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さりとは狭いご料簡、死んで花実の咲くかいな
今日の一文は・・・
五代目円楽の阿武松から。
てってれてれてて、てんてん・・・♪
と聞けば、分かる人も多いだろう。日曜の夕方にやっている笑点だ。
今は春風亭昇太が司会だけど、その前は桂歌丸、そしてその前がこの人、五代目円楽だった。
私の小さい頃はと言うと、笑点と言えばこの人のイメージが大きい。けれど、昨日まで円楽の落語を一席通して聞いたことはなかった。
阿武松の主題は、相撲道はじまって以来六代目の横綱、阿武松緑之助で、名は長吉、彼が故郷を出てから横綱になるまでのストーリーが語られる。立派な体をしているから相撲でもやったらどうかと勧められて江戸に出たが、並はずれた大食漢が災いして最初に入門した武隈部屋から追い出された。
国に帰る勇気も出ず、生き恥をさらすくらいならいっそ死のうと思ったが、しかし、手切れ金がある、これで食いたいだけ食ってからでも遅くはないか、と立ち寄った宿屋で宿主の橘屋半兵衛と出会う。
聴いていて、この半兵衛の優しさにホロリとしてしまう。これがこの世の食い納めと、泣きながらご飯をかきこむ青年に半兵衛は寄り添う。
いや、これは失礼だった、あたしとしたことが。若い方が泣きながらご飯をたべてらっしゃる、何か理由がおありのようだ。それじゃあ、これこれこういうことだと事情を言って下さらないか
親方に見放されたこと、行く当てのないこと、食べ終わったら死なねばならないこと、けれど、死にたくはないこと・・・胸中を明かす長吉に半兵衛がかけた言葉が今日の一文。
どうも若い人はとかくね、ひょいとしたことで直近にこの、なにか思いつめがちだ。一中節の文句にもあるじゃないか、さりとは狭いご料簡、死んで花実の咲くかいなと、死んじゃ何にもなんない、大事な命だ、大切にしなきゃいけませんよ
この言葉は、また別の演目「星野屋」にあるセリフらしい。
そう諭して翌日、長吉を錣山部屋に紹介して、あとは長吉がその才能をいかんなく発揮する、といった流れになる。
円楽さんの語り口、なんて引き込まれるんだろう。長吉の悲しみも、半兵衛の優しさも、こんなに豊かに表現されるのかと驚く。
今日の一文は、夕方からの笑点を見る前にぜひ聞いてみてほしい寄席からお届け。
それでは、本日も一語一咲となりますよう。
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