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桜の枝をゆすらないでほしい、と伝えられなかった話
少し前、桜の名所へお花見にいったときのこと。
「きれいだねー」なんて言いながら、ぼんやり桜をながめていると、少し先に、桜をバックに写真をとっている集団が。なにげなく見ていると、その集団、桜の枝を引っ張り、思いきりゆすっている。どうやら、強引に桜の花びらを舞い落として、写真を撮ろうとしているらしい。枝をゆするたび花びらは、どんどん舞い落ちていて、あんなことをされてしまっては、一瞬で桜が散ってしまう。
あまりの衝撃映像に言葉を失いながらも、恐る恐る近づいていくと、その集団は、海外の方々だった。おそらく、中国とか、服装と言葉がそのあたりの感じ。もう還暦は超えているであろう、人生経験豊富そうな、良識だってありそうな奥様方。
こういうとき、どうするのが正解なのだろう。
咎(とが)めたいのはやまやまだけれど、桜のまわりには「桜に触れないでください」といった注意書きがあるわけでもなく、残念ながら、警備員さん的な人もいない。それでも、やめてほしいと伝えたとして、「なぜ、ダメなのか」と問われたとき、正当な理由をもって返せるかというと、非常に難しいように思った。
日本人の倫理観からすると、考えられない愚行とされることは間違いない。でも、海外のヒトからすれば、美しい写真を撮りたいと思っているだけで、そこに悪気なんてない可能性も高い。
「わたしたちも、海外に行ったとき、あんな風に、現地のヒトにびっくりされるようなこと、してたりするかもねー」
桜の枝をゆすりまくる集団をいっしょに見ていた友人が、ぽつりと言った。
たしかに、そうだ。
結局、どうするべきか正解が見つけられず、わたしたちは、どんどん散っていく桜に心を痛めつつ、帰った。
それからわりと時間の経った今も、思い出しては、少しもやもやしている。