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第9話「バラの詩人にまつわるお話」魂の故郷で奏でる物語
~ある人の物語~
森の中の小さな一軒家。そこに小さな女の子とおばあさんが見えました。
女の子は家で嫌なことがあると、おばあさんの家に出かけます。あたたかくやわらかな木漏れ日がさす部屋で、女の子はおばあさんのひざに座っています。おばあさんが女の子に本の読み聞かせをしている声が聞こえてきました。その声を聞くと、胸がポカポカとして気持ちよくなります。
女の子は数ある本の中でも水色の本の中に出てくる物語が大好きで、何度も読んでもらっています。その物語は「バラの詩人」というお話。「バラの詩人」を聞くたびに、気持ちよくなって眠ってしまうのです。
そのバラの詩人というのはこんなお話です。
・・・・・
あるところに元貴族の老婦人が座っています。その場所はその老婦人がかけるのに貢献した橋のたもと。そこで毎日座っています。老婦人は一時栄華をきわめましたが、没落してしまいます。すると、周りの目は老婦人をさげすむのです。
老婦人は「私のことを認めてくれない」という怒りに満ち、橋を渡る人に向けて無言で抗議をしているのでした。
そんなある日、バラの詩人は老婦人を見かけます。その瞬間尊敬の念がわいてきて、一輪のバラを老婦人に差し出します。すると老婦人はそのバラを受け取り、橋のたもとから去っていったのです。
・・・・・
女の子がうつらうつらしているのを見て、老婦人はほほえんでいます。その目にはうっすらと涙がにじんでいます。涙をそっとふいて、窓の外を眺めながら遠い記憶をたぐりよせています。
老婦人が育った家庭は、安心できるものではありませんでした。いつも両親の怒鳴る声がなりひびき、幼い彼女にとって自分を守る方法は、他の誰かになることしか思いつきませんでした。
ピエロ、救済者、いじめられ役・・・この家庭を守るためには色々な顔をもつという架け橋になったのです。ですが、そんな彼女の気持ちも知らないで、親や兄弟は彼女をさげすみます。
幼いころから家族の面倒をみることが仕事となってしまい、子どもらしく遊ぶことが出来ませんでした。
そんな状態が続くと、今度は彼女に怒りが湧いてきます。「こんなに頑張っているのになんで認めてくれないの?」と。それを口にしても周りは相手にしてくれず、今度は自分に向けて怒りの矛先を向けていくようになったのでした。
どれが本当の自分の顔か忘れてしまい、怒りでゆがんでいきます。本当は人とつながりたかったのですが、「どうせバカにされる」という思い込みで、つながりたくてもつながることが出来ずにいました。
尊敬というものがどういうものか知らない彼女にとっては、人を信用することは恐怖の何ものでもなかったのです。
そんなある日、彼女は生まれ育った村に出かけます。その村をとおる川は何日も雨が降っていないためひからびています。その光景をぼんやりと眺めていると、川の土手で遊んだ記憶がよみがえります。するとみるみるうちに彼女の目には涙があふれ、大粒の涙がぽたぽたと地面に落ちました。
ひとりうつむいて泣いていると、空から雨がふってきました。しばらくぶりの雨です。川がみるみるうちに水であふれ、うるおいます。その上にかかっている橋を眺めていると、ある思いが湧いてきました。
「私は今までバラを差し出されていたのに受け取ろうとしなかった」
「トゲで何度も痛い思いをしてきたから、こわくて受け取れなかった」
「それでもあきらめずにバラを差し出してくれる人がいた。そう、バラの詩人は私の心の中にいたんだ」と。
彼女は立ち上がり、川のほとりへと歩きます。河原を眺めていると、石の間から小さな赤いバラの花が咲いているのが目にとまります。何度も捨てて枯れたと思っていたバラがまだ生きていたのです。
その美しいバラから橋へと目をうつすと、その橋は色とりどりのバラであふれていたのです。彼女はゆっくりとバラの橋を渡り、その村をあとにしたのでした。
・・・・・
老婦人の目から落ちた涙が女の子の額に落ちます。すると、女の子はゆっくりと目をさまします。おばあさんが泣いているのを見た女の子は優しく声をかけます。
「おばあちゃん、大丈夫だよ。私がついているからね」
その言葉を聞いた老婦人は「この子は大丈夫」と確信しました。女の子にどんなことがあっても、バラの詩人が助けてくれるから。バラの詩人から差し出されたバラを女の子はすでに受け取っているから。
老婦人は女の子の頭を優しくなで、ゆらゆらと椅子を揺らします。優しい時間が過ぎていきます」
・・・・・
5年ほど前に奏でられたこの物語。あらためて読んで、とても心地よくなりました。過去の自分に感謝です💐
🍀この物語を読んで、何か感じられた方は、コメントくださいね!コメントのやりとりで、物語を共同創造し、共に自由になっていきます。そして、
喜びを分かち合います💐
🌈YouTubeにてアップされているオリジナルソング
「おかえりなさい 魂の故郷へ」作曲・補作詞 池間史規
作詞 岡聖美
「おかえりなさい 魂の故郷へ」を聴く・カバーするだけで、
魂の故郷での物語を共同創造することになります♪
曲のいきさつなどはこちらから↓
*一年後再録アップ:オリジナルソング「おかえりなさい 魂の故郷へ」カバーされて、孤独から解放される人が増えることを祈って
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