Look Back 「チェコ・コミックの100年」展@明治大学 米沢嘉博記念図書館
2017年9月〜2018年1月にかけて明治大学米沢嘉博記念図書館で開催された「チェコ・コミックの100年」展について
公式アーカイブ https://www.meiji.ac.jp/manga/yonezawa_lib/exh-czech.html
2018年1月23日にTwitterに書いたメモ
今週末でチェココミック100年展も終わりなので、自分なりに気付いたことをまとめて呟こう。まず驚いたのがけっこう英語で情報があったこと。下記のRoutledgeのリーダーにも中東欧のコミックス事情を論じた章がある。 https://www.amazon.co.jp/Routledge-Companion-Cultural-Studies-Companions/dp/0415729009
これはおそらくスロヴェニア唯一のコミック誌『Stripburger』
https://www.stripburger.org/en/
が90年代から英語での情報発信を続けていることと関係があると思うのだが、たぶん旧共産圏、中東欧コミックスというカテゴリが欧米のコミックス研究でははっきり対象としてあるんだと思う。
だから、チェコ一国ではなく、中東欧コミックスというもうひとつ外側のフレームを今後は意識すべきなんだと思う。
また、基本的にヨーロッパ文化のわからなさもだいぶ感じた。とくにボーイスカウト/ウッドクラフトリーグとか、西部劇というよりインディアン(ネイティブ・アメリカン)といったテーマのチェココミックにおけるメジャーさは正直よくわからない。
日本では欧米の大衆小説ジャンルで唯一まったく根付かなかったのが西部劇小説だったこともあって、ドイツの小説のヒーロー、インディアンのウィネトウのキャラクターとしての存在感の大きさなどまったくピンとこない。
そうしたテーマ面に対しアート面では(特に現在のものに関しては)あまり独自性を感じなかった。より正確にいうと、どこがチェココミック独自の表現なのかは判断できないと思った。
というのは、ベルリンの壁崩壊後、アメリカ、ヨーロッパ、アジアの西側のコミックス文化が同時に入っているため、その影響も同時多発的で、絵柄的にはアメリカのグラフィックノベル的なもの、フランス語圏のBD的なもの、日本マンガ的なもののそれぞれが割りとそのまんまな感じであり
しかも日本マンガの影響を受けたアメリカンコミックス的なものとか、アメリカングラフィックノベルの影響を受けたBD的なものなんかもあるので、なにがチェコ的なものなのかは判断できない。
この絵柄の問題もそうだが、特に今回確信をもったのは、政治的社会的な状況とアートスタイルを含めたマンガの表現は切り離して論じられないということだ。
チェコに関していえば共産主義政権時の検閲問題が表現と密接に関わっているし、他の地域、たとえば東南アジアの国々は東からの日本マンガ的な表現と西からのアメリカンコミックス、フランコフォンBDの影響をともに受ける地政学的な条件がその表現と無関係だとは思えない。
まあ、割りと当たり前なことのような気もするが、たとえ視覚表現レベルに限定したとしても、ある国や地域のコミックス文化について論じるのであれば、その国の大雑把な歴史は知らないとなにもいえないよな、と改めて思った。
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