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カードゲーム初心者目線で語るホビー・関係性・アニメとしての『シャドウバースFLAME』

君と一緒なら、もっと熱くなれる!


まえがき


タイトルで念押ししているが、筆者のシャドバ本家及び一般的なカードゲーム及びカードゲームアニメのルールに対する知識はほぼ"無"に近い。

本記事は偶然出逢った土曜朝放送のアニメに心を奪われ、救われ、のめり込んだ一介のカードゲームミリしら社会人が、その恩を少しでも返すためにどうにか綴ったものである。

同じようなホビアニ初心者の方に少しでも刺されば……というのが第一目的の記事ではあるが、シャドバ及びカードゲーム及びホビアニ有識者の方々におかれましてもお手柔らかに読んでいただければ幸いである。本家ゲームのほうも少しずつ触れたいと思っています(後述)。

シャドウバースFLAMEの魅力について



『シャドウバースFLAME』とは、Cygamesより配信されているオンライントレーディングカードゲーム『シャドウバース』を題材にしたTVアニメシリーズの第二作である。
前作と繋がりはあるものの独立した話のため、本作から観始めても基本問題ない作りになっている。全98話がなんとYouTubeで全話無料配信中だ(終了時期未定)。ここからは内容の見所を章ごとに語っていきたい。


1.初心者にもわかりやすいバトル・ストーリー展開


『シャドウバースFLAME』の主人公・天竜ライトは、ひょんなことからシャドウバース(通称『シャドバ』)のプレイヤー養成学校・シャドバカレッジに通うこととなった中学二年生。しかし第1話の時点で彼はシャドバのプレイ経験がない全くの初心者だ。
初心者なりにビギナーズラックが働いて……ということも特になく、初試合では普通にストレートに負ける。
ただこのアニメが優しいのは、シャドバのシャの字も知らない視聴者とライトくんを並べて作中でシャドバのチュートリアルをしてくれるところだ。
序盤の縦軸は「廃部寸前のシャドバ部(部活動)存続に協力するため、ライトくんが部員集めのために他シャドバ部から引き抜きを持ちかけて部長達と勝負する」というもの。勝負を挑まれる部長達にしてみればライトくんは言わば道場破りなわけだが、初試合の対戦相手はそんなライトくんにも親切にバトルを進行してくれる。
一例をお見せしよう。
(以下、引用する画像は全てX公式アカウントからのものになります。公式から警告を受けた場合は取り下げます)

ライトくん「このカードをプレイ!(プレイポイント3のカードを出そうとする)」
「……あれ?」

画像左:友達第一号のスバルくん
「あれっじゃねえよ!まだ1ターン目だっての!」
画像右:廃部寸前部長のイツキくん
「そうだライトくん!先生からもらったプリントを思い出してみて!」
※転校生のライトくんには担任教師からルール説明のプリントが渡されています

ライトくん「シャドバにはプレイポイントがあり……このプレイポイントをコストとして使う……プレイポイントは1ターンにつき1増えるはずだ……今は1ターン目だから……(今プレイできるカードは)お前なんだな!」

対戦相手のシノブさん「それはフォロワー。攻撃したり守ってくれたり、バトルの中心になるカードだ」



視聴者の私「な、なるほど……(画像略)」


こんなに親切なことある?というくらい親切な設計。
初視聴時は「やっぱりホビアニは元ホビーの催促のためにルール説明を丁寧にやるんだなあ」と思っていたが、のちに全てのホビアニがそうなわけではないと判明し(後述)、より信頼が深まった記憶がある。
もちろん観ているだけで即・ゲームができる!とまでは断言できないが、やはりキャラクターが今バトルでどのような局面を迎えているかがわかりやすいと、アニメ作品としての没入感も桁違いだなと思う。
チュートリアルは1年目前半で何度かお出しされる。壁にぶつかりがちだが素直で真面目なライトくんを時に厳しく、時に優しく導いてくれるサブキャラクターは多種多様だ。

厳しい側
優しい側(?)


また、シャドバのフォロワーが毎回美麗な2D絵でお出しされているのも魅力。
コストの高そうなフォロワーの造形、衣装、細かな仕草にまでスタッフが気を配っているのがわかる。放送枠は土曜朝だったが作画のクオリティは深夜アニメに引けを取らないので、是非その目で確かめていただきたい。アニメ制作会社はZEXCSさんだ。

仕上がり前でも凄さのわかるカット


本家ゲームには登場しないオリジナル要素のフォロワーとして、デジフレ(デジタルフレンド)というメインキャラのマスコット相棒存在も出てくる。愛くるしい見た目のデジフレ達も毎回美麗作画で動き回るので要チェックだ。

