反対していたのは自民党と公明党の全議員だった。

意見書に反対した議員には×が付いている。自民と公明全員

 恥ずかしながら、このことを知ったのは10月に入ってからだった。9月末まで地元紙に勤めていたので、議会の傍聴には行かなかった。平日の昼間は仕事があったからだ。議事録は後日、ホームページで確認することもできるが、関心をもって読もうとしなかった。
 
 11月2日、東京新聞に「保育士配置基準の改善を求め、地方議会が国などに提出する意見書が急増している」との記事が載っていた。
 大切なことが、地元の議会でスルーされていく。どのような政治力学があったとしても、教育と保育をよくしていくことは、大切なはずだ。これは私たち記者の責任であり、有権者の責任であると自戒を込めて痛感した。議会で起きていることを、今度こそこの目でしっかり見ようと思う。
               (三浦美和子)
 
 


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