右の赤い子がライトくんのデジフレ・ドラグニル。可愛いね


2.等身大のキャラクター達とその関係性


本作の前半は学園を舞台に展開され、自然と群像劇の要素も濃いものになっている。
ライトくんは部員勧誘のため様々な生徒(プレイヤー)と関わっていくが、関わっていく生徒たちは大なり小なり悩みや迷いを抱えている。そこをライトくんがバトルで一刀両断していくのが定番……とも言い切れないのが本作の面白いところである。

一例として、当初全くのシャドバ初心者だったライトくんに教室で明るく声をかけ「友達第一号」を名乗った真壁スバルくんについて少し紹介しよう。
スバルくんは快活な性格をしており、真面目すぎるくらい真面目なライトくんとは対象的。シャドバのランクもそこそこ高く、ライトくんに巻き込まれつつ学園生活を気ままに謳歌している風に見える彼だが、当番回では普段と違う表情が顔を覗かせる。

スバルくんには優秀なプロプレイヤーの弟がおり、かつて慕われていた弟に負けて以来「期待に応える」という重圧から逃げ出し、それが今の飄々とした外面を作っていたことが明かされる。
そんな彼もライトくんに協力し、部員勧誘のためのバトルに駆り出されるのだが、対戦相手に「本気でバトルをしていない」と見抜かれてしまう。
どこか冷めた態度を捨て切れないスバルくんに、ライトくんは観戦席から言葉を贈る。
叱咤激励とも違う、ただ自分を「友達第一号」と呼んでくれた相手への真っ直ぐな想いを。

「俺は初心者だ。よくわからないことも多い。だが……お前のことなら少しはわかるつもりだ」

「だからスバル。お前のバトルを見せてくれ。お前の本気のバトルを……!」

「……この熱のままやってみんのも、悪くねぇか」

最強格ではないライトくんが何故周りを惹きつけるのか。
それはシャドバの「楽しさ」に対して真剣だから、シャドバを通して出逢った仲間一人一人に真摯な眼差しを向けているから、に他ならない。
ライトくんに感化されて少しずつ変わっていく仲間達が、また他の人の心を動かしていく。特別なカリスマを持たない彼がさざ波のように起こす変化は派手なものではないが、物語の軸が主人公にあることを節目節目で感じさせてくれる。

ライトくんが集めた部活仲間・セブンスフレイムの仲間達


本作は同性間、異性間、家族間、異種族間と、シャドバを通じて仲良くなったり、逆にすれ違ってしまったり、それを乗り越えて新しい絆が生まれたり……様々な関係性が描かれる。それぞれの関係性が行き着く果てを見守ることも楽しみの一つだ。

また、これは届く人に届けるべき要素だと思うので強調しておくが、本作品はとりわけ同性間の関係性に対する気合いが凄まじいことが一つの特徴となっている。ホビアニに限らず同性間強感情はバトルモノの十八番だよね!という風潮もあるが、本作のそれはそういう風潮ともまた別というか……メインスタッフが「男は男、女は女と添い遂げるのが一番ですよね?」を信条とする精鋭で固められているんだろうな……と察する瞬間が両手で数え切れないくらいある(直近のCygames作品という括りで言うなら『ウマ娘 新時代の扉』『勇気爆発バーンブレイバーン』なども同性間感情が炸裂していたので、そういう社風なんでしょうか)。

これも届けるべき要素だが、中学生をメインキャラに据え、土曜朝枠に放送している本作品が(あざとめな箇所もまあまあありつつ)子供を対象層にしっかり入れた上で、同性が同性に向ける愛情を消して茶化さず丁寧に描いていることも強調しておきたい。
そこから派生して「周りと違うものが好きだと打ち明けられない」「素直になれない性格から孤立してしまう」「上手く笑えなくて周囲から誤解されてしまう」といった少数派の苦悩もバトル展開に織り交ぜているところも巧みだな……と感じる。この辺りがわかりやすい序盤の回が6話7話、可愛いもの好きな男の子イツキくんと特撮ヒーロー好きな女の子レンちゃんのメイン回である。先にこの2話分を観るというのもひとつの選択肢かもしれない。


3.本作から見る主人公像


私が考えるこのアニメ一番の独自性は、ライトくんに主人公としての存在感を持たせながらも、主人公としての『特別性』が極限まで薄められている風に描かれていることだ。
前半は学園を舞台に進んでいく本作。しかしそもそもライトくんがシャドバカレッジに転校してきたのには、ある日突然シャドバカレッジの創設者から「君は選ばれていたんだよ……(CV:緑川光)」という意味深な台詞と共に招待状を手渡された、という経緯がある。

意味深な創設者さん(CV:緑川光)

その「選ばれていたんだよ……」の真意が明かされるのが後半戦、学内の大会や全国大会を経て色々あってライトくんたちは世界を巻き込んだ陰謀を阻止するべく動くことになる。
ホビアニの世界を救う展開に関しては「おっ来た!王道だよね!」「待てよ!ずっと平和な日常回を映してくれ!命なんか賭けるな!」双方の意見があるだろうが、どちらにせよこういう展開の肝は「平和な日常で培ってきた主人公の成長や仲間との絆が、世界を救うときどんな形で活かされるのか」だと思う。

その見方でいくと、後半戦のライトくんの追い詰められ方はかなりシビアだ。
しつこく繰り返すがライトくんは決して最強格のプレイヤーではない。物語を通して強くなってはいくものの、負けるときは本当に容赦なく負ける。それは最終局面においても割と変わらず、ラスボスに「選ばれたなら大義を持て。『仲間とのシャドバが楽しい』なんて理由だけで動いてる奴に世界が救えるわけないだろ」とキレながら説教される始末。
しかし、そんなライトくんを支えてくれるのもまた、シャドバの楽しさを通じて出逢った仲間達なのだ。

相棒として連れ添ってきたデジフレ、前半戦で集まったセブンスフレイムの仲間、ライトくんに感化されて敗北から立ち上がった前半戦のボスなど……最終決戦へ向かおうとするライトくんに仲間がかける、叱咤激励ではない真っ直ぐな言葉達は、かつてライトくんが仲間に伝えた言葉達にも通じるものだ。

この過程はどうしても「本篇を見てください!!!」としか言えない部分がある。
強さやカリスマ、大義、使命といった主人公が背負いがちなものを敢えて極限まで取っ払ったライトくんのキャラ造形、そんなライトくんが"大義"を説くラスボスにどんな言葉をかけるのか……この結末はホビアニ有識者だけでなく、様々なジャンルの方に見届けていただいて感想を聞きたいところだ。

前作『シャドウバース(無印)』について

前置きでも触れたが、本作『シャドウバースFLAME』には世界観が地続きで主人公の異なる前作(無印と呼ばれることが多い)が存在する。
前作主人公・ヒイロくんはライトくんと打って変わり、シャドバの神に愛されているかのような無敗のカリスマの持ち主。FLAMEにも中盤から正体を隠して登場し、2年目以降はライトくんを導きつつ決して邪魔はせず見守るポジションになっている。

残念ながら前作はYouTube無料公開の対象外だ。前作はバトル展開が初見ではややわかりづらかったり日常描写が少なかったりなどの荒削りな部分も目立つが、シャドバを通じた魂のぶつかり合いの原点を感じることができるため、両者の主人公像を見比べる意味でもチェックしてほしい。
FLAME 1年目(〜50話)→ 無印(全48話)→ FLAME 2年目(51話〜)の順で観ていくのが個人的にはオススメだ。

無印の配信サイト一覧↑

あとがき


アニメ『シャドウバースFLAME』に出逢ってから、同じように毎週視聴している人と交流したり、別のカードゲームアニメを観始めるきっかけになったりもして充実した毎日を送っている。デジタル相棒繋がりで遊戯王シリーズをVRAINSから観始めたときは「あっ……特にルール説明とかないんだ……」と逆に新鮮に感じた記憶がある(面白かったです)。

シャドバの本家ゲームは色々と転換期のようだが、いずれゲームも履修してみたいと考えている。
他媒体のコンテンツとしてはアニメ無印の世界観でシャドバをできるSwitchソフトが出ており、まずはこちらを年明けからプレイする予定だ。1話のライトくんの気持ちで頑張ります。

また、放送中は1年目終了後と2年目前半終了後に休止期間が設けられており、その間にはマヂカルラブリー司会の全力!アニシャド応援部という特番が流れていた。番宣としてはだいぶ混沌とした味付けだが、アニメ制作現場の突撃インタビューや3Dモデルを使用したキャラVSマヂラブ2名のシャドバなど見所が多いため、良ければこちらも観てみてほしい。一部はYouTubeで無料公開中だ。

サムネから混沌を感じさせる

9月にFLAMEの放送が終了し、アニメシャドバシリーズは現在休眠状態となっているが、同じスタッフで第三作をやるなら是非とも観たいと思っているため、今後の動きにも期待している。もし本記事をきっかけに現行シリーズに手を出してくれる人が増えたら……この期待が現実に一歩近づくかもしれない(あくまで一視聴者の願望ですが)。
それを抜きにしても、もっと多くの人に本作の素晴らしさを知ってもらいたいと思い筆を執った。
全98話、無印を含めたら全146話となかなかの話数にはなるが、これだけの話数をかけた分集大成の感慨もひとしおなので、どうぞよろしくお願いします。

この記事が貴方の『シャドウバースFLAME』という物語に興味を抱くきっかけになってくれたらこれほど嬉しいことはありません。

ここまで読んでいただきありがとうございました。皆様よいお年をお過ごしください。



※Twitterのリンクと作品画像の掲載に関しては↓の「Ⅱ-2他人のホームページにリンクを張る場合の法律上の問題点」「II-10 インターネットと著作権」から判断して貼り付けておりますが、問題があればご連絡ください。

https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/ec/110627jyunsoku.html


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